August 01, 2005

愛媛・三津浜アートの渡し

三津の渡し  みなとまち三津浜、再生の暑い夏、
 アートが、人・地域・未来を”渡し”ます。 
-パンフレットより引用-

入口アート蔵 松山市三津浜の古い蔵を再生し「アート蔵」とした現代美術展の第4回目。今回は、アサヒ・アート・フェスティバル2005にも選出され、様々なイベントが開催されるようです。(詳細は、アートNPOカコアのHPでご確認お願い致します。) 展示の中心となっている「ART 蔵LOUNGE & CAFE」へ行ってきました。

 昨年3月に開催された第1回目の展示では、三津浜界隈で撮影したビデオ・インスタレーション中心でアートNPOの作家さん達が地域密着で頑張っていたのですが、展示数が少なく、かつモニュメント的な作品もなく、少々見応えに欠けた内容でした。今回は、海岸・海をテーマとしたインスタレーションと絵画中心になり、より濃密な見応えのある展示に進歩していました。風花車本棚蔵1F絵画

 まず蔵1階では、入口付近に骨組み(ワイヤーフレーム)だけの風車に観覧者が三津浜をイメージした色の毛糸を紡ぐ参加型のオブジェ作品、BlueBearArtProjectの「風花車」があり、蔵の壁には、海・港を抽象的にラフスケッチした藤岡勝利「days」、似顔絵バトル作品を並べた早崎雅巳「eKao-1/いい顔グランプリ」の絵画が展示されています。また古い蔵のイメージにあった茶箱を積み重ねた本棚もあり、暑い中、ラウンジの椅子に座り、絵画鑑賞やアート本の読書などでくつろげるようになっていました。(カフェとして、ビール、ソフトドリンク類の販売も行っていました。)FOR2RESTオーガフミヒロ作品(部分)カスパーの檻

 次に蔵2階へ階段を昇ると、藤田雅彦の「カスパーの檻」という蔵または舟に使われているような厚い木の板に海・波をイメージした青と白の岩絵具で彩色したインスタレーション作品があります。厚い木の重厚感を引き出した、この展覧会のモニュメント的な良作でした。(しかし、石牢の暗闇で育った少年、カスパー・ハウザーとの関連性は不明です。)
 壁一面を使って展示しているオーガフミヒロ「蔵の中に観る海そして時間」の油絵は、両端に水を司る鳥人間を配置し、その間に上部が空、下部が海をイメージした白と青のツートンカラーで塗られた空間が広がっています。その空間は、一見すると単色に見えますが、良く見ると微妙に白色のところに青色が薄く影のように掛かり、独特なやわらかい雰囲気を醸し出していました。
 BuleBearArtProjectのFOREST(森)とFOR REST(休息)を掛け合わせた造語「FOR2REST」は、蚊帳とソファーのインスタレーションで、まさしく夏の暑い日に休憩するにはぴったりの癒し系作品でした。

ART 蔵 LOUNGE & CAFE 
残り会期 8/7(日)、14(日)、20(土)、21(日)
A.M.10~P.M.6 [21(日)はP.M.8まで]
入場無料

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July 16, 2005

北海道・ イサム・ノグチ展~ゼロからほとばしるエナジー

 石山緑地見学後、イサムノグチ展が開催されている札幌芸術の森へ行きました。芸術の森では、音楽祭のPMFも開催されているようで、色々と案内板が出ていました。エナジーヴォィド看板

 さて、今回の訪問の楽しみの一つは、今までイサム・ノグチ庭園美術館で屋内展示されていた「エナジーヴォィド」が美術館前の池に浮かべられ展示されることでした。庭園美術館では、作品、建物含め全域撮影禁止でしたので、屋外展示により初めて自分のカメラでこの作品を撮影できると楽しみにしていましたが、池の周辺にしっかりと撮影禁止の看板が掲げられていまして、残念ながら望みは叶いませんでした。悔しいので、とりあえず、池の近くにある展覧会の看板を撮影してきました。(この看板の後手に作品は、あるのですが。。。)

 さて展覧会は、始めに大地の彫刻作品の写真、模型を展示していました。ここでは、実現した「モエレ沼公園」の四季様々な表情を捉えた写真パネル、500分の一の公園模型などと合わせて、実際にイサム・ノグチが彫刻したブロンズ製の「プレイマウンテンの模型」(1933年)や、実現しなかったニューヨークの「リヴァーサイド・ドライブ公園の遊び場模型」などがありました。これらから、プレイマウンテンなどは戦前に考案され、やっと'98年のモエレ沼公園のオープンで実現したことが読み取れました。ただし今回の展覧会では、生前イサムノグチが手がけた「モエレ沼公園の模型」が見当たらず、物足りなさを感じました。(うろ覚えですが、'98年の展覧会では展示されていたように記憶しています。)

 次に、イサム・ノグチ作品の変遷が展示されていました。初期作品「球状」、「レダ」などのブランクーシに師事していた頃の滑らかに表面研磨され金色に輝くブロンズ作品群、木製のチーク材を使用した彫刻「赤い種子」や、「パリの抽象」のドローイングから始まり、平板を切り抜いて作られたパーツを骨格のように組合わせて造形表現している「不思議な鳥」、「グレゴリー(偶像)」などの作品や、平板を折り曲げて表現した作品群で亜鉛めっき鋼板のまだらな文様な美しい「びっくり箱」や、表面が黒色に仕上げられたブロンズのマチエールの美しさとリスの尻尾の丸みをかわいらしく表現している「リス」などがありました。また、これらの展示途中の薄暗い場所に「2mのあかり」という月のような巨大な行灯が展示されていまして、ベンチでくつろげるようになっていました。

 次に、石の彫刻作品が展示されていました。「母と子」とタイトルされた通り子供を抱いた母親を抽象的に彫刻した縞めのう製の作品とブランクーシの鳥のような長細い「身ごもった鳥」という白大理石作品から始まり、赤茶色の石の色と表面が多数のノミ跡を持つ荒々しい印象を受ける作品「山」、大きな水滴が砕けて小さなしぶきが上がっているように、上が滑らかに磨かれ下方が丸い形の無数のノミ跡が残る黒花崗岩で出来た「オリジン」、表面が研磨された花崗岩製テーブルの一部が隆起し、大地の彫刻模型作品に通じる空間の広がりを感じる「砥石」などが展示されていました。

 展示の最後に、「エナジーヴォィド」が美術館側から鑑賞できるようになっていました。庭園美術館では酒蔵を移築した展示室内にあるため、天井近くまである作品の大きさを実感でき、扉から差し込む光やライトによって研磨された表面が不思議な輝きを放っています。しかし、今回の池に浮かせた展示では、大きさについては、遠くから鑑賞するためインパクトが少なく、私が鑑賞した曇天・午前の光線では均一に照らされて、作品が小さくなった印象を受けました。ただし、天候・時間帯によっては作品が素晴らしく輝くこともあるようです。(展覧会カタログの写真から、夕日に映えるエナジーヴォイドは屋外で展示してこそと思えるような美しさでした。)

 エナジーヴォィドで展覧会は終了なのですが、美術館の中庭に球のような大きな花崗岩で出来た作品「サンダーロック」があることに気付きました。ニューヨークのイサム・ノグチ財団が指摘したように確かに作品の設置場所が悪く、「檻の中にあるようで作品を殺している」どころか、中庭は、作品があること自体気付かないような場所に感じました。(ただし中庭に入ることが出来て近くで作品鑑賞できるので、展示方法は悪くないように感じたことも付け加えておきます。)札幌芸術の森

札幌芸術の森美術館 ~8/28まで

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July 13, 2005

北海道・石山緑地

 芸術の森へ向かう途中に石山緑地へ立ち寄りました。この公園の以前の姿は札幌軟石という灰色の石の採掘場でしたが、CINQ(サンク; 国松明日香、永野光一、丸山隆、松隈康夫、山谷圭司)という彫刻家集団によって、公園全体が採掘場跡地や札幌軟石の風合いなどを生かした彫刻作品に造り上げられています。

 公園入口には、バベルの塔のような噴水タワーとなっている玉石の塔や、その水が螺旋状に流れている「スパイラルスプリング」などがある水の広場があります。これらは、大型作品ですが、大理石のモニュメントやベンチなどの小さめの作品も公園に置かれています。スパイラルスプリングのある広場から小径を進んでいきますと、緑の芝生、樹木に赤い色彩が強いコントラストを持っている美しい作品、「赤い空の箱」というジャングルジムが置かれています。さらに小径を進むと、ローマにある古代遺跡のような広場「ネガティブマウンド」があります。背景の採掘場の壁と広場にある橋のような構造物のいずれもが札幌軟石のため、その灰色の古びた肌合いが歴史を感じさせるドラマッチックな広場となっていました。ネガティブマウンドの奥には、サイコロ状の札幌軟石が散らばっている「午後の丘」があります。ここは芝生でくつろげるような広場になっています。

 全体を通しては、現代によみがえった古代遺跡のようなモティーフで統一されていまして、大変素晴らしい公園でした。玉石の塔 スパイラルスプリング スパイラルスプリング2 モニュメント ベンチ 赤い空の箱 ネガティブマウンド ネガティブマウンド2 午後の丘

石山緑地

石山緑地(札幌公園検索システム)

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July 12, 2005

北海道・モエレ沼公園

 イサムノグチ展訪問の前に、この7/1にグランドオープンしたモエレ沼公園へ行ってきました。この公園の以前の姿は、170ヘクタール(ニューヨークのセントラルパークの約半分)という大きさのごみ埋立地でした。1988年、イサムノグチがお亡くなりになる1ヶ月前に公園全体を彫刻するという壮大なマスタープランが計画され、それに基づき徐々に造成され、最後まで残っていました「モエレ山」、「海の噴水」が完成してグランドオープンになりました。以下、公園を歩き回った順番に説明していきます。

「モエレ山」
 昨秋山開きしたモエレ山は標高62mある小高い丘といった感じの山です。公園入口近くの登山道から山頂を目指しますと、まず林の中を通り抜け山の稜線を緩やかに登っていきます。山頂には、中心が分かるように石が埋め込んでありました。山頂からはプレイマウンテン、海の噴水やモエレビーチなどの広大な公園全体が一望できます。また、大地を眺めると、流れ行く雲の影が写っていまして、この公園の壮大なスケールを感じ取ることが出来ました。下山道は、山頂から麓へ一直線に造られた階段を降りました。 モエレ山(公園入口から)登山道(林)登山道頂上中心部プレイマウンテンを望む海の噴水・モエレビーチを望む下山道(階段)










「プレイマウンテン」
 次にプレイマウンテンをピラミッドのような石の階段になっている方から登ってみました。一段ずつ登るごとに石の水平線が変化して、様々な表情を楽しめました。この山頂からモエレ山を望みますと、先程の階段(下山道)が稜線に美しいフォルムを与えていました。山頂からは、緩やかな勾配になっている小径を通りモエレビーチへ行きました。プレイマウンテン階段 モエレ山を望む プレイマウンテン小径 プレイマウンテン










「モエレビーチ」
 ここは深さが浅めのひょうたん型をした池になっていまして、子供たちが元気に水遊びをしていました。モエレビーチ






「サクラの森 遊具広場」
 イサムノグチデザインの遊具で、ここでも子供たちが元気に遊んでいました。サクラの森






「ガラスのピラミッド HIDAMARI」

 完全な三角錐ではなく、複雑な形をしたガラスのピラミッドになっています。この施設入口は石造りの壁となり、古色の趣がありました。また、屋上が展望台となっています。(しかし、展望台からの眺めは、ガラスのピラミッド部分とモエレ山が重なるため、イマイチでした。)HIDAMARI 石壁






「海の噴水」
 この噴水は、一般の常に水が流れ出ているものと異なり、40分程度のショー形式で稼動するため、そのスケジュールに合わせて観覧する必要があります。ショーの開始は、噴水中心部から空を目掛けて25mの高さまで水が噴き上がります。この噴き上げ水は風にあおられて絶えず変化するため、一種の護摩焚きの煙のように様々な形を見て取ることができました。その後、徐々に噴き上げ高さを低くしながら、中心部分の器に水が溜まり始めます。ここからは海の噴水の名に相応しい光景が見られました。まず中心部分に荒磯のような波が立ち始め、水が溢れ出しザバーンという豪快な音と共に周囲に広がります。そして完全に周囲と中心が同じ水位になると、波は凪のような穏やかな表情に変わります。その後暫くすると、中心の水位が低くなり、徐々に周辺から水が引いていきます。最後に、噴水の櫓が作られショーが終了します。海の噴水1 海の噴水2 海の噴水3 海の噴水4 海の噴水5 海の噴水6 海の噴水7






 全体を通しての感想は、アート的な美しさでは、イサムノグチがマスタープランしたモエレ山やプレイマウンテンに登ることで、大地の広さや広がり、風の強さ、雲の流れなどが感じられる心地よい空間でした。さらに楽しく遊んでいる子供たちが印象に残り、公園としてのパブリック的な機能も十分果たしていると思いました。モエレ沼公園

モエレ沼公園

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June 28, 2005

愛知・ヤノベケンジ キンダガルテン

ロッキング・マンモス(左)とジャイアント・トらやん(右) 

 愛・地球博訪問の前に豊田市美術館で開催されている「ヤノベケンジ キンダガルテン」へ行ってきました。 昨年の金沢21世紀美術館訪問時には、作品製作途中で拝見する機会に恵まれなかったこともありまして、今回の展覧会では思う存分楽しんできました。

 まずは、展示室に入ると同時に眼に飛び込んできますのが、写真右手にある7.5m高さの巨大なロボット「G.-T.R.Y.:ジャイアント・トらやん」です。このジャイアント・トらやんは、ある時子供のように突然声を出し、歌って腕を振り回し始めます。このダイナミックな動作に会場中の観覧者が一様に釘付けになっていました。また、この巨大ロボの中には5体のトらやんらしき子供人形が中に入っていまして、彼らが操っているようでした。

 写真左手にあるが、「ロッキング・マンモス」です。こちらは万博に展示されているシベリアの永久凍土から発掘された冷凍マンモスに対抗して、ヤノベケンジ氏が構想したマンモス・プロジェクトによるものです。ティンゲリーの彫刻(オブジェ)のように自動車の廃材で組み立てられたことは作品から分かったのですが、実はヤノベケンジ氏の愛車・ディーゼルエンジンのトヨタハイエースを分解して作られたそうです。この作品は、機械部品の構成を辿るだけでも楽しいものですが、偶然にもヤノベケンジ氏が展覧会に訪問されていまして、ロッキング・マンモスに乗り込み動かすところを拝見できました。

 ロッキング・マンモスを操るヤノベケンジ氏

 まずはエンジンが始動しますと、マンモスの鼻を左右に振り、全体が前後ゆっくりと揺れ動きます。さらにアクセルを吹かしますとマンモスの後方にある尻尾のようなところからマフラーがないためにディーゼル排ガスによる真黒な煙と轟音が撒き散らされながら揺れ動きます。マンモスのユーモラスな動きと、20世紀の遺物的な環境に悪影響を与えるディーゼルの黒鉛が印象に残った作品でした。

 次の展示室には、放射線を浴びると動き出すトらやんと小さい子供がやっと入れる位の大きさの「森の映画館」が展示されていました。また、森の映画館近くには、ヤノベケンジ氏のお父様がトらやんを腹話術で始められた切っ掛けなどが書かれたドローイングがありました。お父様の大阪人らしいめげないチャレンジ精神と息子のヤノベ氏が暖かく見守る愛情が読み取れまして、面白いものでした。

 その次の展示室には、多数のトらやんと金沢21世紀美術館で開催されていた子供都市計画研究所の「マンモス・パビリオン」、「子供都市鉄道」、「タンキング・マシーン」などのオブジェのインスタレーションと、巨大な発泡スチロールの積み木の家の中にビデオインスタレーションがありました。ビデオ作品は、ロッキング・マンモスに書きました壮大な構想をヤノベケンジ氏が語る「マンモス・プロジェクト」、ジャイアント・トらやんが出来るまでの工房での制作風景および美術館での展示準備を早送りで再生した「ジャイアント・トらやんのひみつ」、子供都市計画研究所で実際に小さい子らがヤノベ氏の作品で遊んでいる場面を撮影した「子供都市 -虹の要塞-」が上映されていました。いずれも、オブジェの制作プロセスとその実際の動きがビデオで容易に理解できるようになっていまして、面白い作品でした。さらに、その次の展示室には「マンモス・プロジェクト」の構想説明用に作られたドローイングが展示されていました。

 全体をとしての感想は、子供のみならず大人までも童心に戻ることができるメカやロボット作品には、リサイクルや排ガス、放射線などのちょっとした環境に対するスパイスが効いていまして、楽しむだけではなく色々と考えさせられる側面もありました。

 最後に、このWeblogに写真掲載するにあたりまして、快諾してくださったヤノベケンジ氏に感謝いたします。豊田市美

豊田市美術館 ~10/2まで

ヤノベケンジアートワークス

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June 22, 2005

北海道・北海道立函館美術館

 函館は連絡線や、海峡列車の乗り継ぎで何回か立ち寄ったことがあるのですが、未訪問の五稜郭とその近くにある北海道立函館美術館へ行ってみました。

特別展「幻のロシア絵本1920-1930年代展」

 ロシアの絵本に興味持っていた訳ではないのですが、美術館訪問前にHPでこの展覧会の解説を確認したところ、「具体」の吉原治良や、画家の柳瀬正夢がこのロシア絵本を入手し、自らの制作に生かしていたとの記述に惹かれて入ってみました。

 このロシア絵本は、日本のしっかりと製本されたものとは異なり、わら半紙が厚くなったようなざらざらの紙に細かい階調が描写できず平板的な色彩で印刷された簡素なものでした。平板的な中にも大胆な色使いやシンプルな構図が新鮮に目に写りまして、日本の浮世絵のような印象を持ちました。また、当時では珍しかった写真による絵本もありまして、その先進性にも驚きました。

 今回展示されていた作品は、大部分が吉原治良がコレクションしたもので、それらから影響を受けて制作した「スイゾクカン」という一連の絵本用挿絵の原画(油絵)が展示されていました。この絵本用の色彩、構図を単純化した初期作品を見まして、シンプルさが吉原治良の黒や白線で円を描いた作品に通じるものがあると思いました。

ミュージアム・コレクション 「新収蔵品展」

 常設展では、鵜川五郎と田中良の絵画作品が印象に残りました。

 鵜川五郎の戦闘機、台車、骸骨など戦争の墓標がバベルの塔のようにうず高く描かれた「青春の墓標」や、手前には多くの骸骨の中に立っている青年、中央に狐が2匹森の木に吊るし上げられ、さらに奥の村が戦火で燃えている状況を描いた「1944年病める森」、戦時中の疎開風景を描いた「野の行人」の3作品から反戦メッセージがしっかりと読み取れまして印象に残りました。また今回これらと環境破壊に対してのメッセージが読み取れる「うすれ日」、「農園風景」の5作品を纏めて見ましたところ、これらの風景に一匹のキタキツネが描かれていまして、人間の愚かさを各場面で検証しているような物語性を感じました。

 田中良の作品は「港A」、「風景」の2点と少なかったのですが、描かれている雪が単純な白色ではなく灰色や赤色が混ざったような北海道若しくはヨーロッパ気質とも思える独特のマチエールを持ち、私好みの佐伯祐三に通じる壁系作品でした。函美

北海道立函館美術館 ~7/3まで

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June 17, 2005

北海道・生誕100年 本郷新展 素顔の作家が遺したもの

 芸術の森から移動しまして、札幌の高級住宅街・宮の森にある札幌彫刻美術館へ。ここでは、素顔の作家が遺したものというサブタイトルで展覧会が開催されていました。また、ここでもギャラリー・トークに参加しましたので、得られたことを書いていきたいと思います。黒字(茶字)は、学芸員さんが述べられたこと、私の感想は、青字で記しています。

石狩

 「石狩」は、本郷新が70歳のときに石狩浜に20年くらいかけて造ろうとした20m大の記念碑の習作と素描。(しかし、その5年後にお亡くなりになり、記念碑は未完成) 今回は、回顧展なので特別に展示されているとのこと。
 素描と板金細工のような習作から想像すると、壁がなく骨組みのみからなる細長い塔を様々な人が手を取り合いながら上がって行く様子が描かれていました。これを見て、ヴィーゲランの「モノリット」という14m高さの1本の塔に沢山の様々な人々天に昇っていくかのように彫刻されている作品と同じダイナミックさを感じまして、札幌彫刻美術館の本郷新展では、一番印象に残った作品でした。

天の扉

 「天の扉」は、東京新宿に設置されている3人の女性像からなる大型彫刻作品ですが、本展覧会では、依頼主へ大型彫刻制作前にプレゼンするための小品石膏像が展示されていました。小品では3人のうち右側の女性像が、布を両手で肩幅より広げてもっていますが、背面の見通しが悪くなるとの理由で、大型作品では布ではなく木の枝を持つように変更されたそうです。

ご家族の像

 誰に依頼された訳でもなく本郷新が自発的に制作したお子様や奥様の主に頭部像の作品が展示されていました。また、本郷新の奥様の重子さんに学芸員さんが会われたことがあるそうで、モダンで素敵な人であったことなどをお話してくださいました。(詳細は、失念しました。)

著名人の像

 「藤島武二先生像」(洋画家)、「柳田国男像」(洋画家)、「牧野富太郎像」(生物学者)など、各像がどのような著名人であるのか説明してくださいました。また、「津田青楓像」では、画家の津田青楓さんがモデルになっている際にじっとせずに「彫刻制作中の本郷新」を逆にスケッチしたことや、「孤愁の友 西常雄像」では、彫刻家同士でお互いに頭部像を制作し合ったことの逸話をお話してくださいました。

賞杯・メダル・野外レリーフ

 野外彫刻のような大型作品のみならず、依頼者の求めに気さくに応じて、賞杯・メダルのような小品も制作されていたそうです。中でも、碁を打つ瞬間の手の緊張を捉えた作品「打つ」や、制作前の素描から途中経過を撮った写真、完成作品が展示されている「手の中の少女」という作品のアイデアの移り変わりを説明してくださいました。

 野外レリーフでは、札幌駅前の「牧歌」像に設置された後、撤去された背面レリーフ6点のうち「熊」という作品のみが展示されていました。他の5点は、撤去した際に紛失してしまったそうです。この「熊」も、美術館に寄贈されて、偶然に運良く戻ってきたとお話されていました。

自画像

 73歳頃の自画像(油絵作品)です。本郷新の白い顎ひげがお洒落で印象的ですが、この「ひげ」を伸ばし始めた時期について、65歳からとお話してくださいました。また、そのきっかけもお話してくださったのですが、詳細失念しました。

磔刑のキリスト

 病に倒れてから、ベッドの中で制作された素描作品「十字架のキリスト」数点が展示されていました。実際には病床からでも精力的に制作され、かなりの枚数を保有されているそうです。このキリスト像の特徴は、身体の中に十字架が貫かれていること、身体が肋骨付近を境として2分割されて描かれていることだそうです。また残念ながら本作品は素描のみで、彫刻にならなかったそうです。

魚の絵、つり道具

 本郷新は、魚釣りがお好きだったそうで、釣り上げた魚を描いたり、毛鉤などの道具などが展示されていました。

 本展覧会2館通しての感想ですが、本郷新作品の彫刻的な美しさの紹介に留まらず、「わだつみのこえ」、「無辜の民」に代表される社会性も兼ね備えた作品を生み出した厳しい眼と、「駄々っ子」、母子像、ご家族の像などの愛情豊かな優しい眼の両面が紹介されていまして、この作家の人となりが分かったような気が致しました。札幌彫刻美

札幌彫刻美術館 ~6/19までわだつみのこえ 石像 太陽の母子

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June 15, 2005

北海道・生誕100年 本郷新展 「生きる」をつかんだ彫刻家

 年初に計画していました今年着目の美術展ふたつ目の本郷新展へ行ってきました。(ひとつ目は、ジョルジュ・ド・ラ・トゥール展であったことを忘れていました。)

 本展覧会は、札幌芸術の森美術館と札幌彫刻美術館に分かれて開催されていまして、今回は両美術館の展覧会を企画された学芸員さんが作品解説してくださるギャラリー・ツアーに参加するために、駆け足で巡りました。まずは、芸術の森美術館のサブタイトル 「生きる」をつかんだ彫刻家のギャラリー・ツアーで得られたことについて書いていきたいと思います。

 まずは、学芸員さんの雑談から。NHK教育テレビ「新日曜美術館」の45分枠で取上げられたのは、学芸員さん曰く地方美術館主催の展覧会ではかなり珍しいことだったらしいです。各方面からNHKに働きかけ、最終的に本郷芸術の公共性、社会性が認められことが放送された要因になったそうです。また、片岡球子さんについても札幌出身で現在100歳になられ、本郷新と同級生にあたりますねなどと美術ファン受けする軽い雑談がありました。また、この展覧会は、意外と入場者数で苦戦しているようで、皆さん近隣ご近所の方に展覧会のことをよろしくお伝えくださいとおっしゃっていました。以下、学芸員さんが述べられたことは黒字(茶字)、私の感想は、青字で記します。

デビュー作「少女の首」について

 初期の頃は、ブロンズのようなお金がかかる作品は作れず、石膏にブロンズ風に着色して仕上げていたとのこと。その他、ブロンズ作品は原型が残っている場合、何回も鋳造できるため、展覧会出展リストに、制作年/鋳造年が記載されているとのことでした。
 「少女の首」は、おさげ髪の清楚な少女がモティーフの作品です。

木製(樟)彫刻「受難者」と「摩周の舞」について

 「受難者」という作品は、制作後に偶然火事にあってしまい木の肌が焼けてひび割れしたようになってしまいました。これを見た本郷が、木を焼くことで独特の味わいが出ることに気付き、「摩周の舞」という人物をモティーフにした作品に取り入れたそうです。

「わだつみのこえ」について

 初期の頃の秀作「わだつみのこえ」について。像命名の元になった短歌「なげけるか、いかれるか、はたもだせるか、きけ はてしなきわだつみのこえ」の意味について説明がありました。「もだす」とは、「黙す」と書き、意味は「だまっていること」だそうです。また、「わだつみ」については、「海神」とのことだそうで、それで若い男性像になっているとのことでした。
 また、「わだつみ像」は最初に設置された立命館大学(京都)の他に、札幌、東京、神奈川、和歌山等全国にあるそうで、同一作品でも置かれる環境によってブロンズの表面仕上げ(色合い、磨き方等)を変えていることがあり、印象が違って見えるそうです。
 今回「わだつみ像」を見ての私見ですが、顔の下目加減で何かを見据えている引き締まった表情が、短歌の「なげけるか、もだせるか」に相当し、また、左脚、左手が少し後ろへ引いて力を溜め込み、それが解き放たれると左拳が前へ飛び出してくるような造形の迫力がありまして、それが「いかれるか」につながっているのではないかと感じました。

「哭」(彫刻の森美術館蔵の木製彫刻)について本郷新展看板

 本郷作品の中では、数少ない木製彫刻。樟(くすのき)の一木造りで、木彫りの後が荒々しく残っていることや、人物像の顔が手で覆われている独特な構図などについて述べられていました。(詳細失念しました。)
 この作品は、本展覧会のチラシ類にも採用されるような本郷新の代表作です。顔からは表情が窺えませんが、覆っている手の微妙な起伏から、泣いている(=哭[こく]する)ことが分かりました。

「駄々っ子」について

 「駄々っ子」というあいまいな概念をどのように表現したらよいかと普通の人は悩むと思いますが、本郷新はこの作品で子どもの姿を愛らしく表現したことと、コンクリートという変わった素材で出来ていることに言及されていました。

バリエーションについて

 同じような構図を持っている作品をバリエーションといいまして、今回は両手を挙げ頭上で手を組んでいる女性像の小品「蒼穹」と公園に展示されている大型作品「緑の賛歌」2点の相違について、述べられていました。小品と比較して屋外展示する大型作品を見るときは、鑑賞者の視線が見上げるようになるために、それを考慮して手足の位置や身体の重心が異なっているそうです。
 具体的な相違点について、「蒼穹」では左脚が後ろに引かれ、身体の重心が前向きになっているのに対して、「緑の賛歌」では、右爪先が少し伸びたようになっていること、身体の重心の位置が中立していることなどでした。

連作「無辜の民」について

 15連作のうち、14点今回展示されています(残り1点は修理中だそうです)。作品1点のみで鑑賞するよりも、纏まってみることでこの罪無き市井の人々を取上げた連作のスケールが感じ取れことや、布を巻きつけるという斬新な制作方法が作品を発表した当時の彫刻界に衝撃を与えたことについて述べられていました。

「母子像」3点について

 「母子像」、「顔のない母子像」、「遥かなる母子像」の3点について、いずれも母親と子どもの身体が一体となって造形されていることが特色とのことでした。特に「遥かなる母子像」は、木製の一木造りで母子の一体感が強調されていると述べられていました。また、母子像の母親の顔がないことについては、鑑賞者が彫刻の顔を見ることで特定のイメージを持たないように、あえて制作せず、顔の無い部分には、自分の母親をイメージできるように造られているとのことでした。

その他全国にある野外彫刻について

 説明してくださった学芸員さんがカタログの野外彫刻について纏められた方でしたので、こぼれ話をお話してくださいました。
 日本初の公共の場所に裸婦像が設置されたのが、本郷新の「汀のビーナス」という作品です。最初は、上野駅前に設置されましたが、その後谷津遊園に移転しました。そして谷津遊園が閉園されたときに作品も行方不明になってしまったそうです。日本美術史上初の公共の場所に設置された裸婦像が紛失したことを非常に嘆かれていました。また、札幌駅前にある「牧歌の像」の由来を書いてある看板が、文字が読み取れないほどに風化していたために、架け替えをお願いしたことなどを熱くお話してくださいました。札幌芸森

札幌芸術の森美術館 ~6/19まで

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June 11, 2005

高知・関根雲停植物画展

本郷新・牧野博士 天気が良いこともありまして、美術館の後は、高知県立牧野植物園へ行きました。ここでは、博士が収集した牧野文庫の関根雲停の植物画コレクションが130点公開されていました。

 展覧会のパンフレットを要約しますと、関根雲停とは、江戸時代末期に動物、植物、鉱物などの博物画を描いた人です。牧野博士は、その植物画を見て描写が植物学的に正確であることから、英国のボタニカルアートの第一人者、W.H.フィッチになぞらえ、雲停を「日本のフィッチ」と絶賛したそうです。 展示室

 雲停の植物画は、和紙工芸家 ロギール・アウテンボーガルトさんの和紙照明作品と共に展示されていまして、心地良い雰囲気でした。作品自体は、標本画なので細い線と薄い彩色で描かれていました。私の好み的には大型の、鉄砲ユリやアナナス(パイナップル)が印象に残りました。アジサイ

 また、現在関根雲停植物画展以外にも初夏を彩るアジサイ展(~6/19)も開かれています。 庭園牧野植物園

高知県立牧野植物園 ~9/30まで

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June 10, 2005

高知・高知県立美術館収蔵名品展2005 蔵出し逸品

 「蔵出し逸品」という粋なタイトル通り、高知県立美術館の収蔵品から人気の高い作品を選んで展示しているそうです(詳細は、高知新聞ニュース)。以下、展示に沿って印象に残った作品を書いていきます。
 蔵出しの逸品一堂に 県立美術館で収蔵名品展(高知新聞ニュース)

第1部 日本の現代美術 After1980

 1980年以降ということもありまして、現代的な感覚にあった(正確には、私の感覚にあっている)作品が多く展示されていまして、見応えがありました。

 北九州市立美術館でも印象に残った九州派の作家、菊畑茂久馬の「海・寒流2」は、静けさを感じる美しい青の色彩と、水が垂れるような線、くじらの様な厚塗りの形態の躍動が印象的な絵画でした。堀浩哉の「風を変える力・6」は、赤・黄・紫・白線で空間を表現している絵画で、キャンバス上に皺となった部分があり、そこに土佐和紙を使用。辰野登恵子の「untitled」は、水色の背景と黄色の鎖のような形態のコントラストと、その境界の滲み、ボケの風合いが美しく作品。森村泰昌「双子」は、西洋絵画が日本風にアレンジされていまして遊び心は分かりましたが、肝心な模写した原画が分かりませんでした。同様に福田美蘭の「ヒストリカル・ランドスケープ」も原画が不明でした(こちらは原画があると見せかけて意外とないかもしれませんが)。李禹煥「風とともに」は、手または羽のような線で構成された素朴な作品。最後に、篠原有司男の「ジャマイカ日記」は、これぞジャマイカと感じさせられるようなコミック調の図柄と金、銀、原色の赤、青を使った強烈な色彩と勢いのある絵でした。

*'05/06/22追記*
 森村泰昌の「双子」の原画は、マネの「オランピア」(1868年オルセー美術館蔵)であることが、分かりました。・・・「なぜこれがアートなの」(アメリア・アレナス著1998年淡交社刊)に記載されていました。

第2部 ニューペインティングの嵐

 ここでは欧米のニューペインティングのコレクションが纏まって展示されていました。あまり良く知らない分野でしたので、勉強になりました。

 サンドロ・キアの「父と子」は、画面一杯に描かれた大きな男とその膝元に全裸で背を向けている男が描かれていまして、一見して父と子がどちらか分からない独創的な絵でした。ゲルハルト・リヒターの「ステイション」は、作家独特のゆれ、ぼけや、モノトーンな作品と異なり、カラフルに塗られた面がカスレた風合いを持つ構図でした。アンディ・ウォホールの「アフリカン・エレファント」は真赤な背景に、輪郭を青で縁取りしたピンク色の象で構成され、赤が目に付き刺さる強烈な作品。アンゼルム・キーファーの「アタノール」は、嵐の中に銀行のような石造りの建物が重厚な質感をもって存在しているのが厚塗りと薄黒い色調で表現され、さらにその建物の窓から漏れる黄色い灯りの暖かさが共存している作品でした。

第3部 日本の現代美術 Before1980

 ここでは、具体美術の作家が多く取上げられていました。

 アンフォルメルの堂本尚郎「対決」は、手前の白、奥の青・緑線で荒れた波を連想させる空間が表現された絵画でした。具体美術の白髪一雄「天猛星霹靂火」は、フットペインティングの痕跡が分かるように絵の左上に足跡とサインが記されていたのが、印象的でした。

第4部 いろいろな素材 -体感するアート

 ここでは、陶器、彫刻などの作品が展示されていました。

 和太守卑良の「地座」は、三角が組み合わさった茶色い文様を持っている腰掛部が陶製、脚が木製の椅子作品でした。実際に座ることも体験できまして、陶製のため適度な涼しさを感じました。

 全体としての感想は、これらのコレクションを通して私が興味を持っている現代絵画の流れを豊富な作品で知ることが出来まして良かったと思いました。
 また、これらのコレクションに対して好みの作品を3点投票することができまして、7/10頃に人気ランキングが発表されるそうです。高知県立美

高知県立美術館 ~7/24まで

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愛媛・愛媛県美術館 所蔵品展Ⅱ

 「チャールズ&レイ・イームズ 創造の遺産展」のために、愛媛県美術館へ行ってきました。イームズ展の方は、開催期日が残り僅かなので、所蔵品展の方を中心に書いていきたいと思います。

常設展示室1(日本画) 特集展示 近代日本画の巨匠たち
常設展示室2(洋画) 特集展示 名作のゆくえ-洋画さまざま

 次回企画展「国立美術館巡回展 名作とは何か? 近代の日本美術」に合わせた特集展示だそうです。日本画の方は、前田青邨、安田靫彦、土田麦僊、東山魁夷などで鯉、人物、風景を扱った作品でした。個人的には、日本画をあまり好まないこともあり、今ひとつの展示でした。

 洋画の方は、黎明期の小林萬吾「芝増上寺」から特集展示が始まりまして、パステル調の淡い色彩で描かれた坂本繁二郎「ブルターニュ」や、対照的に原色の赤、黄、緑の色彩を用いて女性が強く表現されている里見勝蔵「和服の女」、ほのぼのとした表情をしているロバが幻想的に浮かび上がってみえる北川民治「ロバ」など、こちらは見ていて楽しい展示でした。さらに、郷土の畦地梅太郎や柳瀬正夢が小特集されていました。

 畦地梅太郎は、昨年訪問した畦地梅太郎記念美術館では見ることの出来なかった油彩の風景画も展示されていまして良かったでした。また、山男を描いた代表的な版画「白い像」もありました。

 柳瀬正夢は、小品の風景画が数多く展示されていました。中でも、「運河」という作品が、青い空と、赤茶けたレンガ倉庫の色彩が調和を保ちながらコントラストがあり、さらに画面中心にある白い鉄橋が映える美しい作品で印象に残りました。

常設展示室3 特集展示 色彩のダイナミズム

 現代美術の展示室で、井川惺亮の「PEINTURE」という横断幕のような大きな白紙にカラフルに面で色塗られた作品が、一際目立って鮮やかに展示されていました。他には、具体美術の白髪一雄、元永定正や、祭壇の像のように木の枝が金色に塗られている田窪恭治「黄昏の娘たち(83-3)」などがありました。全体的に作品数が少なく、今ひとつ色彩のダイナミズム感が味わえませんでした。

特別展示室1(海外の名作;西洋美術) 19~20世紀の絵画彫刻
特別展示室2(福田平八郎) 初夏の風物
特別展示室3(郷土作家) 特集展示 中川八郎

 海外の名作については、ブーダン、モネ、クールベといった印象派前後の作品が展示されていました。この中では、アンドレ・ロートの「マルグリットの肖像」という紺を背景にキュビズム的な立体構成で描かれ赤い服を着て椅子に座っている夫人像が、その色彩対比の美しさと形態の面白さが目立った作品で印象に残りました。

 中川八郎については、洋画で牧歌的な風景の作品が多く展示されていました。中でも油彩より水彩作品の方が、中川八郎の素朴な風景世界と色彩の透明さがマッチして良かったでした。

 全体を通して郷土作家作品は、ある程度纏まって展示されていましたので見応えがありました。しかしその他は、近代(日本画、日本並びにヨーロッパの洋画)から現代まで幅広く取り扱われているのですが、どれも展示作品数が少なく中途半端な印象でした。個人的には、小さな美術館のように取り扱う分野を絞って展示替えした方が、コレクションの方向性が分かるのではないかと思いました。

愛媛県美 愛媛県美術館 ~7/18まで

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June 08, 2005

東京・R.O.R(レボリューションズ・オン・リクエスト)

 さらに引き続き森美術館の展覧会のR.O.Rへ。通常の森美術館フロアー内には見つかりませんでしたので、係員の方へ尋ねると東京シティービュー内にありました。

 R.O.Rとはヘルシンキ(フィンランド)を拠点に活動している様々なアーティスト(ビジュアルアーティスト、グラフィックデザイナー、銀細工師、インテリアデザイナーなど)が集うグループだそうです。

 こちらの展覧会は、このグループの活動を紹介する内容で、銀細工、オブジェ、絵画などの様々な作品で構成されていました。以下、印象に残った作品を記します。

 私の訪問中で一番多くの人に注目されていたものは、ギィリ・ゲッレルの「なめつくせ」というオブジェ作品でした。これは、白と黒に塗り分けられた仮面(マスク)から赤い舌が伸びていて、タイトル通りその舌先が怪しく動いているもの。この動きが、気持ち悪さと同時に楽しさも感じる作品でした。

 ヴィクトール・クロギィウスの「クラッシュ」は15cmくらいの大型ミニカー8台が玉突き追突してクラッシュしているオブジェ作品で、バンパー等の破片が飛び散る芸の細かさが特徴的でした。

 パヌ・プラオラッカの「爆発」という絵画作品が、東京国立近代美術館にあるパウル・クレーの「花」を連想させるようなオレンジ系統の四角いテキスタイル(綿・麻)を複数用いて表現した美しい作品でした。

 変り種としては、イエシカ・レイノー&クラウス・ニュークヴィスツゥの「ケシ畑」で、印刷に使用するCMYKの4色がそれぞれ4枚のアクリルパネルにドットで表されていまして、正面から見ると、それらが集まってケシ畑の形態を認識できるようになっている作品でした。コミックのドットを取り上げたリキテンスタインを超えた作品かもしれません。

 最後に、ギィリ・ゲッレルの「ザ・ビッグ・タイム」という大型彫刻は、このR.O.R展のモニュメント的な作品でした。岩塩のような白い塊を洞窟のようにくり貫いた形からなる作品で、塊の雪のような白さと、くり貫いた面の色彩が青空が反射している雪のようなライトブルーになっている、北国らしい色彩とダイナミックな形態が印象的でした。

森美術館 ~7/18まで

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東京・ストーリーテラーズ - アートが紡ぐ物語 -

 引き続き森美術館の「ストーリーテラーズ」展へ。正直申しますと、現代美術に古典的な物語性を求めるものいかがなものかと思っていましたので、あまり期待していなかったのですが、実際に展覧会をみますと、現代的なビデオ作品が多く楽しめました。ただし、個々の作品については、意味な不明なストーリーの方が多かったように思います。以下、印象に残った作品について記します。

 グレゴリー・クリュードソンの「トワイライト・シリーズ」は、夕暮れのとある景色を撮影した組写真で、その一部に夕陽が差し込む中、室内の床面に水が張られ、水没しかかっているオフェーリアを連想させる女性が写された作品がありました。夕暮れとオフェーリアという二つのドラマチックな要素で満たされた美しい作品でした。

 エイヤ=リーサ・アハティラの「慰めの儀式」は、ストーリー的には夫婦の別れを軸とした意味不明なビデオ作品でしたが、内容的には、夫婦で犬のように吠えながら言争う場面が、声も含めた身体全体を使って表現していることの面白さや、湖の氷が割れてゆっくりと水没しながら死んでゆく場面は、映像の美しさの他に、死に際に走馬灯のように駆け巡る記憶や死生観などが上手に表現された俊作でした。

 鴻池朋子の「第3章 遭難」という赤い靴を履いた人の足になっている後肢を持った不思議な狐ときらきら光るガラスのナイフが妖精のように森に集い、その森の左側には巨大な心臓が躍動し、さらに森の奥の空からジェットコースターが垣間見れる不思議な絵画と、これを補完するように一艘のボートに赤い靴を履いた狐のインスタレーション、また舳先側にある池には、この不思議な世界を司る少女のビデオインスタレーションで構成された作品でした。絵画のみならず一群のインスタレーションで、独特の女性的なファンタジーな世界が創り出されていました。

森美術館 ~6/19まで

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June 06, 2005

東京・秘すれば花 東アジアの現代美術

 葉山の後は、六本木の森美術館を訪問しました。森美術館では、現在3展覧会が開催されていまして、まずは東アジア(日本、韓国、中国、台湾)の現代美術を扱った「秘すれば花」から書いていきたいと思います。

 展覧会を通しての印象は、東アジアの現代美術を扱った割には、あまり威勢や元気の良さが感じられず、タイトル通りのおとなしいものでした。正直、何か物足りませんでした。私の東アジアのイメージは、どちらかといいますと東京、上海に代表される未だ衰えを知らず発展し続ける都市や、街の路地を一本入ると屋台が雑然と立ち並び、そこから威勢の良い掛け声が聞こえたり、おいしいものの匂いがしてきたりと何か混沌とした中に秘めたパワーみたいなものを感じるのですが、本展覧会はそういう観点では捉えられていなく、文字・食住(*)を通して情緒的な侘び、さびのような感覚を取り上げられているようでした。(*衣食住と書こうと思いましたが、衣の部分が見当たりませんでした。)以下、印象に残った作品について記します。

文字

 シュ・ビンの「鳥が飛ぶ」は、床面近くから天井付近まで斜め上方に進むにつれて「鳥」という漢字が徐々に崩れ、最後は「鳥の形」に戻って飛んでいくというインスタレーションで、漢字の源を思い起こさせ、さらにレインボーカラーで彩られた美しい作品でした。

 ユ・スンホの「ヨーデルヒーホー」は、水墨画が、線ではなく細かい文字(ハングルでヤホ、アルファベットでshoo、漢字で多々)を書き連ねで構成された楽しい作品でした。

 ソン・ヒョンスクの「1の筆致の上に8の筆致 2004年5月5日」は、水の幕を連想させる上から下へ流れる細かな線と、手前がピントが合い奥が滲んだよう右上から中央下へ引かれた線で奥行が表現された情緒的な作品でした。

 リー・ミンウェイの「ダイニング・プロジェクト」は、掘りごたつのちゃぶ台上で食事をする際の箸、食器および手の動き、会話を捉えたビデオインスタレーションで、生命の源となる食べるというエネルギッシュな身体行為を上手に表現した作品でした。

 リン・シュウミンの「催眠 No.1」は、天地が逆さになっている部屋のインスタレーションで、鑑賞者が部屋の中に入りクッションが置かれた床に寝転がり、白壁の天井に張り付いている家具・調度品を眺めるような作品になっていました。また、部屋には窓があり、そこから光が天井に向かって差し込んでいました。寝転びながら眺めていると、自分が死んで天国から下界のありふれた日常を垣間見ているようで、不思議な気分になる作品でした。

森美術館 ~6/19まで

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June 02, 2005

神奈川・片岡球子展

 ここ数年片岡球子さんのいくつかの展覧会が開催されていましたが、すべて見逃していましたので、今回やっと神奈川県立近代美術館 葉山館へ行って見ることが出来ました。

 今回の展覧会は、今年1月に画家が100歳になられたのを記念して、院展出品作を中心に画業を振り返ったそうです。

 初期の作品(おおよそ50歳くらいまで)では、勤務している小学校の生徒さんを題材とした女性的な繊細な筆使いが特徴の「学ぶ子等」や、パステル調の色彩を持った背景が美しい「供華・讃華・三昧」など、いわゆる教科書に掲載されているような日本画が多かったのですが、50歳を過ぎると画風が全く変わり女流画家と感じさせない大胆さが目立ってきました。

 例えば「初夏」という作品では、女性と花が描かれている背景がゴッホのひまわりなどで用いられている黄色が強烈な色彩を放っていますし、第9回サンパウロ・ビエンナーレに出展された「山(富士山)」では、富士山を赤と青、そして雪の白で構成し威厳さを色彩で表現しています。

 展示はさらに代表作の面構シリーズに入っていくのですが、「面構 足利尊氏」などの面構の初期作品は、あまりにも色彩と顔の印象が強すぎて好きになれなかったのですが、その後の浮世絵の絵師と代表作を描いたシリーズは、それぞれの絵師の個性が面構に良く表現されているのが面白く好きになりました。例えば「面構 喜田川歌麿と鳥居清長」では、鳥居清長が色白でキツネ目の良い男に対して、春画も描いていた歌麿は、いかにも好色家の老人といった風貌が楽しい作品でした。

 その他数は少ないですが展示作品の素描もありまして、制作プロセスの一端を垣間見ることもできまして、片岡球子作品の全貌を掴んだ気分に成りました。

神奈川県立近代美術館 葉山 ~6/26まで

その他情報
 JAF会員の場合、神奈川近代美術館 葉山、鎌倉とも優待料金で入場できます。

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June 01, 2005

東京・INNOCENCE

 今年のベネチア(ベニス)・ビエンナーレの日本館に出展する石内都さんの個展「INNOCENCE」を訪問しました。展示作品は、疾病や事故によって女性の身体に残された手術痕や腫れなどの変化をクローズアップ撮影したモノクロ写真でした。最初は、見ることを忌避したいような内容もありましたが、ある程度数を見ることでその傷痕に妙な懐かしさを感じました。

 手術痕の大部分は、通常は人目に触れず服などに隠されている部分ですが、それをこの写真シリーズで見ることで、長い間忘れていた自分や家族の身体に残された傷痕も思い出しました。さらに、その痕を作った原因となった事象を色々と考えていました。この点が懐かしさを感じたところです。結局あれこれ個々の事象を思い浮かべながら、どうしたら身体に傷痕がついたのか上手く分類分け出来なかったのですが、石内さんの写真集でillness(病気)とaccident(事故)の二つの表示があり、私自身の傷痕の原因とも一致しましたので、なるほどと思いました。

 その他、サロンでは、ベネチア・ビエンナーレ出品作の「mother's 2000-2005; trace of the future」の写真集も限定100部のみで発売されていました。どちらかというと、mother'sよりは今回のINNOCENCEの元になっている「scars」や「キズアト」の方が好みの写真だったのですが、ものめずらしさから購入してしまいました。

ツァイト・フォト・サロン ~6/18まで

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May 31, 2005

東京・タピエス―スペインの巨人 熱き絵画の挑戦

原美術館  原美術館で開催されていたタピエス展へ駆け込みで行って来ました。会期終了してしまっているので、簡単に感想を書きたいと思います。

 初期の作品(主に1階で展示されたいたもの)が、私の好みでは情緒的な壁画系で良かったと思いました。タピエスは、ジョアン・ミロや東洋思想に感化されたとビデオで解説していましたが、今回展示していた作品の中からも読み取れまして、それらが作品の情緒性につながっていると感じました。例えば、「黄土色-灰色」では、ミロの絵のような白点と薄黄緑の線で構成されていたり、「天秤」という作品では、白地に黒色で天秤が描かれ、左中ほどに落款のような赤枠がある構図で水墨画のような印象を受けました。
 また、初期の作品では、「物質の密度とオレンジの染み」が肌色の絵具が厚塗りされて上部が力強く皺(しわ)になるくらいにえぐられ、そこにオレンジの染みがある構図で、スピード感、勢いの良さを感じました。「十字とR」では、作家が在住しているバレンシアの石、土が板に貼り付けてあり、その質感がとっても上品に構成されていました。「闇の上の二つの白」では、左上から右下にかけて対角線の左下側半分の面が闇の中に光を感じるような白さがあり、混沌とした空間に希望的な明るさを感じました。

 それらに対して、2階に展示してあった比較的近年の作品郡については、今ひとつ好みではありませんでした。しかし最近の作品でも、長崎県美術館でみた「身体のコンポジッション」(2003年)は、ダイナミックに身体を形取り、様々な素材を用いた情緒的な作品で好みなのですが、今回は巡り合わせが悪かったようです。

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May 24, 2005

福岡・福岡県立美術館コレクション展Ⅰ

 飛行機の乗り継ぎの関係から福岡へ立ち寄ることができましたので、県立美術館の常設展を見てきました。

 さて、2005コレクション展Ⅰでは、2部構成となっていまして、一つ目は、特集 児島善三郎-「日本人の油絵」をめざして、二つ目は、小特集 和田千秋「障碍(しょうがい)の美術」でした。また、コレクションの解説については、展示室入口の受付でCLOSE UP -Vol.22-というリーフレットをもらえました。

特集 児島善三郎-「日本人の油絵」をめざして

 解説のリーフレットを要約しますと、”児島善三郎がヨーロッパに留学後、美術界のフランス支配から逃れ、新日本美術の確立を目指して絵画の平面的な様式化を推し進め、その結果として簡略的なフォルムと華麗な色彩による装飾的な風景画に到達しました。しかし自然をありのままに捉えようとして写実へ回帰し、最後に児島の絵画として到達したところは、立体性と平面性とが混交する「安定しないところの美しさ」を堪えた花の静物画でした。”と書かれていますが、個々の展示作品については解説が全くなく、今ひとつ企画意図が理解できませんでした。

 今回の展示で私の目についたのは、どちらかというと初期の肖像画でした。「青衣の母像」、「姉の像」(大正7-11年)は、日本的な和服姿の肖像画から、「孔雀の扇を持つ裸婦」(大正11年)では、ゴヤの「裸のマハ」風のソファーの上に横たわる裸婦を描いた作品となっていました。同様に「梳る女」(大正15年)は、女性の肉感が強調されて描かれたルノアール風の作品、「サンルームの見える裸体」(昭和6年)は、マチス風の赤茶の床にピンク色のソファー、さらに奥の部屋に黄色のカーペットが敷かれた色彩の強い作品でした。画家が危惧していたように、フランスというか西洋美術の影響を受けて、それらを模倣しながら自己のスタイルを切り開こうとする苦悩の一端が肖像画には、垣間見えました。

 しかし、解説に書かれていた風景画、花の静物画については個人的には惹きつけられる要素があまり感じられませんでした。唯一印象に残ったのは、「蓮花」(昭和14年)で、一面が鮮やかな緑の葉で構成され、中に白い花と赤い花、つぼみがアクセントとして効いている絵で、夏の太陽の下で育まれる生命の伸びやかさを感じました。

小特集 和田千秋「障碍(しょうがい)の美術」

 作家のお子さんが重度の障碍をもって生まれてきたことを契機に「障碍の美術」という現代美術作品を制作することになったそうです。絵画作品は、子ども、若しくは母子像が描かれている、古典的なほほえましいものですが、対照的にインスタレーション(オブジェ)作品は、作家が詳しく書いている解説(文章作品)から「障碍」について、宗教、芸術、進化論などから考えさせる内容となっていました。解説については、今ひとつ良く理解できていない部分も多かったのですが、作家が前向きに取り組み、社会に対して障碍を問題提起していることが分かりました。福岡県美

福岡県立美術館 ~7/10

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May 17, 2005

北海道・アルテピアッツァ美唄

 カッラーラ産の真白い大理石を素材とした現代彫刻で有名なイタリア在住の彫刻家 安田侃さんが、出身地の美唄に作られた「アルテピアッツァ美唄」へ行ってきました。今回が4回目の訪問となりますが、行く度に拡張整備され素晴らしい広場(公園)となっています。今回の散策ではちょっと早かったのですが、一部桜も咲き始めていまして作品鑑賞のみならず早春の季節感も楽しめました。

 入口から順にこの広場をみていきますと、まず様々な彫刻が置かれている「トリフォリの広場」あります。そこを過ぎますと大豆が発芽したようなフォルムを持った「帰門」が、この広場の中心として建てられています。さらに進むと、廃校となった学校の体育館を活用し大作品が収蔵されている「アートスペース」があり、その向かいには、丘陵の中に目立たぬように作品が置かれている「天翔の丘」があります。

 アートスペースのそばには、夏場は子供たちの遊び場となる丘陵を白大理石で構成した「水のステージ」がありまして、その丘陵をさらに登って行きますと「音の広場」に出て、緩やかな曲面を持った彫刻類にお目にかかれます。

 また、広場に戻りますと廃校となった校舎の2階が、小作品を収蔵している市民ギャラリーとなっています。(今回は、写真展が開催されていました。) この校舎の1階が幼稚園となっていまして、その入口にも安田さんの作品が置いてあり、子供たちにも親しまれているようでした。

 散策した経路に沿って左上から写真を掲載しています。

 入口 トリフォリの広場・真無 トリフォリの広場・天沐 帰門 水のステージ・天沐 アートスペース・地人 アートスペース・屋内 天翔の丘・天翔 天翔の丘からアートスペースを望む 意心帰 音の広場・妙夢 音の広場・天聖と天沐 音の広場・相響 市民ギャラリー(小品) 市民ギャラリー(市民) 幼稚園入口

アルテピアッツァ美唄

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May 04, 2005

和歌山・串本応挙芦雪館

 テレビ東京の美の巨人たちで取り上げられていた長沢芦雪の「虎図」をみるために、本州最南端の串本町にある無量寺を訪れました。芦雪(盧雪)の絵に興味を持ったのが、昨年金毘羅さんで開催されていた「金刀比羅宮のすべて」展で力強く描かれた「鯉魚図」を巧いと感じましたのがきっかけでした。また、同展では、芦雪の師匠の円山応挙「遊虎図」をみましたので、虎の描かれ方を比較してみたいと思いました。

 串本応挙芦雪館は、2館に分かれていまして芦雪の「虎図」はどちらにも収蔵されていますが、本館が写真による複製画、収蔵庫にオリジナルがあります。収蔵庫は、オリジナルの障壁画を展示しているために、雨天時は作品保存の観点から見学できないため、訪問の際は天候に要注意です。

 さて、本館で印象に残った作品を挙げますと、3つの盃に子犬、馬、虎を題材にした絵を描いた応挙の「三ツ組盃」があり、中でも虎は、丸みを帯びた猫らしいものでした。芦雪「狗干、布袋、雀図」は、ずんぐりむっくりした犬がじゃれあう様子や、人形を持っているふくよかな布袋さんとねずみなどが描かれたほほえましい絵でした。また同じく芦雪「鸚鵡図」は、飼われているオウムが何か言葉をしべっている仕草を分割写真のような複数枚の組合わせ図になっていまして、動きが表現されていて面白いと感じました。

 収蔵庫では、仙人の浮上を水面下で支えている透き通るようなタッチで描かれた魚が印象的な応挙の「波上郡仙図」、美の巨人たちでも取り上げられていた虎図の裏面に魚を捕まえようとする猫が鋭く描かれている芦雪「巌上鶏図」、尻尾を巻いて今にも獲物に飛びかかろうと、しなやかに身体を弧に屈めた迫力ある虎が描かれた芦雪「虎図」、一枚の衝立の表面に猿回し師が描かれ、裏面に猿回し師から紐でつながれた猿が右下にぽつんと描かれている構成が面白い芦雪の「猿廻し図」や、墨を持ち勉強というよりは遊んでいるやんちゃで愛らしい学童とブタのような子犬がかわいらしく描かれた芦雪「唐子琴棋書画図」が印象的でした。

 全体を通しての感想は、芦雪の「虎図」のような大胆な迫力ある絵と「狗干、布袋、雀図」、「唐子琴棋書画図」のようなかわいらしい和やかな絵の二面性が楽しめました。応挙芦雪館

串本応挙芦雪館(テレビ東京・美の巨人たちHP)

・その他情報

 無量寺までの道(商店街からお寺までの約200m部分)が非常に狭く、車で訪問する際は注意された方がよいです。(苦労しました。)

 本文にも書きましたが、雨天時には収蔵庫の見学が出来ません。

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April 29, 2005

東京・ゴッホ展

 ゴッホ美術館とクレラー・ミュラー美術館というゴッホの2大美術館から代表作を借りて展示しているだけあり、初期から晩年の作品まで少数精鋭でバランスかつテンポ良く鑑賞することが出来ました。しかし、今までのゴッホ展に見られた一時代を弟テオとの書簡などを通して深く掘り下げたり、ゴッホの筆致に対しての浮世絵の影響については、あまり触れられていないことや、今回の展覧会で比較展示している他画家の絵についての解説が少ないことが、ちょっと残念な点でした。

 今回展示されている作品の多くは、過去10年位の間のゴッホ展に一度は来日し、以前にも鑑賞した記憶がありましたが、本展覧会のチケットにも取り上げられている「夜のカフェテラス」については、私は初めて見ることが出来まして幸せでした。この作品の美しさは、各種解説されていますように星空の青とカフェテラスにあるランタン光の黄色とのコントラストが補色関係にあるため際立ち、かつ明るい夜の都会の中で空の大きな星がメルヘンチックな雰囲気を醸しだしているためと感じました。東京近代美 ラッピングバス

東京国立近代美術館 ~5/22まで

*ゴッホ展期間中は、月曜日も開館しているそうです。

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April 28, 2005

長崎・長崎県美術館 常設展など

館内運河  長崎県美術館の隈研吾氏設計による建物は、ガラスが多用されて外光を積極的に取り入れた快適な構造となっていることや、ウォーターフロントに建てられているため、美術館の敷地内に運河や水の回廊などがあり美しい景観となっていました。

 また、美術館内の屋上庭園では、佐賀大学と共催して「WOOD WORKS 遊木展」が開催されていまして木製遊具(木製彫刻)とボランティアの方が常駐してお子様が遊べ、かつ美術に親しみを持てるような空間に工夫されていました。水辺屋上庭園

 さて、常設展では「写真/長崎」、「長崎の近代美術」、「ミロ版画展」、「スペイン近現代美術」のコーナーに分かれていました。わたしの好みの作品について簡単な感想を書いていきたいと思います。

 「写真/長崎」では、写真黎明期に活躍した上野彦馬の「露国皇太子ニコライ2世」から、長崎原爆投下後に撮影された山端庸介の「8月9日」、炭鉱の軍艦島を賑やかだった頃に撮影した奈良原一高の「人間の土地・緑なき島」、被爆後の長崎の人と街の風景を捉えた東松照明の「停止した時(11:02)」、「町歩き」、石炭産業が衰退し無人島になった軍艦島の岸壁を長時間露光で叙情的に捉えた「月の光」まで、写真で長崎の歴史を振り返る意欲的な展示でした。

 「長崎の近代美術」では、私の好きな画家の佐伯祐三と交流があった横手貞美の作品「アトリエの庭」、「ビロード服の女」、「モンマルトル風景」が展示されていまして、題材、色使いなどの作風から佐伯の影響が感じ取れました。

 「スペイン近現代美術」では、アントニ・タピエスの「茶の上の黄土」、「身体のコンポジッション」が具体美術的なアンフォルメルの良い作品でした。また、アントニオ・ムラードの「ディップティック(赤と灰色)」は私の好みの壁画調の作品でして、左手の赤に生命を維持する血を、右手の灰色に曇り空から雨が降っているような質感を感じる抽象絵画でした。

長崎県美術館

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長崎・よみがえる須磨コレクション - スペイン美術の500年展

 4/23にオープンしたばかりの長崎県美術館へ行ってきました。この企画展は、第二次大戦中にスペインに特命全権大使として駐在した須磨彌吉郎が収集したコレクションをベースに、スペイン美術500年の流れを紹介するというものでした。このため、有名な画家(エル・グレコ、ディエゴ・ベラスケス、ゴヤ)の作品は、ほとんどありませんでしたが、西洋美術の流れをスペイン絵画を通して知るには、良い展覧会でした。次にセクション順に印象に残った作品などを紹介します。

第1セクション「スペインと長崎」

 展覧会の導入の部分で、ここでは「世界図」、「日本図」などの地図や、世界の民族が描かれている「万国人図」が展示されていました。

第2セクション「15,16世紀の聖堂装飾美術」

 この展覧会のチラシにも掲載されている書物を膝に置き、座っている姿を描いた作者不詳(アラゴンあるいはカタルーニャ派)の「聖ステパノ」が、赤系統の色彩が鮮やかで、タッチもメキシコのフリーダ・カーロ風で現代でも通用する強烈な印象を持った作品でした。他には、西洋美術館からエル・グレコの「十字架のキリスト」が出張していました。

第3セクション「黄金世紀の絵画」

 黄金世紀とは「Siglo de Oro」(スペイン語)を訳したそうで、エル・グレコ、リベーラ、ベラスケス、スルバン、ムリーリョが活躍した16世紀後半から17世紀を示すそうです。

 ここでは、三重県美術館から出張してきたムリーリョ「アレクサンドリアの聖カタリナ」が、天使と聖カタリナが暗雲の中に光を放ち浮かび上がっているドラマチックな絵でした。他には、作者不詳(セビーリャ派)の「十字架を担う幼児キリスト」が、画面上部の赤茶の空、中部の青い空、森、川と下部の赤茶の大地と補色関係の色彩でコントラストが強いなか、キリストが愛くるしく描かれている印象的な絵でした。その他、フランドル絵画の影響を受けたボデゴンと呼ばれる静物画が展示されていました。

第4セクション「18世紀スペイン・ブルボン家の宮廷美術とゴヤ」

 18世紀初頭のスペイン継承戦争(1701~14)からハプスブルク家の衰退とブルボン家の台頭、そしてナポレオンに対しての独立戦争(1808-14)までをここでは扱っているそうです。

 トリコロールカラー(青、白、赤=自由、平等、博愛)を含み写実的に描かれたルイス・デ・ラ・クルス・イ・リオス「フェルドナンド7世の肖像」やアントン・ラファエル・メングス(?)「フェルナンド六世」、「王妃バルバラ」の肖像画が印象的でした。

第5セクション「再評価されるスペイン19世紀絵画」

 バレンシアの台頭による光を捉えたルミニスモ(光彩)絵画(日本風にいうと外光の?)作品が見所となっているそうです。

 ここでは、エウヘニオ・ルーカス・ベラスケスの「貧者の聖体拝領」が、教会内部の窓から差し込んでいる光で左端の聖体拝領している部分を照らし、右端の影の部分とのコントラストが美しい絵でした。リカルド・デ・ビリョーダスの「画家の妻 アントニア・レビーリャ」は、アルジェリア風の薄赤色の背景と絨毯に、手に何かを持って座っている全裸の若い女性が描かれた絵で、美しい作品でした。エドゥアルド・ロサーレスの「大聖堂の内部」は、私の好きな壁を描いた作品でした。歴史的な重みのある風合いが壁に良く表現されていました。

第6セクション「20世紀前半におけるスペイン絵画の展開」

 ピカソ、ミロ、ダリなどのフランスに渡って成功したスペイン人画家は取り上げず、ここでは、スペイン内に留まって活躍した画家を紹介していました。

 フランシスコ・イトゥリーノ「女」は、扇子を持った女性を薄赤系統の色使いで描いた作品で、マティスの影響が窺えました。ホセ・グティエレス・ソラーナ「仮面たち」などの作品は、太くて黒い輪郭線で形態を描写し、全体的に黒っぽい色調でゴヤ風の伝統的なスペイン絵画でした。最後に、金屏風を背景に青黒い和服姿で座り日本刀を取り出している勇ましい男を描いたダンエル・バスケス・ディアス「須磨彌吉郎の肖像」も、本展覧会のコレクターの人となりが伝わってくる良い作品でした。長崎県美

長崎県美術館 ~6/5まで

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福岡・千住 博展

 福岡アジア美術館で開催されている「千住 博展 大徳寺聚光院別院襖絵七七枚のすべて」へ行ってきました。大徳寺といえば京都にあるお寺ですが、この襖絵がある別院は、静岡の伊豆にあるそうです。また襖絵は、今回初めて院外でまとめて展示されたそうです。

 最初の展示は、襖絵ではなく最近作家が手がけている有田焼の十二支のお皿が飾ってありました。干支がユーモラスに描かれた図柄が多く、今年の「酉」を代表にあげますと、頭が右横に向いて口から息が上方にこぼれながら鳴いてる様な感じでした。

 次に襖絵が展示されていました。メインは、一連の「瀧」作品ですが、それ以外のテーマも描かれていました。

「瀧」以外の作品羽田・朝の湖畔

 「水の森」(大書院一の間)は、左端が金色に輝く空間を持ち、そこから右端にかけて森が鬱蒼としていき、その裾野に水が漂っている風景を描いた作品で、光・水によって木が生きていることが実感できる絵でした。また、羽田第2ターミナル1階にある「朝の湖畔」と同じような風景が描れている作品です。

 「砂漠」(大書院二の間)は、鳥取砂丘のような丘陵の砂漠ではなく、断崖絶壁の岩場がある風景が描かれています。ところどころ砂が舞い上がっていて風が吹いていることも感じます。また、左端に小さく人物が描かれていまして、対比によりこの砂漠の大きさや困難さが実感される雄大な作品でした。

 「龍」(書院)は、金色の混沌とした空間から愛嬌がある顔をした龍が現れるところを描いた作品ですが、比較的見慣れた図柄で個人的にはイマイチでした。

 「波」(座禅堂)は、暗黒の波とその波間が青く静かに輝いき、さらに細かい波しぶきが上がっている海が描かれた作品です。座禅堂の襖絵ですので、黒・青の色みの効果で落ち着いた気分になりました。

「瀧」の作品  羽田作品羽田作品

 瀧の作品群は、暗黒空間に勢い良く流れる瀧と、それによって上がる水煙が光が満ちたように見え、壮大な時間の流れが感じられます。個々の作品は、余白空間の暗黒と瀧の白色のバランスが異なる構図を持ち、また瀧の流れを手前、中、奥と描き分け平面の中に立体性を持たせて描き分けられていました。また、瀧の流れ自体は、筆を運んで描いているというよりも、実際に絵具を垂らして制作したような印象を受けました。

 全体を通しての感想は、個々の「瀧」作品は素晴らしいのですが、数多く見たことで、今後作家がこのモチーフの表現をどのように展開していくのかに興味を持ちました。福岡アジ美

福岡アジア美術館 ~5/29まで

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April 27, 2005

福岡・北九州市立美術館 常設展Ⅰ

 ドガの描き方が気に入らなかったためマネによってマネ夫人の顔が切り裂かれた「マネとマネ夫人像」の所蔵で有名な北九州市立美術館へ行ってきました。(ただし美術館のチケットなどには、ルノワールの「麦わら帽子を被った女」が印刷されていましたので、本来はこちらの方が有名かもしれません。)

 さて展示の最初は、郷土作家のコーナーで印象に残った作品が、かぼちゃのバベルの塔(集合マンション)に住んでいる多くの人物がユーモラスに描かれている川原田徹「かぼちゃ浄土」でした。以前Bunkamuraギャラリー「異次元ノ世界展」で瀬戸内海を背景としたレトロチックなバベルの塔の版画作品が印象に残っていましたので、この美術館で油絵を見ることが出来まして感激しました。また、今回実際に北九州に訪れて丘陵に住宅街が出来ている風景が、川原田作品のかぼちゃ(バベルの塔)に見えてきまして、なるほどと感心しました。

 次に、近代美術コーナーで冒頭に紹介した2作品は、ここにありました。しかし、ここで最も印象に残ったのが、寺田政明「雪の運河」でした。この絵は、画用紙に深い緑色をベースとしたクレヨンで描かれたようなザラザラした質感を持った油絵でして、良い意味で冬の枯れた味わいを醸し出していました。

 東洋美術コーナーの「文字のようなかたち かたちのような文字-文字とかたちの密やかな関係」では、書、浮世絵、油絵などのごった煮で展示の意味あいが掴めませんでした。この中で荒川修作「最後の次に」は、ダ・ヴィンチの最後の晩餐の登場人物の稜線を模り、言葉が綴られていまして面白いと思いました。

 コンテンポラリーコーナーでは、アスファルトで絵画を描いた九州派のように左右両脇に水色の厚くザラついた層を持ち、中心部が平坦な層で右上から左下にかけて重ねて水色が塗られ、雨や滝などの水が落ちる情景を連想させる菊畑茂久馬「月光 十六」が美しかったでした。

 テーマーコーナーの「数々の美」で印象的だったのは、メル・ボクナーの「36点の写真と12枚の図式」が7x7マスに1~4の数を数列的に割り当て、実際にそれに対応する1~4層の立方体の積木で立体を構成して上面、正面、斜視の写真で表現したものでした。数列が綺麗な形に揃っているのが視覚的に分かり、楽しめました。八幡ワークス

 その他、別館では次期企画展の「超現実主義の世界展」に合わせているのか分かりませんが、シュールな作品の「池田満寿夫版画展」が開催されていました。また屋外では、フランク・ステラの鉄オブジェ(彫刻)「八幡ワークス」が圧倒的な存在感と北九州の代表的な産業の製鉄に密着した作品で印象的でした。

 全体としての感想は、近代よりも多様な現代作品を見ることが出来まして良かったでした。

北九州市美

北九州市立美術館

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April 21, 2005

東京・ベルギー象徴派展

 Bunkamuraザ・ミュージアムで開催されているベルギー象徴派展へ行ってきました。展覧会のチラシで見る限り、展示の中心となっている作家の作品があまり好きな系統ではなかったのですが、出品作家20名かつ各作家の作風がバラエティに富んでいることもあり、意外と楽しめました。以下、印象に残った作家・作品を記します。

レオン・フレデリック

 真赤なお揃いの服を着た三姉妹がジャガイモの皮をむいている「三姉妹」。赤の鮮やかさが光る絵でした。「アトリエの内部」という作品では、絵の右下に描かれたパレットの絵具が厚く塗られて生々しく、かつ奥でポーズをとっている男性モデルが若干ピンボケしたような柔らかなタッチで描かれている技巧的なうまさが印象的な絵でした。

フェルナン・クノップフ

 本展覧会のチラシを飾っている「アクレイジア『妖精の女王』より」という作品は、深赤茶の髪をもつ美しい女性が、緑を背景とし薄青色が入った白衣を脚元にまとった妖艶な女性の絵で、クリムトなどのウィーン分離派的な作風に感じました。

アルマン・ラッセンフォス

 分離派との関係は、クノップフの作品で感じましたが、こちらの作家は実際にウィーンに出品したことがあるそうです。「劫罰」、「帝権(インペリア)」の2作品とも魔性の女に通じる裸体の絵でした。

ジェームズ・アンソール

 「ルンペンたちの喧嘩」、「オステンドの海水浴場」、「キリストのブリュッセル入城」など。オランダのヤン・ステーン風の楽しげな民衆の姿を写実的ではなく漫画チックに描いた作品が印象的でした。

ジョルジュ・ル・ブラン

 椅子が置かれている部屋のドア越しに少女が立ち去っていく様子を描いた「立ち去る少女」、子供がランタンのある室内で床に腰掛けてジャガイモの皮をむく「室内-じゃがいもの皮をむく子供」など、日常的な光景を木炭のモノトーンで丁寧に描くことで素朴さが心に染み込んでくる作品でした。

ウィリアム・ドグーヴ・ド・ヌンク

 丘陵にある木立ちと灯りの点いた家を眺望した「夜の効果」、鬱蒼とした森の「爛れた森」、立ち枯れたような森の「謎めいた森」など暗緑色の使い方が印象的な作品でした。

レオン・スピリアールト

 アメリカのエドワード・ホッパーのような海岸風景と都会的なアンニュイな雰囲気を持つ作品で、私が本展覧会で最も気に入った作家です。(ただし展覧会の解説文を読みますと作家ご本人は、ロートレックとムンクの影響を受けたそうです。)

 「セマホア信号所」は、画面手前にある防波堤が広角レンズで撮影された風景写真のようにパースペクティブがよく効いており、その奥の荒涼とした青空の下にぽつんと立っている信号所(灯台)が引き立っていました。また、「少女たちと波」では、あたかもカメラで瞬間の動きを写したかのような空気、雲、波の姿が印象的でした。都会的な作品では、カフェのような場所で置き時計の前の椅子に座り頬杖を突いている女を描いた「待つ女」が印象に残りました。

Bunkamura ザ・ミュージアム ~6/12まで

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April 20, 2005

東京・地上はどんなところだったか

 銀座のギャラリー小柳で開催されている内藤礼さんの「地上はどんなところだったか」展へ行ってきました。内藤さんというと直島の家プロジェクト「きんざ」に展示されている作家であることは知っていますが、内部が予約制で見学できず今まで作品を見ることが出来ませんでした。今回は絶好の機会と思い、初めて銀座の画廊へ出向いてみました。

 さて展示は、「地上はどんなところだったか」というタイトルの雲が写っている空の写真群と、「舟送り」と題した土をこねて作った長さ5cmくらいのボート群と、「ナーメンロス/リヒト」という淡いピンク色で沢山の円形で構成したドローイング群の3群で構成されていました。

 「地上はどんなところだったか」では、荒木経惟さんの空の写真と同様に、空を通して作家の心象風景を表現しているのかなと感じました。

 「舟送り」では、灯篭流しの舟を連想し、生者と死者をつなぐ渡し舟のようでした。舟を模っている土も、直島や「きんざ」のもので作られていまして(他には広島)、作家のゆかりの地の素材にこだわりがあるようでした。また、展示方法も舟単体を鑑賞するようになっている部分と、7艘の舟が水のようなところに漂い「地上はどんなところだったか」と組合せで展示されている部分があり、そこでは、舟の上に乗せられた魂がさまよいながら動いている印象をうけました。

 「ナーメンロス/リヒト」では、良く眼を凝らして見ないと分からないくらいの薄いピンク色で円形が描写されていまして、それらが無限の奥に突き進めそうなトンネルめいたものや、生命などが発生しそうな雰囲気の場などに感じられました。

 全体を通しての作品の印象は、粗暴に扱うと物理面および精神面からも直ぐに壊れそうな繊細さが女性らしい視点に感じました。

ギャラリー小柳 ~5/14まで

TAB イベント - 内藤 礼 「地上はどんなところだったか」

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April 19, 2005

東京・ ジョルジュ・ド・ラ・トゥール展

 ジョルジュ・ド・ラ・トゥールという名前で思い出しますのは、ろうそくの薄明かりで室内風景を巧みに描いた画家という印象でした。その理由としましては、約20年前にNHKスペシャルで放映された「ルーブル美術館」で、暗闇の中、腰をかがめて木に穴を開けている老人(聖ヨセフ)と少女がろうそくの薄明かりで浮かび上がる情景を描写した「大工の聖ヨセフ」という絵を取り上げられていたことと、その3年後くらいに実際にルーブルへ行き、入り口から遠い展示室から徐々にクローズしている閉館間際にその絵を何とか見ることができ、静寂さと火の温かさが感じられ大変印象に残っているためです。

 本展覧会開催のきっかけとなった西洋美所蔵の「聖トマス」を昨年常設展で鑑賞したところ、ろうそくで浮かび上がる夜のしじまな風景と感じられず、本当に真作なのかと逆に疑問を感じていました。今回の展覧会では、「聖トマス」は宗教画「アルビの『キリスト十二使徒』連作」の一部であることや、昼の光景を捉えた絵画など画家の夜とは異なった側面も紹介されていまして大変勉強になりました。

●夜の光景 ■

 暗闇の中でマグダラのマリアがろうそくの薄明かりの中、机に肘をつき手に骸骨を持ちながら書物を読んでいる「書物のあるマグダラのマリア」という作品が、背景の暗闇が青黒色系で、また人物、机などの風景が茶褐色系で描かれて色彩的にも美しい絵でした。また、この茶褐色系の色使いは、最晩年に描かれた絵画「荒野の洗礼者聖ヨハネ」に似た渋い味わいを感じました。その他作品では、先に紹介した「大工の聖ヨセフ」の模作などが展示されていました。

●昼の光景

 室内で行っている賭けトランプゲームの最中にいかさま師集団が目配せしながら右端にいるかもを手玉に取る瞬間を描いた「ダイヤのエースを持ついかさま師」が、レ・ミゼラブルに出てくるようないかがわしい酒場のあるじ的なユーモラスな絵画で印象的でした。このような夜の光景ではないラトゥールの絵は、所蔵されているルーブル美術館でみると案外気付かずに素通りしてしまうのではないかと思いますので、今回作品の背景を知ると同時にじっくりと鑑賞することが出来て良かったと思います。西洋美・春

国立西洋美術館 ~5/29まで

ジョルジュ・ド・ラ・トゥール展(読売新聞社HP)

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April 06, 2005

香川・風景遊歩

 丸亀駅近くにあるMIMOCAこと丸亀市猪熊弦一郎現代美術館へ行きました。今回の訪問の目的は、「風景」というどのようにでも解釈できるテーマのため、幅広い現代作家の作品が鑑賞できることが楽しみでした。

 作品は、「あたらしい風景」(水色)と「みえない風景」(ピンク色)の2つのグループに色分けして展示されていました。「あたらしい風景」とは、今まで気付かなかったり、ありふれていた風景が新たな価値で見出されている作品類で、「みえない風景」は、どこかでみた風景(既視感)や眼以外の感覚風景類です。個人的な感想では、出展作品そのもの、若しくは同じ作家の別の作品など、ここ数年の各地の美術展などで過去に見た事があるようなものが大半で、今ひとつ「風景遊歩」というほどの楽しさやインパクトがありませんでした。その中でも、印象に残った作品を記します。

 小野博「あそこからでは何もみえない」は、半分がピンボケしている東京のビル街の眺望写真、もう一方がシャープにピントの合ったオランダの教会などがみえる街並みの眺望写真があり、さらにそれらから両都市の雑踏の音が流れている作品です。オランダからは、自転車若しくは路面電車のリンリン音や子供の遊び声が流れ、東京からは対照的に自動車の走行ノイズや山手線の電車アナウンス音などが聞こえてきます。最初は、単なる視覚作品と思いましたが、音を聞かせることでその街の住人や活力を想像させる、どちらかというと音の作品であることが面白かったでした。

 福岡道雄「琵琶湖の凪」は、緑暗色のFRP製直方体の上面が波立っているだけの作品です。ただし、いかにも琵琶湖のちょっと濁った表層水をくり抜いて持ってきたような質感がありまして、驚きの作品でした。

 藤本由紀夫「EARS WITH CHAIR (MARUGAME)」は、一見すると単なる椅子と、その近くにあるパイプ状の手すりにしか見えない作品です。しかし、その椅子に座りますとパイプ端部が両耳近く届きまして、そこから反響音が聞こえる不思議な作品でした。特に紙などでガサゴソと音を立てると良く反響して楽しめました。

 最後に、高木正勝のビデオインスタレーション作品「bloomy girls」などが3F展示室内と2Fミュージアムホールに展示されていました。カラフルな水が流れ、それが薄っすらと女性の顔を浮かび上がらせる洒落た映像で、さらに軽快な音楽が奏でられている洗練された素敵な作品でした。展覧会図録には、この作品がDVDで収録されていますので、思わず購入してしまいました。また、高木さんのHPからこの作品をストリーミングで見ることもできることを、artscapeの学芸員リポートの記事のリンクから知りました。
 高木正勝氏のHP
 高木正勝「bloomy girls」(ストリーミング映像の入口HP)

MIMOCA
丸亀市猪熊弦一郎現代美術館(MIMOCA) ~6/12まで

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April 04, 2005

香川・小沢剛 讃岐醤油画資料館

 淡翁荘から引き続きまして醤油画資料館へ。この醤油画資料館自体は、森美術館で昨年開催された「小沢剛:同時に答えろYesとNo!展」に出展されていましてホワイトキューブ(展示室)内にある状態で見ましたが、今回は常設されている鎌田醤油さんの歴史のある建物内で鑑賞することが出来ました。

 作品そのものは前回見たときと変わらないはずですが、美術館で見たときよりも、今回の方がより資料館らしく感じました。その理由としては、美術館は天井が高く資料室の壁の上部空間がすっぽりと空いた状態になり、いかにも美術作品というような感じになっていましたが、常設展示されている鎌田醤油さんの建物は天井が低く、資料室と一体感があり、かつ展示されている絵以外の醤油入れなどの小道具も、この歴史ある場所に置かれると説得力が増したからでした。

 また小沢氏は醤油画資料館を郊外のスーパーマーケットにあるような想像図や模型を制作されていましたが、実際に訪れてみるとその反対で、かつて町の中心の古びたアーケード商店街に讃岐醤油画資料館はありまして、その場所が持っている枯れた魅力も一役買っていると思いました。
讃岐醤油画資料館
小沢剛 讃岐醤油画資料館(鎌田商事HP)
*開館日が、火、木、土に限られていますので、ご注意お願いします。

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April 03, 2005

香川・四谷シモン人形館 淡翁荘

鎌田醤油 お魚電車にて坂出駅に到着しました。駅近くにある香風園という庭園を見学後、すぐ北にある鎌田醤油さんの直売所に行き受付を済ませ、「四谷シモン人形館 淡翁荘」と「小沢剛 讃岐醤油画資料館」を訪問しました。

 四谷シモンさんという人形作家のお名前は知っていましたが、人形というと「かわいらしい女の子」の像というイメージが先行して作品に興味が持てませんでしたので、最初はここまで来たので訪問しようという軽い動機でした。しかし、訪問して最初に気付きましたのが、四谷シモンさんの人形は、いわゆる「かわいらしい人形」ではなくて機械仕掛けの精巧な球体関節人形であること。さらに、彫刻作品のようにダイナミックな人間の姿を形取ったものであることが分かりました。

 作品を展示している淡翁荘は洒落た洋館でして、様々な家具や調度品が置かれた部屋の中で鑑賞するようになっています。展示方法も通常の部屋では、カーテンを掛け外光を遮り照明をつけ薄暗い雰囲気で、今にも人形が動き出しそうに仕立て上げられたり、トイレであったところでは、白壁を利用し外光を取り入れ健全な明るい雰囲気にしたり、昔金庫であったところや押入れなどの暗い場所では、作品をライトのみで照明していたり、人形以外にも澁澤龍彦や瀧口修造のシモン作品への自筆批評原稿も展示されていたりと、各種の工夫がされていました。

 まず最初に玄関付近に展示されている「ピグマリオニスム・ナルシズム」という四谷シモンさん本人を写したと思われる球体関節人形は、人形内部の骨組みや関節を動かす精巧な機械が見えるように皮膚の部分をすべて覆わず半完成の状態にしてありまして、ゼンマイなどの動力があれば今にも動き出しそうな作品でした。2階の広い洋間の中に左右対称に置かれている「男の人形1」、「男の人形2」は、それぞれ人よりちょっと身長が高く2m位ある筋肉質のしっかりした男の静かな姿が対になっていまして、仏像の金剛力士・阿吽像のようなダイナミックさを感じました。唯一展示されている女性人形の「木枠で出来た少女3」では、少女の完成した美しい顔と半身しかない木枠の未完成状態の差が、鏡の上に展示されていることでさらに強調され刹那さを感じました。
淡翁荘
四谷シモン人形館・淡翁荘(鎌田商事HP)
*開館日が、火、木、土に限られていますので、ご注意お願いします。

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March 29, 2005

山口・「時間旅行」展

 山口情報芸術センター(YCAM)で開催されている「時間旅行」展という不思議なタイトルの展覧会へ行ってきました。このYCAMは、開館時間が21時まで(「時間旅行」展は20時まで)と一般的な美術館よりも遅くまで開いていまして、さらに入場無料で気軽に利用できることが特徴です。今回は津和野の帰りに立ち寄りましたので、夕方6時半頃YCAMに到着しましたが、十分に見学することが出来ました。

 さて、「時間旅行」展は、2003年3~6月に日本科学未来館で開催されたものが、中国、メキシコと巡回展示され、このYCAMに到着したそうです。山口に巡回した理由は、有名な数学者の広中平祐氏が山口大学学長の頃に学際領域分野として時間学研究所を設立し、その研究所が日本科学未来館で展示したときに企画協力したのが縁だそうです。

 また会場では、広いフロアに様々なものが展示されていましたため間誤付いていますと、トラベルナビゲーターというボランティアの方が順序良く説明してくださりました。また展示を良く理解するうえでも手助けしていただき、大変有難かったです。

 前置きが長くなりましたが展示テーマは、「タイムデザイン(時間のデザイン)」、「タイムスケール(時間の大きさ)」、「タイムズアロー(時間の矢)」の3つで、それに沿うように主にインタラクティブ、コミュニケーションアートの作品として展示されていました。換言しますと、一般的な美術館の展覧会は、一方的に見るだけで終わってしまいますが、ここでは作品を自分で触って、動かして、遊んで、そして上記の時間を構成する3要素を学習するように工夫されていました。特に時間は見えないために、心臓の鼓動や心拍から発せられる意識していない時間を視覚で体験できる「動物時間」、「心拍時計」などの作品や、時間の長さ、いわゆる間などを遊びながら体験できる「生命のリズム」「ディレイ電話」など、星から地球に届いている光や、相対性理論の重要な構成要素となっている光、並びに光速を間接的に体験できる「光の旅」「宇宙電波望遠鏡観測」「相対性理論で走ろう」など、常に時間が変化していることを音楽を通して聴覚で体験できる「ヴェクサシオン-コンポジッションインプログレス」など、様々に工夫されていました。

 多くの作品をアートとして楽しみながら体験することで、時間に関する科学的な事象も理解できる一石二鳥の展示で大変良かったでした。
YCAM
山口情報芸術センター(YCAM) ~6/19まで

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March 28, 2005

島根・安野光雅美術館

安野光雅美術館 津和野駅到着後、駅の直ぐそばにある絵本作家で有名な安野光雅さんの美術館へ行きました。ここの美術館の特徴は、何故か昔懐かしい木の長机の教室や図書館、プラネタリウムなどの学習設備が併設されていることです。今回は、絵よりもプラネタリウム目的で訪問しました。

 プラネタリウムでは、最初に安野さんが津和野の町の思い出や、この美術館の概要を説明してくださるビデオが上演された後、春の星座についてプラネタリウムを使って「春の大曲線」や「春の大三角形」などの説明がありました。その後、再度ビデオ映写に戻りまして「天動説と地動説」について、特に直感的に理解しがたい地動説の具体的事例を安野さんの挿絵で説明しながら、どちらが正しく感じるか解説していました。春の星座などは大昔に習ったきり、すっかり忘れていましたので久々に勉強になりました。

 絵画作品は水彩画が中心で、「津和野」「安曇野」などの素朴な風景を中心にした作品は、やわらかな淡いタッチで、「蚤の市」などの絵本挿絵は、シャープな線の細かいタッチで、それぞれ対象に合わせて描写方法を使い分けて描かれていました。

 全体を通しては、絵本や、昔懐かしい木造教室、小学生の頃夢中になった天体観察などが追体験でき、童心に帰った気分になりました。

安野光雅美術館
春の星座(ぐんま天文台HP)

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March 25, 2005

兵庫・ドレスデン国立美術館展-世界の鏡

 芦屋の後は、兵庫県立美術館へ行きました。お目当ては、フェルメールの「窓辺で手紙を読む若い女」を鑑賞することでしたが、その前にドレスデン国立美術館の膨大なコレクションに圧倒されて疲れてしまいました。また、比較的会期の始めなのが良かったかどうか分かりませんが、フェルメールが来ている割には意外と館内が空いていました。

 私は、ドレスデンという場所すら知りませんでしたので、この美術館の凄さを始めて認識しました。この美術館は、「数学物理サロン」「武具展示館」「アルテ・マイスター絵画館」「陶磁器コレクション」「コイン博物館」等様々な博物館群と膨大なコレクションがあり、今回の来日展では、それぞれの博物館から代表的な(といっても超一級品まで行かないような)コレクションが展示されていまして、その種類の多さとそれぞれの美しさに圧倒されていました。詳しい展示内容は、下記公式HPの「展覧会構成と主な出品作品」でご確認お願い致します。

ドレスデン国立美術館展(公式HP)
ドレスデン国立美術博物館HP(日本語)

 さて、お目当てのフェルメール「窓辺で手紙を読む若い女」については、題目通り部屋のコーナー(左側面が窓、奥が壁)に若い女性が光の差し込む窓辺に向かって立ち手紙を読んでいる情景で、一見すると平面的な構成となっていますが、実際にみますと女性と奥の壁との間に奥行があるように感じました。その原因を推定していきますと、絵の右下から左上にかけて、右手にあるカーテンの下部のしわ、左上にある赤いカーテンの位置で対角線が形成され、同様に、左下から右上にかけて左下にあるテーブルクロスの山と右手にあるカーテンの上部の重なり部分でもう一つの対角線が形成され、それらの交点に女性の頭部が描かれて、視線がそこに集まるような構成になっていると思いました。しかし、この絵の実際の消失点を左側の窓から推定すると、女性の頭部とずれて、右手にあることが視差による奥行の原因と思いました。
兵庫県美
兵庫県立美術館 ~5/22まで

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兵庫・よみがえった油絵 大橋了介作品の修復と再生

 引き続き芦屋市立美術博物館の展示について書いていきます。大橋了介についても今回訪問して初めて知りました。荻須高徳、山口長男、横手貞美とパリで佐伯祐三の影響を受けた作家ということを知りまして、佐伯ファンの私としては、非常に興味深くその作品を鑑賞することが出来ました。また、よみがえった油絵というタイトルに関しましては、ご家族が保有されている多くの作品が、キャンバスの木枠をはずし丸めて保存しているなど保存状態が悪いために、東京芸大大学院へ修復作業の実習教材として提供し、今回の展覧会を開けるくらいの作品がよみがえった(修復し返却された)ことに由来しています。

 さて作品の方は、佐伯祐三や荻須高徳と同種のパリ(若しくは近郊)の街角を描いたものが多かったです。各作品を佐伯と比較鑑賞していましたので、楽しめました。(欲を言えば、佐伯作品と並べて展示していただけたらと思いました。) 例えば、暗い青空と赤い屋根が対照的なモランの寺を描いた大橋の「村の寺院」は、佐伯の「モランの寺」を、街角にある茶色のレストランの壁に白、黄、赤の街頭ポスターが貼ってある「カフェレストラン」という大橋作品は、佐伯の広告シリーズなどと頭の中で比較していました。また参考資料的なものでは、夫人で画家の大橋エレナの「薔薇とピアノ」というルノワール的な赤系統でやわらかく明るい油絵や、モラン滞在時に佐伯祐三、荻須高徳、山口長男、横手貞美らと交友している貴重な写真が展示されていました。

 修復作品は、油絵そのものと、修復の過程を記録したファイルが同時に展示されていましたので、こちらも興味深く鑑賞することが出来ました。修復方法については、修復前に正常光、赤外光、紫外光での正面、裏面、斜めからの撮影後、不具合箇所を抽出し、カビなどは取り除いたり、絵具が剥がれた箇所を水彩絵具で補修することなどがファイルに記録されていました。

 全体としての感想は、大橋了介が私の好きな壁系の作風だったことと、油絵修復のプロセスが克明に示されていましたので、意外と楽しめた展示でした。
芦屋美博
芦屋市立美術博物館 ~4/10まで

<その他情報>
 1階にある歴史資料室では、「これなんやろ? ちょっと昔の生活道具」と題したレトロな家具、雑貨、電化製品などが展示されていまして、こちらもタイムスリップしたようで楽しめました。

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March 24, 2005

兵庫・震災から10年 米田知子展

 芦屋市立美術博物館のこの展覧会に関するHPを見ていましたら横浜トリエンナーレ2005に参加すると書かれていましたので、秋まで待たずに行って見ることにしました。

●常設展(1階での展示)
 米田知子展の前に1階では、震災をテーマに収蔵作品が展示されていました。福岡市美術館常設展でも見ましたデヴィッド・ナッシュの「内側・外側」という木の素朴な彫刻作品がホールの中央に飾られていました。この作品自体は震災をテーマにしたものではありませんが、作家の個展の際に来館し、展示中に震災にあいダメージを受け、その後修復して作家から寄贈されたというエピソードも添えて展示されていました。

 また、具体のコレクションで有名な美術館らしく堀尾貞治の「震災風景」が壁に飾られていました。この作品は、キャンバスで描かれ額縁で飾られているのではなく、ダンボールの上に置かれた画用紙に描かれていました。震災直後にダンボールを下敷きにして描いたかどうかわかりませんが、その展示方法と荒々しい筆致が震災の凄さを物語る生々しい作品でした。

●「伝えたいあの日」震災記録写真展
 震災直後に芦屋に住んでいる方がフィルム付カメラで撮った「被災者から見て記録しておきたいこと」の写真が展示されていました。甚大な被害を受けた家屋、炊き出しの風景、葬式の参列、雪遊びなど様々な写真がありましたが、風景よりも人物を中心とした写真が圧倒的に多く、それが報道写真との違いかなと思いました。

●震災から10年 米田知子展
 米田知子さんについては、今回初めて作品を拝見しました。展示は、震災直後の神戸周辺を撮影した白黒写真が10枚1グループとして、10年経って復興途中であったり復興した芦屋市内の風景を撮ったカラー写真が8枚1グループとして、対比するようになっていました。

 まずは震災直後の白黒写真ですが、見せたい風景、事物などにのみピントが合い周辺がボケている技巧的に凝った作品が4点ありまして、乗り物の窓を見ている少女越しに島を捉えた「震災地・淡路島」や、「レコード・灘」、「引き出しとクスリ・元町」や、震災直後の持ち出し荷物から落としてしまったと思われる運動会の写真とその地面を捉えた「写真、灘」でした。また、全体がシャープなピントで震災風景を記録した作品が6点展示されていまして、「靴底、長田」、商店街の飾り付けの造花が散乱した「商店街、長田」、建物の一部が崩壊した「神戸市役所、三宮」、「西洋窓、北野」、「瓦礫、須磨」などでした。

 震災から10年後のカラーの作品群は、全体がシャープなピントで撮影された普通にある都市風景と感じられますが、キャプション(題目)と合わせて見ますと印象が全く変わるものでした。例えば、手前に広い草むらがあり遠景に団地が写っている新興住宅地ならばどこにでもあるような風景ですが、その題目が「空地Ⅰ(市内最大の仮設住宅跡地から震災復興住宅をのぞむ)」でして、現在草むらになっている部分には、10年前は仮設住宅が並んでいたことが想像されました。同様に、どこにでもあるようなベンチ・遊具・大きな木がある公園風景の題目が「公園(避難所跡地と市内最大の被害を受けた地域)」、この展覧会のパンフレットにも使われている机など何も置かれていない教室の窓と床を撮った写真が「教室Ⅰ(遺体仮安置所をへて、震災資料室として使われていた/芦屋)」、川の両岸に並んだ近代的なビル群が夕日に照らされ、川の中央にある島には、黄色い服を着た少年が遊んでいる都会にある牧歌的な風景が「川(両サイドに仮設住宅跡地、中央奥に震災復興住宅をのぞむ」などとキャプションが強く、それによって現在の風景を見ながら過去も想像し重ね合わせて見てしまう作品でした。

 その他、震災関係の諸資料が展示室内で自由に閲覧できるようになっていました。

芦屋市立美術博物館 ~4/10まで

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March 21, 2005

岡山・奈義町現代美術館

 建築家とアーティストがコラボレーションして作品=空間を作った素晴らしい美術館と兼ねてから噂を聞いていました奈義町現代美術館へ行ってきました。建築家は磯崎新 氏、アーティストは、宮脇愛子、荒川修作+マドリン・キンズ、岡崎和郎の各氏が担当し、それぞれ大地、太陽、月を象徴した展示室になっています。

<大地> 磯崎新、宮脇愛子「うつろひ」
 「うつろひ」は、ワイヤーフレームがアーチ状になっている一種の彫刻作品です。風などによってワイヤーフレームが揺れることで、たえず変化する(うつろう)作品となっています。ここでは、屋内外に分かれて展示されていました。屋外では、神社の玉砂利くらいの大きさの石が敷き詰められた池の上に設置されて、ワイヤフレームは風でたなびかなかったものの、水面が軽く波立って揺れていましたので、変化する反射光がワイヤフレームに光の「うつろひ」効果を発揮していました。それと対照的に屋内に設置されたワイヤーフレームは、風でたなびくこともなく、水も張られていないため、窓からの入射光以外に移ろうものもなく、単なるワイヤフレームになっていました。作家の意図は、はっきりしませんが、屋内外でうつろう時間のスパン(長さ)を表現したのかなと感じました。

<太陽>
 磯崎新、荒川修作+マドリン・キンズ「遍在の場・奈義の龍安寺・建築的身体」

 階段以外の床面は平らな部分がなく、常に不安定で身体へ負荷がかかるような構造になっていました。別室に展示されていたこの作品についてのドローイングや哲学的な考察から、「身体への負荷=日常忘れ去られた重力の影響を魂から揺り起こすこと」が重要だそうです。螺旋階段を上がって筒形の展示室に入ると、正面から陽が差し込み白色に輝き、背面は黒く塗られ光を吸収し、筒の左右両側には龍安寺の石庭が湾曲して作られ、筒の上下には湾曲したベンチやシーソーが対称に置かれ、補色の関係を持つ赤線(地面)と緑線(空)が引かれている構成になっていました。良く理解できていないのですが別室展示の哲学的考察によると、このような作品を体験することで考え方などが反転する機会になるらしいです。

<月> 磯崎新、岡崎和郎「HISASHI - 補遺するもの」
 展示室を一見すると、白いレンガを模した壁面が楕円の長手方向で2つに分けた半楕円状の空間になっているところに、両端から光が差し込みHISASHIとベンチが置かれた室内を明るく照らしている、単に綺麗な部屋だと思いました。しかし室内に入り土で作られた床面を歩くと、その音がジャリジャリと反響する構造になっていました。白い壁面に設置されたHISASHIそのものは音響効果などに意味を成しているようには思えませんでしたので、それが補遺するものと命名された理由かなと考えました。副題に「休息のためにHISASHIとベンチが与えられたとせよ。」とありましたので、石製のベンチに腰掛けますと、反響音が無くなり冷えた静かな空間になりました。人の、動と静で部屋の雰囲気が変わる不思議な空間作品でした。
Nagi_moca
奈義町現代美術館
館内の作品は上記HPで体験することが出来ます。

<その他情報>
 美術館までは、上記HPに書かれたアクセスを参考に、岡山-津山間をJRで、津山からは中鉄バスで行きました。
JRは、3/1にダイヤ改正がありましたのでHPの時刻表と異なっています。
また、バスについては、ダイヤ改正していないので、HPのまま利用できました。
このため、JRとバスの接続が悪くなっている時間帯もありますので、要注意です。

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March 19, 2005

広島・草間彌生展 - 魂を燃やす8つの空間

 比治山アートプロジェクトを鑑賞後、全国を巡回している草間彌生展が広島市現代美術館へ来ていましたので、見に行きました。アートスケープ学芸員リポートの記事によりますと、巡回している各美術館で副題が異なり、それぞれの切り口で展示されているそうです。広島の副題は、「魂を燃やす8つの空間」というもので、8つのカテゴリに作品を分類し、それぞれを1つの部屋に展示していました。

<1.突起の部屋>
 「The Man」というその名の通り男根状の突起に”やかん”が、ぶら下がった作品からも想像できますように、様々なオブジェに男根を連想させる白色や銀色の突起が沢山ついて、鑑賞者を視覚的に脅迫する作品類でした。中でも、「死の海を行く」はボートに突起がついた作品で、数年前に東京都現代美術館で開催された草間彌生展にも目玉として出品されていたものでした。また、変り種としては、金色のバラの花がついている「フラワーシャツ」という作品もありました。

<2.絵画の部屋>
 「無限の網」などの絵画の部屋で、平面的な網が色彩や網の密度差、規則的な線の導入などによって遠近感や立体感が演出されていました。また、それぞれの網(絵画)をwindowsの壁紙を並べたようにした場合には、どのような立体感が考えられるのだろうかと推測しながら鑑賞していました。

<3.映像の部屋>
 水玉模様をつけた赤い服を着た作家がニューヨークの公園内で、これまた水玉模様をつけられた馬に乗りながら池までいく「SELF-OBLITERATION(自己消滅)」という、パフォーマンス作品でした。以前丸亀の猪熊弦一郎美術館で開催された草間彌生展で上映されていた映像作品よりもインパクトの少なくおとなしいものでしたので、今ひとつ前衛的な面が見られず残念でした。

<4.植物の部屋>
 植物の部屋の前に小品の部屋があり、濃色の青に赤く浮かぶ太陽の様な円形が描かれた静寂を感じさせる「不知火」という作品が、川端康成記念会蔵になっていまして文豪も所蔵していたのかなと思いました。植物の部屋では、「南瓜」という黒い水玉模様を持った黄色い様々な形をした南瓜のオブジェが6x8個棚に並べていました。今まで直島のベネッセアートサイトや福岡市美術館で大きな南瓜のオブジェを見てきまして、その姿形は同一のものと思っていましたが、色々な形があることは新たな発見でした。また、「再生の時間」という黒い水玉模様を持った指のような円錐状の曲がりくねった赤いオブジェが森の木のように沢山並べられたインスタレーションは、植物そのものではないですが生命感のある作品でした。さらに、「天の川」という網目の絵画作品は、赤く太い線と青く細い線で描かれていまして動脈、静脈の血流をイメージする躍動感がありました。

<5.バルーンとミラーボールの部屋>
 ミラーボールは、多数並べた「ナルシスの庭」という代表作が展示されていました。バルーンは「水玉脅迫」というクサマトリックスでも展示されていました赤い水玉を持った白いピーナッツ形状をしたものが浮かんでいました。

<6.ミラールームの部屋>
 コンクリートの床に、少ない展示物で非常に殺風景な部屋になっていましたが、これはキュレーターさんがミラールームの無限感と対比させるために演出したそうです。その効果もありまして、赤い突起がミラールーム内で無限に広がる「終わりなき愛」や、ハート型の鏡に縁取られた赤いライトによってハート型の奥行のある光を鏡面に放つ「ゴットハート」が、雑念なく鑑賞することが出来ました。

<7.ブラックライトの部屋>
 「I'm Here, but Nothing」というブラックライトに照らされた食卓や本棚に水玉模様が怪しく光る不思議な世界でした。題名の通り草間の初期のポスターなどが貼ってありました。ここだけは、草間スタジオが私的に撮影することを許していました。私は知らずにカメラを持ち込まなかったので、記念撮影できませんでした。残念でした。

<8.暗い部屋>
 ちょっと強引な分類だと思いますが、どちらかというとミラールームの部屋に近い作品です。一つは、クサマトリックスでも展示されていました「天国への梯子」という梯子の上下にある鏡の効果により、無限に梯子が繋がっている作品でした。二つ目は、「水上の蛍」という作品で、下面は水面で、それ以外の面が鏡で囲まれた空間に様々な色の電球がぶら下がり鏡と水面の反射の効果で蛍のように無数に光っている部屋の中に鑑賞者が一人ずつ入り体験するものでした。他の作家の似たような作品ではベネッセアートサイトの角屋にある宮島達男の暗い家の水が張られた床面にデジタルカウンターが動いている「Sea of Time '98」と比較すると、草間の作品は静かで秋のような季節感を感じさせるものでした。

 全体を通しては、各部屋には同系統の作品が展示されていましたので、それぞれ比較しやすかったのが、良い点でした。残念な点は、この作家がどうのような活動をしてきて、どのような作品を生み続けているのかという思考のプロセスが、今回の展示では捉えにくかったでした。
広島市現代美
草間彌生オフィシャルサイト

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March 16, 2005

広島・比治山アートプロジェクト

 ひろしま美術館の後、広電に揺られて比治山下電停まで行きました。比治山公園内にある広島現代美術館までの坂道を上がっていきますと、なにやら心地よいポコポコ音が聞こえてきました。何の音かなと思って探っていきますと、比治山スカイウォーク周辺に設置された「比治山アートプロジェクト」であることが判明しました。

 まずスカイウォークの周辺では、新田和成さんの「みんなのあーと」という万国旗のように布をぶら下げたインスタレーションがありました。また、エスカレータの乗換場所や、スカイウォークから美術館までの小径のところどころに、松本秋則さんの「音の風景(広島編)」という心地よい音を出す竹のオブジェが展示されていました。

 晴れた日に訪問しましたので、非常に心地よい体験が出来ました。 
スカイウォーク周辺竹の楽器1竹の楽器2美術館前ボテロと
広島市現代美術館 ~3/27まで

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March 15, 2005

広島・ひろしま美術館

 ひろしま美術館常設展へ行ってきました。今回訪問したきっかけは、全館常設展示されているために、有名なヨーロッパ絵画のみならず日本の近代絵画を含むほぼすべてのコレクションが見れるためです。気になった作品について、展示テーマ毎に書き留めたいと思います。

<ロマン主義から印象派まで>
 印象派前後では、パステル絵画の色彩が綺麗で、かつ構図的にも素晴らしい作品が多かったでした。具体的には、ミレーの「薪拾い、夕陽」や、手前に刈入れを行っている農夫と遠景に農場を描いた「刈入れ」や、やさしい表情の婦人の横顔が印象的なマネの「灰色の羽根帽子の婦人」、タライにかがむ女性を背後(お尻)から眺めた力強い構図のドガの「浴槽の女」です。その他には、青色の背景で黒服のベルト・モリゾーの顔が映えて見えるマネが描いた「バラ色のくつ(ベルト・モリゾー)」や、小品ながらも代表的なルノアールの肖像絵画のような「麦わら帽子の女」、丘陵で貴族が乗馬をして遊んでいるところを描いたドガの「馬上の散策」などがありました。

<新印象派と後期印象派>
 新印象派からはシニャックの点描で描いた作品が2点展示されていました。一つは、港とヨット風景の「ポルトリュー、ブーヴェルロー」と、それより2倍くらい面積が大きな作品でかつ大きな点で構成された「パリ、ポンヌフ」がありました。後期印象派では、農夫の茶色の顔とスーツがその人となりを表しているセザンヌの「坐る農夫」や、ゴッホのオーヴェル=シュル=オワーズ時代の作品で曲がりくねった太い筆使いの「ドービニーの庭」、青い空を背景に岩場に立つ青白いペガサスがドラマチックなオディロン・ルドンのパステル画「ペガサス 岩上の馬」、ムンクの一般的な肖像画の「マイスナー嬢の肖像」などがありました。

<フォーヴィズムとピカソ>
 まずはラウル・デュフィの「エプソム・ダービーの行進」という作品が展示室の入り口付近にありました。エプソム・ダービーとは、一般的に英国ダービーと呼ばれている最も格式のあるレースで、ダービーディ当日の正装した紳士の社交場としての華やかさと新緑で美しい競馬場が描かれた作品でした。ヴラマンクの「雪景色」は、鉛色の重たい空と雪が溶けかけ茶色に汚れた道が力強い線で描かれている北国の空気を感じる絵でした。また、マチスの「ラ・フランス」は、小品ながらも椅子に座る婦人像が単純化したフォルムで描かれているマチスらしい作品でした。最後に、青の時代のピカソの「酒場の二人の女」は、場末の酒場に居る女が寂しく描かれていますが青の色調のため、美しい作品となっていました。

<エコール・ド・パリ>
 ここでは、ローランサンや藤田嗣治などの作品があるのですが、個人的にはあどけない表情の女をやわらかいタッチで描いたパスキンの「緑衣の女」や、目に瞳がかろうじて確認できるモディリアーニの「青いブラウスの婦人像」などが好みの作品でした。また、シャガールの2点の作品は、色彩が綺麗でした。一つは「私のおばあちゃん」で、青い空間の室内に赤、黄色に部分的に染められた頭巾を被ったおばあさんが犬と腰をかけているカラフルな絵でした。二つ目の「河のほとり」は、青い色調でシャガールらしい構成物の馬、恋人が描かれた作品でした。

<日本の近代美術>
 企画展示室を使って日本の近代美術作品が展示されていました。中でも佐伯祐三の一枚のキャンバスの表裏両面にそれぞれ「風景」「裸婦」が描かれてた作品が気になりました。特に「裸婦」の方に、暗い室内の手前に裸婦が、その窓越しにモランの寺と推測される風景が描かれていました。その他では、三尾公三の「残照」「森の卓」が、青い背景の手前にこちらを見る眼差しや白い階段状のオブジェやマネキンの首、手が置かれているテーブルが描かれたシュールかつクールな絵でした。
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ひろしま美術館

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March 12, 2005

東京・愛と孤独、そして笑い 展

 東京の美術館めぐりの最後は、東京都現代美術館(mot)で毎年若手作家を紹介する展覧会の「mot anuual 2005 愛と孤独、そして笑い」展へ行きました。今年は、女性作家10名で構成された内容となっていました。展覧会のチラシの解説を読みますと、テーマの「愛と孤独」の部分が現在の社会的な閉塞感を示し、「そして笑い」の部分が未来に対しての希望のように読み取れました。

 さて展示の中で現在までの社会的な閉塞感を表したものとしては、古ダンスの各引き出しの中に家族の秘密が書かれた文とインスタレーションで構成した嶋田美子の「箪笥の中の骨」や、手前のスクリーンに1940年代の穏やかな家族の集合写真を、その背後では戦争に向かっていく日本の様子を重ね合わせて投影した出光真子のインスタレーション「直前の過去」、家事・雑用などから開放され雨傘を持って団地内を躍り回る主婦をテレビのワイドショー的に仕立てたビデオ作品とインクジェットの巨大ポスターでインスタレーションした岡田裕子の「SINGIN' IN THE PAIN」がありました。また、閉塞感とはいえないものの、澤田知子の「School days」は、高校の記念集合写真を組み写真で表現したものですが、その生徒・先生を作家ご本人がすべて演じています。その生徒の表情には、おすまし、ぶりっこ、上目使い、下目使い、明るい、暗い、緊張、ゆるみなど対立表現されていました。

 閉塞感を表さず、かつ未来的でもなく中立的で美しいと感じた作品としましては、濃紺にボケたタッチでやわらかい人物像が描かれたイケムラレイコの「黒に浮かぶ」「黒の中」などの絵画や、ナイフと狐(ケダモノ)と少女が描かれた鴻池朋子の「knife life」、手前からほのかな光が当たっているものの、黒いシルエットで人物の線を強調したオノデラユキの「Transvest」の白黒写真シリーズがありました。

 未来に対しての希望を表したものとしては、癒し系でかわいいキャラ的な綿引展子の「かがやく真昼」などの絵画や、現在の特定の事象を総括し言葉や文字の力で伝えるイチハラヒロコの「一生遊んで暮らしたい。」などの作品、溝口彰子O.I.C(オーガナイザー、インタロキュータ、クリティック=取りまとめ、橋渡し、批評)の「私の愛する男は私の中で射精する。精液が体の中を流れて行く。いつもこの瞬間、一番、生きているのだと思う。」というタイトルの下に制作された筒状の赤色光が点滅するオブジェと男性の吐息音で構成したインスタレーションがありました。

 全体を通しての感想は、戦争や秘密といった過去を批評する考えさせられる作品から、ナンセンスによって現在を笑い飛ばそうとしている楽しいものまで様々な個性が集まっていまして、見所の多い展覧会でした。
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東京都現代美術館 ~3/21まで

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March 09, 2005

東京・ おたく:人格=空間=都市 展

 昨年大変話題になりました第9回ベニス・ビエンナーレ建築展「変容」の日本館「おたく展」の帰国展訪問のため、世田谷美術館のある砧公園から東急線を乗り継いで代官山まで行き、そこから徒歩で恵比寿ガーデンプレイスへ向かいました。お昼過ぎでしたので、「おたく展」が開催されている東京都写真美術館訪問前に、麦酒記念館のティスティングカウンターへ立ち寄り、コップ一杯250円という格安の値段でギネスとヴァイツェンを飲み干しました。

 さて、ほろ酔い気分で美術館へ向かいましたところ、「おたく展」はすでに大盛況でして展示室へ入場するのに長蛇の列が出来ていました。展覧会のコンセプトは、「おたく」という人格を持った人々が「秋葉原」という街に集まり、電気街からおたく街へ都市機能が変容しつつあることを、「おたく」そのものを展示することで感じてもらうことらしいです。

 実際に「おたく」そのものと思われる、ポスターや、レンタルショーケース(の中の様々な本、グッズ、フィギュア)、コミックマーケットで販売している本、漫画など私にとって興味のないものばかりが展示されていました。興味をもてたものの中に、海洋堂の食玩もありましたが、数が少なく中途半端な展示となっていました。一番感心しましたのが、精神科医の斉藤環氏と美術家の開発好明氏の「おたくの個室」という作品で、性別・年齢・職業が異なる18名の「おたく」の方々の部屋をミニチュアで再現したものでした。各部屋の本やビデオの多さ、置かれ方、映像機器などから部屋の主(あるじ)を垣間見ることができました。また、今回サンプリングされた18名の方の職業に大学院生が多かったこともイメージしていた中高生が中核となっているおたく層と異なり以外でした。

 全体の感想としましては、昨年から反響が大きかった展示でしたので期待していたのでしたが、「おたく」に興味がなく、その世界・作品背景が理解できないものにとっては、肩透かしされた内容でした。また「おたく」そのものは、建築・現代美術とも相容れない関係と感じました。
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東京都写真美術館

「おたく:人格=空間=都市」(国際交流基金のHP)

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March 08, 2005

東京・瀧口修造 夢の漂流物

 世田谷美術館で開催されている「瀧口修造 夢の漂流物 同時代・前衛美術家たちの贈り物 1950s~1970s」展を訪問しました。瀧口修造に関しては、2年くらい前に東京国立近代美術館の「旅」展で展示されていた詩や絵などで構成した手製のリバティ・パスポートくらいしか知識がなかったのですが、今回の展覧会パンフレットに書かれている副題「◎ひとりの美術評論家が育んだ前衛美術家たちとの交流の軌跡◎」に惹かれて見ることにしました。昨年から今年にかけて開催されている「マルセル・デュシャンと20世紀美術展」、「フルクサス展」、「マン・レイ展」などを見学した後でしたので、これらの前衛美術の流れと瀧口修造が制作したり蒐集した個々の作品との関連が理解できましたので、興味を持って鑑賞することが出来ましたし、また非常に楽しい経験でした。

 さて、展覧会の内容ですが、作品数が膨大で消化不良気味なので、絞って書きたいと思います。まず最初に氏の書斎写真が並べられていまして、本棚や床に積まれた沢山の書物に囲まれて生活されているところなどから、評論家・詩人といった姿と氏の人となりが思い浮かびました。次に、氏が制作した版画「私の心臓は時を刻む」という峡谷、谷間のように感じる線で構成された抽象作品が多数展示されていました。氏は、これらの抽象絵画(版画)作品と詩を一冊の手のひらにのるような小さな手作り本に纏められていまして、その一つの形態として「リバティ・パスポート」などがありました。

 国内・海外の多くの美術家たちからの贈り物の中では、加納光於、大岡信の「アララットの船あるいは空の蜜」という謎めいた題目かつ、下段に独楽、球、筒、手、ハートなどの様々な形、上段に望遠鏡のような筒を持ち、水の入った容器に詩が書かれている不思議なオブジェがどのような意図で制作されたのか興味を持ちました。また、瀧口修造、中西夏之、武満徹、岡崎和郎、荒川修作、多田美波、赤瀬川原平、加納光於、野中ユリの9作家が9つのオブジェを箱にパッケージした「漂流物 標本函」が、ヨーゼフ・ボイス調の作品でその時代感があり、それぞれ印象に残りました。

 マルセル・デュシャン関係では、移動美術館的な「トランクの箱」や大ガラス制作方法が書かれている「グリーンボックス」を蒐集されていました。それらに関連して、大ガラスの検眼図を立体的なオブジェとして制作した瀧口修造、岡崎和郎の「檢眼圖」、並びにそのコンセプトが書かれている瀧口修造の手作り本「檢眼圖傍白」がデュシャンへのオマージュ的な作品で、面白く感じました。

 全体としての感想は、展覧会の副題のコンセプト通り交流の軌跡としての多くの作品に触れ、瀧口修造が敬愛した現代美術の一端を掴めたと思っています。

世田谷美術館世田谷美術館 ~4/10まで

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February 18, 2005

香川・地中美術館

フェリー 四国周遊の旅の最後は、高松から船で直島へ渡り、昨年オープンした地中美術館を訪問しました。

 安藤忠雄設計の「地中美術館」は、氏らしくコンクリート剥き出しの建築でしたので、経年変化によってドブネズミ色にならないように保守するのは大変だなあと勝手な想像をしながら、ネギみたいな草が植えられている有機質の四角い中庭の回廊を上がり、地下1階の地中ストアに到達しました。さらに個々の作品へは、白い破砕した石を敷き詰めた無機質な三角中庭に設けられた階段を下りてアクセスするようになっていました。

地下3階「ウォルター・デ・マリア室」
 「タイム/タイムレス/ノー・タイム」という作品で、入り口から部屋を見るとコンクリート剥き出しの階段状になっている空間の中心に黒い花崗石で出来た身長よりちょっと大きな球と、それを囲むように1組3対の金色の木製の棒が27組設置されたものです。棒が何故27組設置されているかといいますと、棒の断面が、三、四、五角形になっていまして競馬で言うところの3連単の全通りの組み合わせ数(3*3*3=27)となっています。ちなみに三角、四角、五角が3つとも揃った組合せは階段の最上段に設置されていました。この作品から受けた印象は、材質的にコンクリート、石、金(箔で覆われた木)と無機質なものからなるため、温かみは感じられず冷え冷えとしものでした。また、数分見た印象では時間的な概念も感じられませんでした。

 地下3階のウォルター・デ・マリア室鑑賞後、三角中庭の壁に溝が切られたようになっている回廊部分を通り、地下2階へ向かいました。

地下2階「ジェームズ・タレル室」
 プロジェクターで投影された蝶の様な形をした薄青色光の「アフラム、ペール・ブルー」という作品が入口にあり、さらに進むと金沢21世紀美術館にもある空を切り取って眺め、色の変化を楽しむ「オープン・スカイ」のコーナーがありました。この部屋の最大の見所は、「オープン・フィールド」という作品で、霧がかかっているような青い柔らかい光が幻想的に空間を包み込んでいます。さらに外からその空間を眺めるだけではなく、中に入って体験することもできるようになっています。実際に中に入ると霧のように感じたのは光の乱反射だけで、スモークなどの効果ではないことが分かりました。また、後ろを振り返ると空間の入口がオレンジ色のライトで照らされているため、補色の関係でくっきりと浮かび上がるようになっていました。空間の中にいますと、光の効果で距離感覚が無くなり、非常に不思議な体験をしました。

地下2階「クロード・モネ室」
 最後にクロード・モネの「睡蓮」が展示されている部屋を訪れました。ここは何故かコンクリートから開放されてホワイトキューブの展示室になっています。モネの睡蓮では赤や青、その中間の紫色がよく使われているために、壁が真っ白では眩し過ぎて似合わないように感じました。また、展示室の壁側から太陽光を反射光により取り入れる構造になっていますが、当日午前中に訪問しかつ曇天であったため、絵の発色が冴えず、折角のモネの睡蓮の印象もイマイチでした。ジェームズ・タレルの作品を見た後なので、余計にこの展示室の光の使い方の悪さが目立ちました。

チケットセンター地中美術館

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February 17, 2005

香川・イサムノグチ庭園美術館

庵治石特急うずしお 文化の森駅から鈍行に乗って徳島まで戻り、特急うずしお号に乗り換えて屋島駅まで行きました。そこからタクシーで庵治石の産地の牟礼にあるイサムノグチ庭園美術館へ向かいました。この美術館の見学は要予約で、今回は1ヶ月ほど前に申し込みをして第2希望の時間で返信されました。また、名称こそ美術館となっていますが、大きな建物の中に作品が並べられているわけではなく、完成作品および制作途中の作品がそのまま残されている隠れ家的なアトリエと住居を中心に見学するようになっていました。

 何故アトリエが隠れ家的かといいますと、高さ2mくらいの石垣のストーンサークルで囲われた屋外空間で、目線が外部と遮断された構造になっていることや、地面に薄茶色の小石が敷かれているため落ち着いた雰囲気になっています。そのアトリエ(サークル)内に制作途中の作品(石)が置かれ、切ったもの、割ったもの、ノミを入れたもの、穴を空けたもの、磨かれているものなどの様々な痕跡が残されていました。

 石については、地元の庵治石は極僅かで、大部分が海外産が使われているそうです。余談ですが、同じ黒色の作品でも石の産地が異なりまして、例えば庭園美術館にある「エナジー・ヴォイド」はスウェーデン産で、札幌にある「ブラック・スライド・マントラ」がアフリカ産で出来ているそうです。また、一般的には使われない価値の低い鉄分を多く含んだ赤茶けた石なども、氏は磨くと風合いが良いので好んで使用されたそうです。

 住居の裏手が小高い丘になってまして、そこに大地の彫刻の「彫刻庭園」が造られていました。庭園の丘の頂上は、平坦な広場となりモニュメント的な石が置かれ、その丘の裾野には、石の川が流れ、裾野の広場には、ちょっと小高く石を積んだような場所があるなど、空間の使い方によってコンサートやお花見・お月見などの様々な催し物が出来るようになっていました。

 全体を通しての感想は、イサムノグチの様々な彫刻作品や自然と適度に緊張感を持った空間・世界観を体験できたことが良かったでした。

イサムノグチ庭園美術館
見学予約方法も上記HPに詳しく書かれています。

イサム・ノグチ生誕100年-四国新聞社-

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February 16, 2005

徳島・ マン・レイ展 「私は謎だ。」

文化の森特急剣山 伊予大洲から宇和島、窪川、高知、阿波池田、徳島と汽車を乗り継いで「文化の森」駅まで行きました。駅から徒歩25分くらい1.6km先に文化の森総合公園があり、その中に徳島県立近代美術館もあります。

 今迄に断片的に氏の作品を見ていても、デュシャン、フルクサス同様によく分からない謎の人でしたので、今回まとまって作品を見て多少は理解が進んだように感じました。展覧会の方は、年代順に作品が並べられていますが、感想は「絵画」、「写真」、「オブジェ」について書いていきたいと思います。

・絵画
 絵画は、さっぱり評価されていなかったようですが、今回の展覧会でも出品数が少なく、かつ印象に残ったものも殆どありませんでした。強いて挙げますと、初期の頃(1915年)の木炭で右上から左下へ橋のような線・面が流れるように構成され、左上から右下へ風のようなボカシ線で二つのクロスした流れを表現した「無題」がリズムが良く、2回目のパリ時代(1959年)に男女二人が口づけする瞬間を口・鼻を中心にその他の部分をマスキングして描かれた「二つの顔のイメージ」が都会的で格好良い作品でした。

・写真
 写真は、評価が高かったので、展示数も多く見応えがありました。通常手法で撮影したポートレイト、モード写真などは、全体的にピントがしっかり合ったシャープな印象の与える作品が多かったです。マン・レイの場合は、そのような作品にエアブラシを使う「アエログラフ」や現像中のネガフィルムに光を当てて黒い部分を白く変色させる「ソラリゼーション」などのひねりを加えた技法が用いられて、より一層写真が際立っていました。また、静物では印画紙上に物を置いて光を当てて感光させる「レイヨグラフ」の技法を発見し、それで短編映画を製作するなど様々な表現手法に富んでいまして、大変興味深かったでした。
 技法以外でマン・レイは、デュシャンの製作途中の大ガラスやローズ・セラヴィの写真も撮影していることが交友関係を知る上で貴重なものと感じました。 

・オブジェ
 私がこの展覧会の前まで多く見てきたのがオブジェで、よく分からないと感じていた原因でした。今回は、作品毎に簡単な解説がありましたので、青色に塗られたフランスパンの「パン・パン(最初のパンは、フランス語で色を塗るパン[peint]、次は食べるパン[pain]」や、逆さ箒(ほうき)の「フランスのバレエⅡ(フランス語で踊るバレエ[ballet]と箒[balai]が同一発音」などの言葉遊びがあることが分かりました。また、布で包まれたオブジェ「イジドール・デュカスの謎」は、この詩人の作品の1節を元に作られていることが分かりました。これらはデュシャンのレディメイドと同様で、作品の背景が分からないと理解できないことが今回よく分かりました。

徳島近代美徳島県立近代美術館 ~3/21まで

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February 15, 2005

愛媛・大洲城

梁組み大洲城●大洲城
 先の3連休を利用して鉄道で四国周遊の旅に出ました。最初の途中下車は、伊予大洲でした。駅から臥龍山荘がある市内へ向かい、肱川を渡ると大洲城が見えてきます。この大洲城の天守閣は、木造で昨年復元されたもので、内部の柱・梁などの木材も古枯れていなく、肌色の真新しい状態でした。新築のお城は、清潔感に富み気持ちの良いものでした。
大洲城

●その他情報
 臥龍美術館は、観光案内所の情報では閉館したそうです。

●今回使ったキップ
 今月は、誕生月でしたのでJR四国および土佐くろしお鉄道の特急グリーン車が3日間乗り放題になる「バースディきっぷ」を利用しました。
伊予大洲駅
特急宇和海

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February 07, 2005

芸術新潮 マルセル・デュシャン特集

 「マルセル・デュシャンと20世紀美術」展の感想で、展示の解説が少なく理解が進みませんでしたと書きましたが、今回ご紹介する芸術新潮2月号の「謎の男 マルセル・デュシャン」特集に、「彼女の独身者たちによって裸にされた花嫁さえも(通称:大ガラス)」、「与えられたとせよ 1.落ちる水 2.照明用ガス (遺作)」についてグリーンボックスの解説が掲載されています。その他、初期の印象派やセザンヌ風の作品から晩年の遺作までの豊富な図版もあり、なかなか読み応えがありました。
 お勧めの一冊です。

芸術新潮2月号 謎の男 マルセル・デュシャン
芸術新潮 最新号-目次など-

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February 03, 2005

沖縄・沖縄平和祈念堂

平和祈念堂 北部の花見から一転して南部の糸満・摩文仁にある平和祈念公園へ行ってきました。約10年前にも定期観光バスで訪問しましたが、その時は平和祈念堂をちょっこっとしか見学出来ませんでした。今回は、ゆっくりと見学しましたので、レポートしたいと思います

●沖縄平和祈念堂

 那覇空港へ着陸する前に機内からもときどき見える独特な形をした建物が、沖縄平和祈念堂です(写真参照)。祈念堂の内部は、山田真山の堆錦(漆工芸)で作られた「沖縄平和祈念像」を中心として、西村計雄の連作「戦争と平和」などが展示されていまして、美術館の側面も持っています。また、変わったところでは平和祈念像の下に世界の霊石を展示しているコーナーがあり、そこには「ベルリンの壁」も納められていました。その他付属施設として美術館もあります。
平和祈念像
霊石・ベルリンの壁
 展示作品の感想としましては、西村計雄の作品は、氏独特の小川が流れるような構図で描かれていまして、清々しさを感じました。その他の平和祈念堂内部にある作品では、安次富長昭の「真南風(まふえ)」が波と太陽をイメージさせる抽象画で印象的でした。

 美術館にある作品では、沖縄に関係する題材の絵画が多く収蔵されていました。中でも好みの作品は、安次嶺金正「台風眼」は、雲の掛かった青空と大地の緑、それらに対して雨が降っているように縦の線が描かれてスケール感の大きな作品になっていました。また、工藤和男の「沖縄の漁場」は、笠をかぶり白シャツ姿で真っ黒に日焼けした漁師が船上で綱を引いて働いていたところを描いた作品ですが、光の使い方やマチエールから勇ましさを感じる絵でした。沖縄とは関係のない一般的な作品では、新井康須雄の青、黄、赤をベースとした壁画的に描かれた「時計とケース」が時間の重みを感じさせる絵でした。各絵は、沖縄協会のHPから見ることが出来ます。

沖縄平和祈念堂(沖縄協会HP)

●沖縄県平和祈念資料館、摩文仁の丘

 平和祈念堂の後、祈念資料館へ。ここは前回訪問時には見学コースに組まれていませんでしたので、初めてでした。展示第2室の「鉄の暴風」では、ビデオ並びに模型を使って沖縄戦を時系列的に説明するコーナーがあり、勉強になりました。また、展示第4室の「証言」では、証言が書かれた本を読める机が多数置いてあったり、ビデオで語り部を見るコーナーがあったりで展示に工夫がされていました。思わず足を止めて語り部の話を2つ程見てしまいました。この祈念資料館は、沖縄の皇民化運動や戦争という悲惨な内容を扱っていますが、全体の展示方法が工夫されて分かりやすくなっていまして訪問して良かったと思いました。

沖縄県平和祈念資料館

 最後に摩文仁の丘を訪問しました。各県の碑がありましたが、それには興味を持てませんでした。私個人としては、石灰質の岩にソテツやガジュマルの木などがある沖縄風の庭園が綺麗で良かったのでした。

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January 31, 2005

福岡・福岡市美術館 常設展

 前記事の藤浩志さんの企画展以外の常設展にあまり期待はしていなかったのですが、ここの美術館は守備範囲が広く、かつ展示作品数が多いことに非常に驚きました。その範囲は、古くは仏像・茶道具・古美術(工芸)品から日本画・近代絵画、そして現代美術までバランスよく取り揃えられていました。(具体的な展示内容については、美術館のHP参照お願い致します。)イメージ的には、「上野の東京国立博物館+竹橋の東京国立近代美術館」の守備範囲で、展示数がちょうど見やすい数量になっている感じでした。個々の作品の感想については近現代美術に絞って記します。かぼちゃ

-近現代美術室-
 まず展示室入口付近に現代美術作品が展示されていました。関取とカエル、角松などの日本的素材を奇妙に取り合わせてインスタレーションした中ハシ克シゲ「NIPPON CHA CHA CHA」や、金沢21世紀美術館にある「世界の起源」で深い感銘を受けたアニッシュ・カブーアの「虚ろなる母」というイヴ・クラインのような深い青色のお碗型の作品、アンゼルム・キーファーの布で作られた戦闘機「メランコリア」、ディヴィッド・ナシュの「内側・外側」は太い幹と枝からなる木をくり抜いた内側とくり抜かれた外側の2つに分けて展示した「もの派」的な作品、白い大理石に無数のとげが突き刺さって形たちを構成しているジュゼッペ・ペノーネの「大理石の皮膚 -アカシアのとげ」などがありました。

 次に、絵画作品を中心とした近代から現代にかけての美術の流れが展示されていました。まず初期の絵画では、明治期に日本に油絵を教えに来ていたラファエル・コランの「海辺にて」という淡い色彩で描かれた大きな作品や、単純化されたフォルムかつ極色彩でフォーヴに描かれた里見勝蔵の「女(裸婦)」などが印象に残りました。また、洋館、瓦屋根の家、花、木の株、新聞などの日本的なものを積み重ねて構成した桂ゆきの「積んだり」は、ごちゃついた感じがよく表現された面白いシュルレアリズム作品でした。その他近代絵画は、国内外の作家を問わず同時代で並べて展示されていましたので、比較しながら鑑賞することが出来ました。現代の作品では、草間彌生のメタリックブルーの無数の突起が付着している「自転車と三輪車」、「海底」があり、色の鮮やかさと突起の嫌悪感を感じさせる作品となっていました。戸谷成雄「28の死 Ⅰ」「森 Ⅷ」は木で製作された「もの派」的なインスタレーションで、素材に合わせて個性的に彫刻された同じ大きさのブロックを多数並べたもので、死や森をイメージする静寂を感じさせる作品でした。 

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January 26, 2005

福岡・違和感を飛び超える術!-藤浩志展

福岡市美 「かえっこバザール」(越後妻有トリエンナーレ2003や金沢21世紀美術館など)で有名な藤浩志さんの個展が「第6回21世紀の作家-福岡」として福岡市美術館で開催されていますので、行ってきました。企画展なので特別料金と思っていましたが、案内の方に訊ねると常設展の一部として展示されていました。お陰さまで観覧料が格安の大人200円でした。(他の常設展の感想は、次回の記事にします。)

 さて、本題ですが2F常設展の1室の入り口付近に様々なガラクタが積まれていまして、「かえっこショップ」を連想し藤浩志さんの展示室と直ぐに分かってしまいました。展示室の中では、まず海外青年協力隊でパプアニューギニアに派遣されていた頃の作品「P.N.G」(やせ犬とプロペラ戦闘機の木製の彫刻、その制作ノート)が展示されていました。この作品からは、素朴さが感じられました。

 次に、薄暗い展示室の中に入ると沢山の「飛行機状のツール(=cross?)」が並べられていました。このcross?は、個々が同一の素材(ガラクタ)から成り、全体は様々な素材から出来ていました。具体的には、「台湾ビール瓶で構成されたcross?」や「乾電池で構成されたcross?」や「さかな型のしょうゆ容器で構成されたcross?」などが展示され、ガラクタでも沢山集めると造形できるのだなあと感心しました。

 この薄暗い会場には、cross?の他にマイクが置かれていまして、鑑賞ガイドに書かれている映像作品リストのキーワードを伝えると、音声認識装置が反応し、その映像がスクリーンに上演されるようになっていました。鑑賞ガイドでは、cross?とこの映像が無関係なもののため、その違和感を鑑賞者が飛び超え、新しいイメージの発生を捉えるように考えられているそうです。しかし私が見た映像が「Kamome Road」という空の風景でしたので、違和感よりも空と飛行機(cross?)がマッチしていると感じました。

 他には、2Fロビーの窓側(テラス)に「ヤセ犬の散歩」が、1F中庭に「お米のカエル、墓石となる」が展示されていました。
大濠公園夕景
 全体の感想は、cross?という統一したイメージを様々な素材で、ヤセ犬、カエルは様々な形態で反復しているところがちょっとした違和感なのかなと思いました。

福岡市美術館 ~4/3まで

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January 24, 2005

福岡・造形集団海洋堂の軌跡 -欲望と消費の美学-

等身大フィギュア北海道物産展海の生物ペンギン海洋堂の軌跡
 ディティールにこだわった食玩で有名な海洋堂の展覧会へ行ってきました。

 会場が2箇所に分かれていまして、B2Fのイムズプラザという入場無料のちょっとした広場において「小さな模型の大きな世界」という副題で、様々な食玩をカテゴリー毎にまとめて展示していました。ここでのカテゴリーは、動物シリーズ、戦車シリーズなどの有名なものから、変り種としては、アルフォンス・ミュシャが描いた人物をフィギュアにしたものや、北海道物産展、タイムスリップ・グリコのおまけのレトロをテーマにしたものなど、「こんな題材まで食玩になるのか~」と思ったほど多様なものが展示されていました。その他、50cm高さくらいのフィギュア、等身大フィギュアなどのアイコンも展示され、通りすがりの買い物客など大勢の人達から関心を集めていました。

 エレベータで8Fま上がると、三菱地所アルティアムという会場で「欲望と消費の美学」という副題で展示されていました。(こちらは有料)

 「食玩コーナー(トンネル)」では、食玩を1個ごとアクリルケースに収納し、狭い通路の両壁にびっしりと並べた展示となっていました。特に印象に残った食玩が「ジンベイザメ」で、皮膚の細かい斑点も描かれていて感心しました。

 次に、「海洋堂の歴史/造形物展示コーナー」があり、創業当時(模型店)の頃の完成品プラモデルから、ガレージキット製作に至るまでを代表的な模型、フィギュアと海洋堂の創業者親子の写真などで展示されていました。造形物展示コーナーは、仮面ライダーやゴジラなどの有名キャラクターから映画の主人公(富田靖子の「さびしんぼう」「アイコ16歳」・・・彼女の出身地の福岡だからサービス?詳細は分かりません)まで多様なジャンルのフィギュアなどが展示されていました。

 次にビデオルームがあり、映像は「ワンダーフェスティバル」という海洋堂が主催しているガレージキットの祭典が流れていました。薄暗い部屋の中には、映写スクリーン前に作りかけのキットの部品が雑然と積まれ、そこにスポットライトが当てられていました。これと映像を眺めているとプラモデルつくりの楽しさを感じさせるような工夫がされていました。

 展示の最後に、「海洋堂の原型師紹介コーナー」があり、原型師さん毎に得意分野があるようで、動物ものなら○○さん、メカものなら○○さん、人物なら○○さんというような形でその方が作られた食玩などが紹介されていました。また、話題になった村上隆のキャラクター食玩などもこのコーナーで展示されていました。

 特に印象的だったのは、七福神の同一食玩を、「現代風カラフル」「根付け風の古色」の2種類に色づけして並べて展示していました。それを見て海洋堂の食玩は、現代の根付けなのだなあと気付きました。また、海洋堂の「創るものは夜空にきらめく星の数ほど無限にある」という言葉通りに世にある様々なものを模型化していることに感心しました。

 この展示ですっかり海洋堂の世界に魅せられたため、出入口にあるグッズショップに立ち寄り食玩を3個ほど購入してしまいました。

-造形集団海洋堂の軌跡-
 福岡・イムズでは会期終了(~1/23まで)
 この後、水戸芸術館現代美術センターで4/6~6/6で開催されるようです。

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January 19, 2005

愛媛・ところミュージアム大三島

 大三島美術館の次に現代彫刻をコレクションしている「ところミュージアム」へ立ち寄りました。この美術館は、下の写真の様にみかん畑があるような傾斜面に建てられていまして、屋外に作られた階段を下りながら展示室に入り、作品を見るようになっていました。また、展示室から階段に出るドアが常時開けられていたために、作品鑑賞中に風が吹き込んできて、とても寒かったために今回は早々と退散してしまいました。春先や夏場ならば、この風も快適になって居心地が良くかったのではと思います。
ところM 

 ここで興味を持った作品は、キオスクにおいてある新聞、飴・ガムなどの商品やお店の建物などすべて建築古材を用いて彫刻した林範親の「K・I・O・S・K 3・4番ホーム」でした。この作品からは、木で構成された素朴な造りと温もりが感じられました。また、ノエ・カッツの作品は独特な形をした人物像で面白いなと思って鑑賞していましたが、メキシコの作家なのでリベラの影響を受けているのかなと思いました。

 全体の感想は、1展示室1作家という展示方法と、屋内で鑑賞するにも関わらず外の空気(風)が感じられる建物となっていまして小さいながらも個性的な美術館と思いました。
キッシングドア
「キッシング・ドア」(写真のドアが閉じるとキスした状態になる)

ところミュージアム大三島

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January 18, 2005

愛媛・大三島美術館

 本州・尾道と四国・今治を結ぶ「しまなみ海道(西瀬戸自動車道)」の途中にある大三島へ行ってきました。大三島美術館は、大山祗神社の近くにある日本画をコレクションした小さな美術館です。

 3/29まで新春展として、小展示室では、冬景色をテーマとした作品が集められていました。

 大展示室では、特別公開されている加山又造の「火の島」が、雄大な桜島と雲、噴煙が夕焼けで真っ赤に染まりドラマッチックに描かれていて最も印象に残りました。他には、黒潮の中を天からの光によって6頭のイルカと無数の魚の群れが輝き躍動的に描かれていた西野陽一の「黒潮」と、ヨーロッパ的なモダンな雰囲気醸しだしている 宮いつきの「ゲーム」、「午睡」が好みの作品でした。

 その他、田淵俊夫記念展示室がありまして、第29回春の院展出品作「やまはぜの頃」などが展示されていました。

 全体の感想としては、個人的に日本画にはあまり興味がなかったのですが、1990年以降の比較的新しい作品が多く、意外と楽しめました。

大三島美術館

大三島美

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January 17, 2005

静岡・伝統と革新展 -コローからマティス、ピカソまで-

 伊豆・下田にある上原近代美術館の「伝統と革新展」に行ってきました。小さな美術館ですが副題通り、印象派前後の西洋近代絵画が多く展示されていました。展示構成は3部に分かれていまして、下記に印象に残った絵などを中心に書いていきます。

「1.伝統からの脱却-印象派の誕生-」
 印象派誕生前のバルビゾン派からコローの「サン・カテリナ・レ・ザラーの洗濯場」、そして印象派としてルノアールの「アルジャントゥイユの橋」、シスレーの「秋風景」などが展示していました。特に「アルジャントゥイユの橋」は、川に鉄橋が架かっていて、そこに汽車が走っている風景を描いたもので、一般的にはモネの同作品が有名ですが、ここにあるルノアールのものは余り見たことがないので興味を持ちました。

「2.表現の革新」
 後期印象派の作家の作品が中心で、マティスの写実的な「読書する少女」と、単純化されて描かれた「鏡の前に立つ白いガウンを着た裸婦」、水辺の薄い青色が綺麗なマルケの「曳き船」など展示されていました。

「3.伝統への回帰」
 写実的な表現が主体の作品が中心に展示されていました。ここでは、ルノワール「果物の静物」、「横になった婦人」や、ドランの「裸婦」、ピカソが16歳のときに描いた「科学と博愛」などが展示されています。

 企画展のまとめの感想としては、色彩が綺麗な作品を数多く鑑賞できて良かったでした。

 企画展以外では、日本の近代絵画も展示されていまして、安井曽太郎の画面全体が赤っぽい色調で描かれた「桃」と、単純化さた緑色で構成された「緑の風景(城山)」、雪が薄っすらと積もった林の奥に微かに煙突から煙が出ている家の風景を、少しザラついたマチエールで描かれた岡鹿之助の「林」、やわらかくて、やさしい感じで描かれた堂本印象の「煌く椿(さらめくつばき)」などが好みの作品でした。

上原近代美術館 -3/14まで

上原近代美

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January 10, 2005

今年着目の展覧会など

 今年着目の展覧会などを挙げてみたいと思います。各新聞社のHP等参考にしたのですが、意外と情報が少なく、6月までの展覧会が中心となってしまいました。

 まずは、ビエンナーレ・トリエンナーレ関係では、
第51回ベニス・ビエンナーレ (6/12-11/6)
 テーマ「The Experience of Art(ジャルディーニ公園), Always a Little Further(アルセナーレ)」
 果たして全体的にどんな展示になるのか、日本はどんなパビリオンになるのか興味があります。

*2/7追記 すでに昨年の10月に国際交流基金のHPに日本館の展覧会タイトル・作家・コミッショナーの発表がありました。
 展覧会タイトル:Mother's - Traces of future
 アーティスト:石内 都(写真家)
 コミッショナー:笠原美智子(東京都現代美術館学芸員)
 前回、前々回と2名の作家の方の展示でしたが、今年はおひとりの方の展示になるようです。

横浜トリエンナーレ2005 (9月中旬-12月中旬)
 ディレクターの交替などいろいろと問題が多いようですが、楽しみにしています。

京都ビエンナーレ2005 (2003年は秋口開催)
 2003年に京都芸術センターを中心として開かれた京都ビエンナーレですが、現時点で今年開催があるのかどうかWeb等で確認できていません。前回の印象が、上記2つのような国際展とは異なり小規模ながらも個性的な良作が多くて楽しめましたので、今年も期待しています。

 展覧会関係では、
・ ジョルジュ・ド・ラ・トゥール展 国立西洋美術館(3/8-5/29)
 ろうそくのわずかな光で浮かんだ世界を描いているラ・トゥールの展覧会。主催元のひとつの読売新聞社の記事によるとこの画家の真作は、40点ほどしかなく、その内の1点が国立西洋美術館に昨年コレクションされたのを機会として開催されるとのことだそうです。どれだけの作品数が集まるのか、またどうのように作品解説されるのか楽しみにしています。

・生誕100年本郷新彫刻展 札幌彫刻美術館・札幌芸術の森美術館 (5/21-6/19)
 「わだつみの像」などでおなじみの本郷新の展覧会。2会場に分散しているようですが、彫刻美術館が手狭なためでしょうか。どのような規模の回顧展になるのか分かりませんが、私は幼い頃から本郷作品に接していたため、楽しみにしています。

わだつみの像@立命

・イサム・ノグチ展 札幌芸術の森美術館(7/2-8/29)
 昨秋にモエレ山が完成したので、今年に噴水が出来ればイサム・ノグチ設計のモエレ沼公園の全施設がオープンとなります。初夏の気候の良い頃、モエレ沼公園とセットで鑑賞したいと考えています。

その他では、ベニス・ビエンナーレとともに時間があればJAL機内誌SKYWARD(2004/12月号)に掲載されていましたスイス・バーゼルにある動く彫刻(機械)の「ティンゲリー美術館」にも行って見たい思います。

富士山

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December 08, 2004

大阪・建築のフィギュア展 -プライベート・プロダクツ

 INAXギャラリー大阪で開かれている建築のフィギュア展を訪問しました。まず入口では、長内デザイン室が収集した世界各地の建築物に関連したスノードーム・コレクションが展示してありました。いわゆるお土産屋さんに売っているようなもので、例えばラスベガスならば、スフインクス・自由の女神・WTC・エッフェル塔が渾然一体となったホテルが、同様にシアトルでは、タワー型のスペース・ニードルなどその地を代表する建築物のものです。

 展覧会の最初のコーナーには、「紙だから生まれる楽しさ」というタイトルで坂啓典さんが制作したペーパークラフトの世界遺産シリーズが展示されていました。複雑な形の「モン・サン・ミッシェル」、すらりと美しい「エッフェル塔」、曲面が印象的な「タージマハール」や「ブルーモスク」などがありました。ペーパークラフトは、展開図さえあれば、紙と糊で誰にでも容易に製作できることが特徴だと思います。私事ですが、海の日のイベントでもらってきた灯台のペーパークラフトを未だ製作していないことを思い出しました。

 2番目に「心の風景を作る」というタイトルで盛口正昭さんが1/300スケールで制作したA4サイズの大きさの世界各地の景観模型が展示されていました。簡単に示すと、建築物のみならず、その周囲約9km x 6kmの広範囲の大地に刻まれた跡などを模型としてまとめたものです。展示作品は、何千体もの高さ約5mmの細かい人形がスタンドでサッカー観戦している「2002FIFAワールドカップ 韓国イタリア戦(韓国)」や、高所(空)に鳥らしきものが飛んでいる「高地の住居と生活(パフアニューギニア)」、海と海岸の岩の上に作られた寺院が美しい景観となっている「バリ島タナロート寺院(インドネシア)」など、いずれもスケールが大きく大地を切り取った模型でした。

 3番目に「フォトモとは」というタイトルで糸崎公朗さんが考案した2次元のフォトグラフを3次元の立体的な模型に再構築したフォトモが展示されていました。こちらも簡単に示すと、写真を組合わせて飛び出す絵本のような立体物を構成しているイメージです。ここでは、例えば東西南北などの直交4方向の写真を展開してタワー模型を制作した「通天閣」や、大勢の人が商店街の中を歩いていて、その賑わいも模型となってフリーズしている「江古田ゆうゆうロード」、プラレールという素材の上にフォトモで制作した電車が載っている組合せが面白い「さようなら長野電鉄木島線」、お店のショーケースをお客側とお店側の双方の視点で構成した「手作りプリンのお店」などが印象的でした。

 最後に「近代西洋館の立体素描 -無彩色ミニチュアの世界-」というタイトルで藤沢みのるさんが制作された白色の焼き物で作られた建物が展示されていました。彩色がない分、建築物のフォルムがはっきり分かるようになっていましてタイトル通りの立体素描といった感じでした。作品の方は、近代西洋館ということで「大阪市中央公会堂」、「国会議事堂」、「函館ハリストス正教会」など多数展示してありました。また、模型制作のための実際の建物を撮影した写真や、方眼紙に書かれた図面などの資料も同時に展示していました。

 その他、写真ではペーター・フリッツのスペシャルモデルが、ビデオではThe Architecture Packが展示されていました。

 全体をまとめた感想は、模型の展示として制作者毎のユニークな手法を楽しめたことや、建築の展示としても多数の模型を様々な角度から眺めることができた楽しい展覧会でした。

INAX大阪ギャラリー ~2/18まで

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December 03, 2004

埼玉・フルクサス Art into Life展

 うらわ美術館で開催しているフルクサス展に行って来ました。行って驚いたのは本来有料展示なのですが、本日入館無料と受付に貼り出されていました。J1浦和レッズの優勝記念のためかなと思いましたが、係りの方に聞いてみると開館5周年を記念して毎週土曜日に限り入館無料としているそうです。

 さて、本題のフルクサスですが、オノ・ヨーコさんがメンバーとして活動していたくらいの知識しかなく、同時代のヨーゼフ・ボイスのあまたの作品とともにフルクサスも何が良いのか理解できていませんでした。そのため、今回のフルクサス展で作品を見るヒントが何か得られれば良いかなと思っていました。

 展示の方は、「日本」「欧米の動き」「映像」「音」「fluxus reflux」「オノ・ヨーコ」「マルチプル」「卓球」「ピアノ」「資料」という構成になっていまして、どのコーナーからでも見られるようになっていました。「日本」、「欧米の動き」のコーナーでは、フルクサスの新聞、本、演奏会案内パンフレットなどの印刷物が主体に展示されていました。中でもマルセル・デュシャンの「トランクの中の箱」のように様々なアイテムが詰まった、ジョージ・マチューナス編の「Fluxus1」のボックスや、ゼミナール”ユーモアについて”を記録したカセットテープ6本、8mmフィルム、ウィリアムズ「オペラ」資料、版画一点を靉嘔(ay-o)のサインが入ったケースに収蔵した「志賀-KIT」に興味を持ちました。「映像」のコーナーでは、じっくり見た訳ではありませんが、音・楽器を使った前衛的なパフォーマンスに関するビデオが流れていました。「音」のコーナーでは、ジョン・ケージの「4'33"」のコンセプトが書かれた紙などの展示物の他に実際に音楽も流れていました。ここまでの印象をまとめますと、フルクサスは、前衛音楽と美術が一体になり相互作用した活動という理解でした。

 その他フルクサスの1958-78年までの世界各地での活動を図示した「FLUXUS event map」や、ジョージ・マチューナスが作成したフルクサス芸術の歴史的展開を示すダイアグラム「Flxus Its Historical Development and Relationship to Avangarde Movement」から、世界の大勢の音楽家・美術家に支持された活動であったこと。安い素材を使って作品を制作し、それをギフトショップ、さらに当時としては画期的な通販で販売するというフルックスショップが、アートをより身近に生活の中へ取り込む活動がうかがえ、この点は興味を持ちました。

 ただし、私は残念なことにフルクサスが活動した同時代に各イベントに接したことがないため、その断片を現在見ても余り共感できませんでした。しかし、この展覧会を企画されたキュレーターさんはその辺りを心得ていたようで、「オノ・ヨーコ」のコーナーでは「メンド・ピース」「釘を打つための絵」が、「卓球」のコーナーでは、様々な形のラケットで卓球を楽しめるように体験型の展示があることと、日によってはコンサートなどのパフォーマンスもあるように工夫されていました。実際に私が訪問した日も受付で一枚の風船を渡され、それを一息で膨らました後にサインし後日オークションを行うという塩見允枝子の「Air Event」をちょっとですがお手伝いしてきました。

うらわ美術館 ~2/20まで

うらわ美術館入口

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December 01, 2004

神奈川・テレビ発掘 まる裸の太郎展

 川崎市岡本太郎美術館の開館5周年(5祝年)展に行って来ました。今夏松山のミウラートヴィレッジで開催された岡本太郎展では、美術館本館で作品の展示が、三浦工業の体育館でビデオ上映の2部構成となっていまして、作品と同時にビデオを通して語られる岡本太郎氏の個性の強さを感じました。今回の展覧会も絵画・彫刻などの代表作が常設展部分に展示され、特別展部分に副題の「テレビ発掘」の通り、岡本太郎氏が出演したビデオが紹介されるという2部構成になっていました。

 常設展部分の絵画にはシュールレアリズム調の「空間」「傷ましき腕」や、ナイフを背後に持ち暗闇に立ち向かう少女が印象的な「夜」、顔をテーマに描かれた「二つの顔」「エクセホモ」、工業化社会と人がテーマに描かれた「森の掟」、銑鋼の光、歯車を取り巻く人が印象的な「重工業」、どこかユーモラスに感じるキュビズムの美女と猫の野獣が描かれた「美女と野獣」、手のひらが葉でできている人(樹人)が花の中に包まれて描かれている「樹人」、1964年東京オリンピック課題作品で沢山の顔と黒い川のようなマラソンコースのうねりが印象的な「マラソン」などが展示されていました。展示の最後には幅20mはあろうかというかなり大きな作品で原爆の炸裂の瞬間を描いた「明日の神話」も展示されていました。この作品は、原爆が投下されたことによって中心に白骨となり火がついた人間像が、その周囲には赤い光の稲妻が走り、右上の空(雲)には大きな目が描かれて大地をにらみつけ、右端には海に浮かぶ帆船的な人間像が揺らされ、左端の平穏に暮らす人々には今にも原爆が襲い掛かるように描かれたダイナミックなものでした。

 特別展のビデオでは、岡本太郎氏が出演した紀行、対談、プライベート映像、コマーシャル・バラエティ、コメント集などの分類で上演していました。また、それらの展示室には「坐ることを拒否する椅子」などの岡本氏の様々な椅子作品が置かれて楽しめるようになっていました。今回は時間がなかったためビデオをゆっくりと鑑賞できませんでしたが、ざっと見た中で一番人気のあったコーナーがコマーシャル・バラエティの部門でした。コマーシャルでは有名な「芸術は爆発だー!」のセリフのマクセルのものや、バラエティでは、「鶴太郎のテレもんじゃ」の岡本さんが子供の絵をみてコメントするコーナーでちょっとした老人力を発揮されていたのが印象的でした。

その他、美術館のある生田緑地の紅葉は、ちょうど見頃でした。

川崎市岡本太郎美術館 ~1/16まで

美術館入口

モニュメント

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November 30, 2004

大阪・ マルセル・デュシャンと20世紀美術

 大阪・中之島に新装開館した国立国際美術館を訪問しました。マルセル・デュシャンというとフィラデルフィア美術館にあるコレクションが有名ですが、以前訪問したときはこの作家や現代美術に関する知識を全く持ち合わせていなかったので、殆ど作品が理解できず唯見ただけに終わってしまいました。現在は「レディ・メイド」の概念などのこの作家に関して多少の知識を持ちましたので、この展覧会では「彼女の独身者たちによって裸にされた花嫁さえも(通称:大ガラス)」、「与えられたとせよ 1.落ちる水 2.照明用ガス (遺作)」について、理解を深める展示を期待していました。しかし、音声ガイドも借りなかったことや、全体的に展示の解説が少なかったためにあまり理解が進みませんでした。

 さて展覧会の内容は、初期の作品「階段を下りる裸体No.2」から始まり、「大ガラス」、「レディ・メイド」、「トランクの中の箱(移動美術館)」、「遺作」、「デュシャン以降の芸術家たち」という構成でした。特に期待していた「大ガラス」と「遺作」の展示について、書いていきます。

「大ガラス(1980年東京バージョン)」

 ガラス下部が機械部品で、ガラス上部が機械部品ともよく分からないもので構成されているため「彼女の独身者たちによって裸にされた花嫁さえも」という題名からは、この作品を理解でませんでした。今回は、「独身者」、「花嫁」の部分毎の機械部品の素描が展示されていまして、それらについては理解できました。しかし、この作品全体の解釈については、展示の解説文によると複数あるそうですが、それらについては例示されていなかったため何故「濾過器」や「チョコレート磨砕器」などの部品があるのか理解できませんでした。そこで暫くの間立ち止まり、この作品の解釈を試みていましたところ、通りかかった方が上手に解説していましたので、それを参考までに記したいと思います。

 ガラス下部の機械部品「水車」のところに仮想の川が流れていて、それらを水車が汲み上げ「独身者」達に流れ込んで花嫁に対しての様々な妄想が湧き上がり、「濾過器」を通って濃縮され、さらに「チョコレート磨砕器」によって、それらの妄想などが混ぜこぜにされ、「検眼医」によってガラス上方に妄想が昇華し、裸にされた「花嫁」がガラス上部に存在しているそうです。

「遺作」

 作品そのものはフィラデルフィア美術館に常設展示されているため、今回は立体映像で見ることが出来るようになっていました。レディ・メイドで有名なデュシャンでオリジナル作品と比較するのもおかしな話ですが、まず扉にある「のぞき穴」が容易に発見できることや、静止画なのでオリジナルには感じられる滝の水の動き(光の動き)が感じられませんでした。

 ここでは、最近の研究によって分かってきたこの作品の人体像を構成する部材となった1950年代制作の「雌のイチジク葉」、「オブジェ・ダール」、「貞節の楔」や版画集「恋人たち」の図像が展示されていましたが、これらが具体的にどの部分の「遺作」と結びついているのか解説も少なく分かりませんでした。この作品の解釈については、定説もないそうなので書かれていませんでしたが、個人的な印象では大ガラスよりもこちらの方が「彼女の独身者たちによって裸にされた花嫁さえも」という題名に合っていると思いました。

国立国際美術館 ~12/19まで

国立国際美術館

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November 26, 2004

大阪・『街の使い方』展 -小さな家の設計から大きな都市の観察まで-

 アトリエ・ワン(英語表記するとAtelier Bow-Wow、要するにワンは犬の鳴き声です。)の副題の通りの建築に関する展覧会です。この展覧会を見に行こうと思ったきっかけが、2003年のベネチア・ビエンナーレで見た「ペット・アーキテクチャ・ガイドブック・ミュージアム」が体験型の楽しい作品だったためです。この作品は、路地に見立てた蚊帳で作られた迷路の中に入り、そこをさまよいながら蚊帳に写真・解説文が印刷されたペット・アーキテクチャ(東京の狭い場所に建てられたかわいい建築物)を擬似発見する楽しみのあるものでした。今回もこの迷路のような作品を期待していましたが、残念ながらありませんでした。ただし、今回は別の遊び心のある作品がありました。6階にアトリエ・ワン設計の建築物「ハウス・オブ・アサマ」が、実物大の蚊帳張りで展示され、この中に入るとビデオが上映されていました。このビデオは、アトリエ・ワンがどのような視点で建築物を観察しているかというプロセスが分かるようになっていまして路上観察の参考になりました。

KPOキリンプラザ大阪 ~12/5まで

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大阪・佐伯祐三展 熱情の巴里

 大阪市立近代美術館(仮称)心斎橋展示室(旧出光美術館)で開催されている佐伯祐三展に行ってきました。(引き続き関西文化の日の訪問記です。)ここの佐伯祐三コレクションは、実業家山本発次郎氏が大阪市に寄贈した40点を中核とし、その後も収集を続けた結果50点以上となり日本最大だそうです。このため、1998年に開催された「生誕100周年 佐伯祐三展」で展示された主要な作品を約6年振りにまとめて見ることが出来ました。

 特に個々の作品の感想は書きませんが、日本人からみたパリなどのヨーロッパの街角のイメージ(曇空、歴史を感じさせるちょっと重たい空気感)が、壁の色味、広告およびそこに書かれた文字などで表現されています。

大阪市立近代美術館(仮称)心斎橋展示室 ~12/12まで

佐伯祐三展(毎日新聞社)

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京都・熟れゆくイメージ 名画ができるまで2

 こちらも関西文化の日で観覧料が無料のため、約10年ぶりくらいに堂本印象美術館を訪問しました。ちなみに前回訪問時は、私立から府立美術館に替わった頃でした。

 この展覧会では、写生・小下絵(小下図)・大下絵(草稿)と制作の流れに沿って順に展示されていまして、熟れゆくイメージのプロセスを知ることが出来るようになっています。この展覧会のプロセスで見る限り、堂本画伯は初期の小下絵などの段階で決めた構図から最終稿までマティスのような大きな変化を伴うことは、殆どありませんでした。また、展示されている作品も古典的な日本画から滞欧作品と思われるヨーロッパが舞台となっているもの、その後の抽象絵画まで様々なものがあり楽しめました。

 次に、印象に残った作品を紹介します。半裸の女性が三面鏡台の前で髪を整えてもらっている姿を描いた「輝けるもの」は、大胆な構図で驚かされると同時に淡い色彩で綺麗な絵でした。「シャトルの古道具屋」「窓(大下絵)」は、フランスの街角にあるアンティークショップの入口を描いた洒落た作品で、大下絵から最終稿までに人物(子を抱いた母子像)が描かれている場所が入口(ドア)付近から窓に変更されて、全体の印象がすっきりした感じになりました。抽象画の「無間知覚」では、中心部から何かが生まれてくるような点や線の集合で、その誕生を祝福し右上から左に巻いて流星のような線がある秘めた作品でした。桜の木の下に平安朝の女性(媛)が座っている「木華開耶媛」では、最終稿の女性は平面的ですが、大下絵の方は黒線とピンクの彩色で表現しているため女性の表情が艶っぽくこちらの方が気に入りました。その他、多数の菩薩像を描いた「観世音」が、うすピンク色の淡い色彩が綺麗で、かつ作家の宗教に対する真摯な眼差しが感じられた良い作品でした。

京都府立堂本印象美術館 ~11/28まで

堂本印象美術館.JPG

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November 25, 2004

京都・痕跡 -戦後美術における身体と思考 展

 京都国立近代美術館で開催されている痕跡展へ行ってきました。副題にあります通り、身体や思考のプロセスを8テーマに分類し展示されていました。また、この展覧会の大雑把な作家構成は、具体美術協会のメンバーの作品を中心に、イヴ・クライン、ロバート・ラウシェンバーグなどの外国の作家が肉付けされていました。次に各テーマ毎の感想を書いていきます。

「表面」・・・1940年代以降の「切る、突く、焼く」

 切るでは、カンバス上に絵の具をぐしゃぐしゃに流し込んだポーリングと呼ばれる手法で背景を作成し、その後人型をカットして制作されたジャクソン・ポロックの「カット・アウト」が、焼くでは、イヴ・クラインが、1分間ガスバーナーでカンバスに火炎放射してその焼き跡を絵画とした「火の絵画」が、突くでは、李禹煥の白い平面に多数の突きで制作された「突きより」と板に多数のノミ跡のある「刻みより」が紹介されていました。個人的にはイヴ・クラインの青色以外で制作された作品を観たことがありませんでしたので興味深かったことと、李禹煥の「刻みより」は素朴な板に作られた刻み跡が力強い作品でした。

「行為」・・・アクション・ペインティング(1950年代)からハプニング(1960年代)へ

 イヴ・クラインの「人体測定(AM157)」は、青色塗料を全身につけた女性モデルがモノクロームのカンバス上に人体の痕跡を多数つけた作品で、そのモデルの人体跡が色気のある生々しい作品でした。具体からは、絵の具を足で豪快に塗りこむフット・ペインティングの白髪一雄の「天暴星両頭図」が紹介されていました。また、ジョルジュ・マチウの「豊臣秀吉」に対して制作された篠原有司男の「ボクシング・ペインティング」が白布に墨をつけたパンチを打ち付けただけなのですが、そのパンチ跡から墨が滲みながら広がったり、垂れて線になったりして、スピードを感じる作品でした。また具体からは、玩具自動車にフエルトペンを載せてリモコンで操作して描いているため必ずしも自分の想い通りに制作されずハプニングの要素を取り込んだ金山明の「Mar.7」も紹介されていました。

「身体」・・・ボディ・プリント(体外:指、手、皮膚)、(体内:血、尿、精液)

 ロバート・ラウシェンバーグ&スーザン・ウェイルの「無題(スー)」が、建築図面に使われているブループリント上にステッキを持ったスーザンを転写したもので背景の青色と人物像の白色のコントラストと人物のフォルムが美しい作品でした。日本では同様の手法で制作した中西夏之の「男子総カタログ'63」も展示されていました。白い窓越しに写る赤子を抱いた母子の淡い影が美しい高松次郎の「影(母子)」や、X線で作家の全身像を撮影したロバート・ラウシェンバーグの「ブースター」、裸になった腹部に本を置いて5時間日焼けしてその痕跡を制作し、その日焼け前後の写真を示したデニス・オッペンハイムの「日焼けの第2段階のための読書姿勢」が「体外」の作品では印象に残りました。

 「体内」の作品では、壁画的な絵画のアンディ・ウオホールの「ピス ペインティング(小便絵画)」「カム ペインティング(精液絵画)」もありましたが、特に身体を使って政治的なメッセージを伝えたアナ・メンディエッタとマリーナ・アブラモヴィッチの作品が印象に残りました。アナ・メンディエッタの「無題(ボディートラックス)」は、ピンク色のカンバス上に両手をつき血でラインを描写しているプロセスを組写真で示したもので、女性に対する暴行を連想させるセンセーショナルな作品でした。同様に、マリーナ・アブラモヴィッチの「トーマス・リップス」は、現在では分断したユーゴスラビアの紋章の星型を腹部に刻みつけ、その傷口から血が流れ出ているビデオ作品で作家本人の傷の痛みだけではなく、星型から血が流れることでユーゴスラビア(人)の痛みも表現されていると感じました。

「物質」・・・痕跡が刻まれる場

 ここでは、九州派と呼ばれる尾花成春の「自画像」や桜井孝身の「リンチ」などのアスファルト絵画が主に紹介されていました。

「破壊」・・・本来破壊により作品としての機能を失うが、いかに作品として昇華させたかがポイント

 具体の向井修二の「記号化された賞状」では、表彰状に記号の悪戯書きみたいなものがある作品で題名の通り皮肉的なものでした。高松次郎の「ガラスの単体」では、ガラスのひび割れを作品としていました。また、具体からは、紙(型)破りの村上三郎の「入口」が紹介されていました。

「転写」・・・他の表面に転写 - フロッタージュ

 ここでは、車で円形にぐるぐる廻りそのタイヤ跡や夜間にライトをつけた光跡を写真に撮ったマリーナ・アブラモヴィッチ&ウーライの「リレーション・イン・ムーヴメント」や、インクの入ってないボールペンで雑誌をこすり転写(フロッタージュ)したロバート・ラウシェンバーグの「コース」や、白い長い布に自動車のタイヤの跡をつけたロバート・ラウシェンバーグ&ジョン・ケージの「自動車タイヤプリント」が紹介されていました。「破壊」、「転写」とも分かりやすいプロセスです。

「思考」・・・コンセプチュアル・アート

 沢井曜子、辰野登恵子、狗巻賢二らの直線を用い格子状に組まれた面の絵画や、ソル・ルウィットの「ウオール・ドローイング」などが展示されていました。また、野村仁の「テレフォン・アイショット」は作家が電話の向こうの人に指示を出し、目に見えたものを伝えさせる音の展示で、ちょっと変わった作品でした。

「時間」・・・アメリカのアースワーク/ボディアートや日本のもの派

 デニス・オッペンハイムの「1時間の走行」というスノーモービルやスキーによって1時間に雪面に残された痕跡を記録した写真の作品ですが、その後雪が積もると痕跡が消滅してしまい時間の流れを連想します。同様に具体の田中敦子の「Round on Sand」という砂浜に木の棒でドローイングしたビデオ作品(こちらも痕跡が波に流されて消滅する)もありました。また、もの派からは河口龍夫の「関係一質」と「関係一質 青 84-8」が展示されていまして、前者は、布・鉄・雨水を使い鉄の赤錆が水玉模様に布に色を与え、後者は布・銅・液体を使い銅の腐食が薄緑色に布地に染み出し、自然に出来た色合いが綺麗な作品となっていました。

 最後に全体を通してのこの展覧会の印象は、テーマがじっくりと制作プロセスの痕跡をみることにあるため、かなり見ごたえがあり、かつ勉強になるものでした。

京都国立近代美術館 ~12/19まで

平安神宮・右近の橘

永観堂のもみじ

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November 19, 2004

石川・ モダン・マスターズ&コレクション展

 引き続き金沢21世紀美術館の開館記念展です。ここでは7セクションに分かれて展示されていました。1セクション目のテーマ「都市の散歩者」と2セクション目の「伝統工芸」は、内容や作品展示が分散(1階と地階フロアーに分かれて展示)しているなど、今ひとつ展示の意図が分かりませんでした。

 3セクション目の「眼差しの冒険」では絵画の展示でクロード・モネ~マーク・ロスコ~丸山直文~村上隆までといった内容で、個人的な印象では第50回ベネチア・ビエンナーレで特別展示されていた「ペインティング- ラウシェンバーグからムラカミまで 1964-2003」を意識した展示なのかなと思ってしまいました。ここでは、丸山直文の「カラー・オブ・リバー」が焦点ボケした感じの柔らかい線と色使いの作品で良かったでした。

 4セクション目の「思考と彫刻」でも第50回ベネチア・ビエンナーレ日本館の出展作家の曽根裕の「Highway Junction110-10」(大理石で出来たジャンクションの模型)と小谷元彦の「ダブル・エッジド・オブ・ソート」(毛髪から作られたドレスと写真)がわざわざ隣あって展示されていました。よく考えてみると、第50回ベネチア・ビエンナーレ日本館のコミッショナーが、ここの学芸課長さんだったことを思い出しました。

 5セクション目の「越境する自我」では、常連作家の草間彌生さんの作品が代表例でした。

 6セクション目は、「生成のプロセス」という内容で生け花と書が組み合わさった中川幸夫の「無題(花楽)」や「聖なる書」や、ガラスをどくろ巻きにして制作した過程のビデオとその作品を展示した角松和夫「GLASS No.4 H」がこのテーマに沿っていて、分かりやすい展示になっていました。

 最後のセクションは、「感覚の横断」というテーマで、どこかで観たような・聞いたような記憶を思い起こさせる作品群になっているとのことで、ここでは高層ビルをガラス板の組み合わせで単純化した模型のイザ・ゲンツゲンの「ベルリンのための新建築」や競馬場のコース前に集まっている人々を多重露光して撮影し、その動きが捉えられている作品の鯖江真紀子の「untitled(P-28)」が印象的でした。

 全体としての印象としては、テーマが多すぎることと抽象的過ぎて今ひとつ良く分からなかったけれども、入場無料だったので沢山見られて良かったかなといった感じです。

金沢21世紀美術館 ~12月23日まで(現在一部作品が入れ替わり後期展示になっています。)

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November 18, 2004

石川・21世紀の出会い-共鳴、ここ・から 展

 金沢21世紀美術館開館記念展へ行ってきました。一部の作品は入れ替えがありますので、前期分(12/28まで)を観たことになります。

 全体的な印象は、この展覧会をある程度楽しめましたが、少々不満による「もやもや感」が残りました。その理由は、最近のビエンナーレ・トリエンナーレ(ベネチア、横浜、越後妻有)などに出展している世界中の現代美術作家の作品が、この展覧会で一斉に見られたことが、良く言えば沢山あって良かったのか、悪く言えばもっと新鮮な作家・作品の発掘を期待していたところもあり、判断に悩みました。また、この展覧会のテーマ「共鳴、ここ・から」と感じる作品も、少なかったように思います。

 有料・無料ゾーン含めて、最も印象に残った作品がアニッシュ・カブーアの「世界の起源」で、斜めのコンクリート壁の中心に黒色楕円が作られたものでした。その黒色楕円部を眺めていると窪んでいるのか、平坦なのか照明も暗いので分からず、何でも吸い込むブラックホールなのか、ここから4次元の世界に通じる入り口なのかと、色々と考えさせてくれる作品でした。その他有料ゾーンでは、エルネスト・ネトの「身体・宇宙船・精神」(前期まで展示)がストッキングのような素材でできた宇宙船の中に入り、やわらかなクッションの上を不安定になりながら歩いたり、寝そべったりするという全身を使った体験型の作品で楽しめたこととと、有料ゾーンの最後の方に展示されていたゲルダ・シュタイナー&ユルグ・レンツリンガーの「ブレインフォレスト」が日本の生け花のような草木のインスタレーションで展覧会で歩き回った疲れを取るために休憩しながら鑑賞するのに良い作品でした。

 無料ゾーンでは、サウンドバム・プロジェクト(川崎義博・西村佳哲・藤本たりほ)の「マインド・ザ・ワールド」が幅20mくらいの世界地図の複数の都市にヘッドフォンがかけられており、それらを聞くとその街角の音楽が流れているという仕掛けで、ちょっとした世界旅行をした気分に浸れてお得な感じがしました。また動いているところは時間の都合で見れなかったのですが、クリス・バーデンの「メトロポリス」はレゴ・ブロックやログ・ハウス、積み木で製作されたメトロポリスの中をモノレールやミニカーが走り回る動く彫刻として楽しそうでした。

 最後に、無料ゾーン内にジェームズ・タレル「ブルー・プラネット・スカイ-2004」があります。越後妻有トリエンナーレで制作された「光の家」同様に天井に四角にくり抜かれた空間があり、そこから空の色の変化を楽しむものです。「光の家」や直島の地中美術館などでは要予約ですが、ここは無料ゾーンになっているため、夕方に気軽に美術館に入って眺めることが出来ます。夕方まで粘って実際に空色の変化を見てみたかったのですが、今回は時間がなかったので残念ながら体験できませんでした。しかし、これを観るだけでも、またこの美術館を訪れたいと思いました。

金沢21世紀美術館 ~3月21日まで(前期~12/28、後期1/4~3/21)

金沢21世紀美術館

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November 17, 2004

香川・金刀比羅宮のすべて展 最終回 高橋由一館~学芸参考館

 御本宮でお参りも済ませましたので、裏参道を通って帰ることにしました。この帰り道の途中で、高橋由一館と学芸参考館に立ち寄りました。

●高橋由一館

 金刀比羅宮は、教科書に掲載されている「鮭」が有名な明治期の画家の高橋由一から作品が奉納されたため、最大の所蔵者で26枚所有しているそうです。この展覧会で印象的に残った作品を順にあげていきますと、大きな鯛の赤色が生々しい「鯛(海魚図)」と、鱈、ふきのとう、梅で構成され春の季節が感じられる「鱈梅花」、夕陽を背にした小船が叙情的な「芝浦夕景」、様々な貝の描写が素晴らしい「貝図」、薄青の月明かりで静かな雰囲気を醸しだしている「月下隅田川」、西洋絵画的な真横顔で描かれた「司馬江漢像」などがありました。

●学芸参考館

 この学芸参考館は、絵馬、船舶模型、来年の干支の鳥玩具など様々な奉納物が展示されていました。入口には、左甚五郎の「木彫の双龍」があるのですが、絵馬として長期間にわたり外に展示されていたためか損傷が激しく、余り有難みがありませんでした。また入口の目立つ所には、ガイドさんのお話によると森の石松が奉納した「刀 肥前国忠吉」や、爬虫類のミイラのような「人魚のミイラ」、生前のものが珍しい「忠犬ハチ公の写真」などが展示されていました。これら目玉作品以外では、大勢の力士の行進がユーモラスな綿屋長兵衛の「力士の図」、恐ろしいというよりは妖怪の愉快な様子が楽しい、生田久一の「百鬼夜行絵巻模本」が印象的でした。

●最後に

 裏参道を出て商店街に入ったところで全部見終えたという達成感と、時間の経過からどっと小腹が空いてきたので、またしても、うどん(ぶっかけ)を食べてから帰宅の途につきました。

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November 16, 2004

香川・金刀比羅宮のすべて展 その3 表書院~奥書院~緑薫殿

 金毘羅狛近くの階段を昇ったところに、あの「百花の間」がある書院(表書院・奥書院・新書院)の入り口があります。今回訪問して書院の感想を一言で言いますと「ヴァチカン美術館の日本版で大変すばらしいところ」でした。ヴァチカン美術館を想像した理由は、秀作「アテネの学堂」があるラファエロの間や、システィーナ礼拝堂のミケランジェロの「最後の審判」を擁し見所が多く大変すばらしいところですが、書院も円山応挙の「遊虎図」がある虎の間、伊藤若冲の「花丸図」がある「上段の間(百花の間)」があり、こちらも負けていないと感じました。

書院入口

●表書院

 表書院では円山応挙の襖絵のある「鶴の間」「虎の間」「七賢の間」「山水の間」と、邨田丹陵の「富士の間」があります。「虎の間」では遊虎図の「水呑みの虎」や眠っている虎、遊んでいる虎など生き生きと描かれていました。「山水の間」では、前庭も借景にして描かれていたことと天井も格子状の飾りが施されており空間設計がすばらしいと感じました。「富士の間」では廊下から見ると傾斜のついた線しかみえず何かなと思ったのですが、部屋の中に入るとコの字型の3面と奥行を利用して中心に富士山、両側に裾野が描かれており、絵の広がりが素晴らしかったです。
 いずれの部屋も通常では廊下からガラス越しに鑑賞しか出来ないそうですが、今回は特別に部屋の中に入り絵の近くから鑑賞できるようになっています。

●奥書院

 訪問した日が祝日だったため表書院の「富士の間」あたりから渋滞が発生し、奥書院へ入るまで10~15分くらいかかりました。奥書院では伊藤若冲の「上段の間(百花の間)」、岸岱の「春の間」、「菖蒲の間」、「柳の間」があります。特に「上段の間」では、テレビで観たときからやっとここまで辿り着いたという思いのとは裏腹に、実際は部屋が薄暗く、そのため若冲の「花丸図」もはっきりと見えず、さらに人が多かったためゆっくりと鑑賞できず大きく期待がハズレ落胆しました。しかし、「菖蒲の間」ではカラフルな蝶が生き生きと描かれた岸岱の「群蝶図」や「柳の間」では、牡丹の白色が鮮やかな狩野探幽の「文殊菩薩並牡丹図」が鑑賞できて満足しました。さらに新書院につながる廊下から外を眺めると「讃岐富士(飯野山)」がのどかな讃岐平野の中にぽっこりと浮かび、とても良い風景でした。

●新書院

 新書院では、陽が差し込み明るくなっている部屋の中に若冲の「花丸図」の一部が下からライトを当てられて展示されていました。先程述べたように実際の「百花の間」を見て落胆したのですが、こちらの明るい「花丸図」は、私がテレビで見て金刀比羅宮へ行こうと心を動かされた絵そのものでした。背景の金色に光り輝く中から、粋な花の絵が力強く描かれています。ガイドの方のお話では、若冲の花の絵には葉があり、その葉は自然に虫食い部分が描かれていると解説されていたので、再度よくみると確かにすべての絵がその通りになっていまして、それが美しい花を引き立てているのに役立っているのかなと思いました。

●御本宮~緑薫殿

 書院を出た後、大きな建築物の旭社の前を通り、急な階段の御前四段坂を昇ったところに「御本宮」があります。「御本宮」自体は古い木造建築なのですが、今回の大遷座を機会に建てられた「緑薫殿」は赤錆びた鉄を柱や囲いなどに大量に使った斬新な建築物になっていました。この鉄の赤錆が良い意味で枯れた趣があり、周囲の景観と案外マッチングして印象的でした。

御本宮・左から

御本宮・右から

絵馬

緑薫殿


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November 12, 2004

香川・金刀比羅宮のすべて展 その2 金毘羅庶民信仰資料収蔵館~宝物館

 金丸座から表参道に戻りえっちらおっちら階段を昇り続けると、やっと平坦なところに出て金毘羅庶民信仰資料収蔵館と宝物館が隣り合ってありました。

参道-宝物館まで

●金毘羅庶民信仰資料収蔵館

1)描かれた象頭山 ~金毘羅絵図の世界~
 ここでは、「象頭山十二景図」や「金毘羅祭禮図屏風」などの金毘羅周辺の風景が描かれた絵が展示されていました。しかしながら私は、今で言うところの金毘羅詣でのためのガイドマップで大阪などの関西各地から丸亀や高松、多度津まで海路で四国入りし、丸亀など四国の玄関口から金毘羅まで道案内がかかれた様々な古地図類が古くから信仰を集めていた証拠として印象に残りました。

2)冷泉為恭(ためちか)展
 まず真っ先に目に入るのが「天井龍図」という水墨画で龍の力強さを感じる大きな作品でした。それに対して為恭が描いた本類を展示しているコーナーに「為恭粉本」というのがありましてその中の「猫図」は、猫が頭上に手をやり寝転がっている仕草がかわいらしく描かれているほほえましい作品でした。また、お隣の宝物館には為恭が描いた「三十六歌仙模本」も展示されていました。

●宝物館

 久留正道設計で明治38(1905)年に建てられた古建築物でそれ自体も見所の宝物館では、「金刀比羅宮の名宝」として絵画、刀剣、能面、甲冑、神仏分離以前に所蔵していた仏像などが展示されていました。1階では狩野探幽、自適、牧心が描いた「三十六歌仙」が入った正面の壁一面に並べられています。三十六歌仙では絵のすばらしさよりも、斎宮女御(さいぐうのにょご)が唯一着物が掛かった衝立で顔を隠していたのが何故なんだろうかと印象に残りました。1階には他にもダイナミックな狩野探幽の「虎図」、長沢蘆雪の「鯉魚図」が印象に残りました。2階には、重要文化財の画 伝・藤原隆能の「なよ竹物語絵巻」や平安時代に作られた十一面観音像がありました。しかし私が印象に残ったのは、伝・空海の「大黒天像(千体大黒)」で豆粒程度の大きさで千体の大黒が書かれているようなのですが、絵が古く、かつ展示ケースも暗いため細かい描写がよく分からいのですが、この絵全体の印象が大量の複製ということで現代アート的に感じました。

金毘羅狛

神馬・北勇号(道産馬)

参道沿いに彫刻あり、神馬の厩舎があったりで、楽しめます。

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November 11, 2004

香川・金刀比羅宮のすべて展 その1 きっかけ

 金毘羅さんには興味がなかったのですが、「時の宝箱-四国ミュージアム探訪-」をぼんやり見ていると若冲の「百花の間」を取り上げていました。この部屋は、現在金刀比羅宮文化顧問をされている田窪恭治氏の「表現の現場」(講談社現代新書)に

「私が画家になったのは少年の頃の不思議な体験がきっかけだった。(中略)白日夢のような、その感覚が忘れられなくて、いまだに私は、あっち側(闇)とこっち側(光)の境界をさまよっているような気がする。その不思議な空間は、四国こんぴらさんの奥書院にある『百花の間』である。」
と書かれているところで、私もテレビで見ただけでその不思議な部屋に惹かれ、今回訪問しました。この奥書院(重要文化財)は通常公開されておらず、今年は33年に1度の大遷座の年に当たるため、それを記念して125年振りに一般公開されたものです。

 また、今回金毘羅さんを訪問して分かったことですが、金刀比羅宮の参道にある古く趣のある建物類(このひとつで醤油うどんを頂きました。)や、日本最古の芝居小屋の金丸座、本展覧会の会場となっている金刀比羅宮の各書院、各博物館をはじめ、神社(お宮)、絵馬堂、遷座により新規に建てられた緑薫殿など見所満載でアートの一大テーマパークのようでした。実際すべての会場を廻るのに4時間ほどかかりました。

 このため、今回は記事を分割して書いていきます。

 金刀比羅宮の美術品については、四国新聞社の特集記事「金刀比羅宮 美の世界」をご参照ください。

金刀比羅宮 12月12日まで

金丸座外観

金丸座内部

旧金毘羅大芝居 金丸座 ブドウ棚(天井)の格子が美しい

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November 08, 2004

東京・マティス展 過程と変奏

 マティスといえば、1996年に伊勢丹美術館で開かれた米・ボルチモア美術館のコーンコレクション展を思い出します。この展覧会の最大の売りは、通称「ピンクヌード」正式名称「大きな横たわる裸婦」がやってきたことと、その裸婦像の制作過程を記録した22枚の写真も同時に展示され、どのようにマティスが裸婦のフォルムを単純にしたか分かるようになっていたことでした。これだけでも十分見ごたえのある展覧会でした。

 さて、今回国立西洋美術館で開催しているマティス展には、制作過程がわかるような展示を期待していましたが、それを裏切らず、さらに絵画のみならずブロンズ像などの豊富な展示物で見せ方もスケールアップしたもので大変満足しました。下記に展示内容に沿った感想を記します。

1.変奏(ヴァリエーション)
 同一主題(例えばノートルダム寺院の風景)から複数の視点で制作されたものが並べて展示されて、一目でそれらの違い(フォルムの違い、色彩の対立[青と赤、黒と黄色など])が分かるようになっていました。絵画、ブロンズ像、スケッチなど、その物量に圧倒されました。

2.過程(プロセス)
 ここでは、制作過程に着目し、制作環境(アトリエや製作中の自画像)を絵に取り入れたものや、前述したように制作過程の写真に着目した内容となっています。

-1)制作の現場(マティスのアトリエ、自画像)
 このテーマで何枚も絵を集めましたという風にしか捉えられず、正直に言うとつまらない内容でした。

-2)マーグ画廊での個展[1945年](製作過程の写真)
 ここでは楽しみにしていた1枚の絵とその制作過程の写真が展示されていました。この中で「マグノリアのある風景」を、制作過程の写真と見比べると、明らかに塗り変えた跡が分かるようになっていました。また、「ルーマニアのブラウス」では、描き始めの頃で十分完成したと思える絵でしたが、顔の描き変え、塗り直し、背景の描き変え、髪を描き加えるなど3回ほど大きく変化し、最終的に初期と全く異なるものに仕上がっていました。これらの展示で欲を言えば、目視だけでは筆跡の変化が分かりにくいので、最新の分析技術(X線、紫外線、赤外線などの撮影写真)を使って分かるように展示してあれば、さらに良かったかなと、ここでは思いました。

-3)プロセスと表面(様々な痕跡)
 2-2項では、分析写真があれば痕跡が分かりやすいと私は感じましたが、この展覧会のキュレーターさんは、目視で発見させることにこだわり a.グラッタージュ(引掻き) b.不統一な仕上げ c.描きなおしの痕跡 d.塗り重ね e.塗り残し f.線と色彩のズレ を提示し、それらが残っている作品を集めて展示していました。これには脱帽でした。
 テーマから反れますが、「金魚鉢のある室内」という作品が、青い壁、金魚鉢の水、室外の空が青ベースで、金魚、室外のビルの壁が赤ベースで描かれていて、この青と赤の色彩の対比が特に心地よく感じられ印象に残りました。

3.プロセス/ヴァリエーション
 最後に2つの共通のテーマをもった作品類が展示されていました。

-1)デッサン集 「テーマとヴァリエーション」
 木炭である「テーマ」が描かれて、その「ヴァリエーション」がペンで描かれているドローイング類で、十分マティスの表現の豊かさを楽しめました。

-2)切り紙絵
 助手がグアッシュで色付けした紙をマティスが鋏で切り抜き、貼り付けて制作した絵画で、「はさみでデッサンする」ため、フォルムが単純化され、シンプル・イズ・ベストという言葉が合う作品群になっていました。この中では「ブルーヌード2」という作品が前述の「ピンクヌード」との兼ね合いで印象に残りました。

国立西洋美術館 12月12日まで

カレーの市民

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東京・流行するポップアート ベラルド・コレクション展

 ポップアートの展覧会といいますと、その生まれ故郷のアメリカの作家のものが中心になると思いますが、この展覧会は、ポルトガルのシントラ近代美術館が所蔵しているベラルド・コレクションから構成しているため、アメリカのみならずヨーロッパ全体のポップアートの動向も展示していることが、最大の特徴でした。

 展覧会の前半は、マルセル・デュシャンのレディメイドから個人的にあまり好きでないアメリカ・ポップアートのウォホール、リキテンスタイン、ジム・ダインなどが教科書的に展示されていました。その中では、ルーカス・サラマスの「靴箱」が印象に残りました。毛糸に包まれた靴箱の上に多数の釘が詰まったハイヒールが置かれている作品ですが、そこから得られた嫌悪感は草間彌生さんの銀色のイボイボに通じるものがありました。

 後半は、ヨーロッパのポップアートが展示されていました。この中では、外からオレンジ色のランプがついた部屋を窓からのぞくように描かれたパトリック・コールフィールドの「灯りが点いた窓」、右手にタバコ、左手にライターを持って火をつけようとしてる人の横顔が白黒のシルエットで描かれたルルデス・カストロの「クロディーヌ・ビュリーのシルエット」が、都会的な孤独感や哀愁が感じられる好きな作品でした。また佐伯祐三の描いたパリの街角の広告塔にあるようなポスターを貼ったり剥がしたりするデコラージュで制作されたジャック・ド・ラ・ヴィルグレの「地下鉄サンジェルマン駅」やミンモ・ロラッテ「ルナ・パーク」についてはリアルに作られているため、その手法に興味を持ちましたが、佐伯作品に感じられる都会の空気感みないな味わいが感じられませんでした。

Bunkamura ザ・ミュージアム 12月26日まで
TBSホームページ

東急百貨店本店前

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November 07, 2004

東京・縄文-光の化石 トランスサークル展

 現代アート作家の森万里子さんのインスタレーションが意外な場所(東大総合研究博物館小石川分館)で開かれていますので、見てきました。

 最初に「プライマリーメモリー」というインスタレーションが展示してありました。これは、無色透明なプラスチックで作られた土面をイメージしたものが柱に掲げられ、その周囲には、無色透明なプラスチックで楕円状の石を形取ったものを円形状に並べて、賽の河原のような縄文を意識した作品となっていました。そのプラスチック製の形状を考案する元となった縄文の土面、磨製石斧と、賽の河原状を考案する元となった北海道、青森の縄文時代の遺構の写真が次に展示されていましたので、制作過程が良く理解できました。また、縄文の遺構の写真と同じ場所には、沖縄の久高島で石を使って円形状に並べたインスタレーションの写真も展示してありました。北方の遺構から影響を受けて、沖縄でインスタレーションするという地理的な対比が面白かったです。

 写真の後には、タイトルにもなっている「トランスサークル」が展示してありました。ちょっと暗くした部屋の中に竜安寺の庭のような白い石の上に楕円状の石を形どった大きなプラスチックが8個程度円形に並べられたもので、そのプラスチックの内側から発光し様々な色に変化したり消えたりするインスタレーションでした。展示会場の係りの方に説明していただいたところ、8個の石状のものは、形状を磨製石斧から、そのもの自体は惑星をイメージし、円状に並べている中心に太陽があると考えて、陽のあたる方角にある惑星(石状のもの)が様々な色で発光しているそうです。このため同一方向に惑星が2つある場合は、2色で発光していました。

 次に「ムーンストーン」というインスタレーションでは大きな水晶玉みたいなものが台座に載せられていて、わずかに下方からライトが当てられて光っているようでした。同じ部屋には、「トランスサークル」と「ムーンストーン」の制作過程で作られたドローイングもありました。

 全体を通しての感想は、「プライマリーメモリー」では素材に透明なものを使い、縄文時代の無垢な心を大切にしたいという感じが出ていましたし、「トランスサークル」、「ムーンストーン」、沖縄(琉球)の神の島、「久高島でのインスタレーションの写真」から、縄文というテーマから大きく飛躍し作家の宇宙観・宗教観・祈りみたいなものが反映されていたと思いました。

東京大学総合研究博物館小石川分館 12月19日まで

小石川分館

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November 05, 2004

愛媛・蔵出しアート3 - デコ・プロジェクション -

 松山市三津浜地区で地域密着型現代アートとして、地元有志団体の平成船手組と芸術NPOカコアが主催となり今年の3月に期間限定で明治45年築の古い蔵を「アート蔵」として再生展示した「蔵出しアート」が、今月4日間開催されるそうです。主催者から案内葉書を頂きましたので、転載します。

蔵出しアート3 - デコ・プロジェクション -
「アート蔵」 松山市三津1丁目10-8
伊予鉄港山駅 三津の渡し降りてすぐ(所要6分)
伊予鉄三津駅から徒歩12分
敷地内に駐車場はありません。

11月14日(日)・21(日)・27日(土)
 10:30~16:00(無料)
アート蔵前広場 ・デコカフェ
アート蔵1階 ・デコヒストリィ (一般公開)
アート蔵2階 ・早崎雅巳 作品展示 (一般公開)
        ・デコメイロ (一般公開)

11月28日(日)
 10:30~16:00(無料)
アート蔵前広場 ・早崎雅巳 公開制作
          ・デコカフェ

 10:30~12:00(無料)
アート蔵1階 ・デコヒストリィ (一般公開)

 10:30~13:00(無料)
アート蔵2階 ・早崎雅巳 作品展示 (一般公開)
        ・デコメイロ (一般公開)

 14:00開演(入場料500円 要チケット)
アート蔵1階 ・デコパフォーマンス・ワークショップ
         人形浄瑠璃 「伊予源之丞」
        ・特別パフォーマンス
         戒田美由紀 「デコ・プロ」
        ・アフタートーク or パネルディスカッション

参考までに3月に開催された「蔵出しアート」と伊予鉄三津駅の写真を掲載します。

アート蔵入口

蔵前

1階ビデオ作品

三津駅

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October 19, 2004

愛媛・セキ美術館

 道後温泉近くにある近代美術を常設展示しているセキ美術館に行ってきました。私設のこじんまりとした美術館ですが、1階に大きなオルゴールがあり美しい音色の演奏を聞くことも出来ますし、地階にはハイビジョンギャラリーもあり印象派の画家(ドガ、モネ)の10分程度の番組もくっきりとした画像で見ることが出来ました。

 さて、館内は階ごとに展示が分かれており、地階、1階が日本画で横山大観、東山魁夷などの大御所の作品を見ることが出来ます。

 中2階、3階が近代洋画のコーナーで、ここでは黒田清輝をはじめとして、国吉康雄、岡鹿之助、藤田嗣治などがありました。私が競馬ファンのため特に印象に残ったのが国吉康雄の「馬を選ぶ」で、この作家独特の画面全体が茶色い色調で帽子をかぶった婦人が立ちながら新聞に目をやり(競馬の勝ち)馬を選ぶというものでした。

 2階がロダンの部屋と呼ばれるところで、一般の美術館ではあまりお目にかかれないものがコレクションされています。ロダンの作品では、ブロンズ像を多く見ることが出来ますが、ここは大理石像の「ファウナ」が部屋の中心に展示され、また壁にはドローイング作品の「折檻の庭」が掛けられていました。その他ルノアールが描いたロダンの肖像画のリトグラフなどもあり、いずれも珍品と感じました。

 最後に展示室全体で、作品と題名のみ壁に展示し、解説はA6サイズの小さな紙をテーブルから取って見れるように工夫されていたのが、この美術館の訪問者への気遣いと感心しました。

セキ美術館

セキ美術館

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October 18, 2004

愛媛・畑山昇麓コレクション展

 岩手県の萬鉄五郎記念美術館を中心とした畑山コレクションと久万美術館の井部コレクションとの交換展示による企画展が開催されているため訪問しました。

●畑山昇麓コレクション
 畑山昇麓は、松本竣介の中学時代の同級生で社会に出た後再会し、画家を支えたコレクターとなられたそうです。その松本竣介の功績を広めるため、神奈川県立近代美術館の松本竣介コーナー開設の際に所蔵作品を一括寄贈された後、竣介以外の画家のコレクターとなられ、それらの作品を萬鉄五郎記念美術館に寄贈されたそうです。

 この展覧会を全体的に見まして個人コレクターのため版画・素描類が中心に構成されていました。また、コレクターの好みとしては壁画調の作品(微妙な色合いで構成した作品類)、ヨーロッパ的な風景類が多いように感じました。

 最初のコーナーは、松本竣介とその周辺の人々として、複数作家展示されていました。このコーナーでは壁画調の微妙な色合いで印象に残ったのが、麻生三郎「母子とブランコ」と、澤田哲郎「さすらい」でした。数量的には野田英夫のスケッチが中心でしたが、油絵とはイメージがかけ離れているため、あまり強い印象は残りませんでした。

 次は、松本竣介のコーナーでした。この作家のイメージは絵の全体が青い色調の作品が多いと記憶していましたが、今回の展示で赤い色調の作品も多くあることを知りました。今回は、青と赤の色調を対比させた展示方法が取られていて「R婦人像」[青色調]と「少女」[赤色調]、「橋(東京駅裏)」[青色調]と「工場」[赤色調]が隣同士に架けてあり、明確に色調差を意識できました。

 最後に、松本竣介以降の作家のコーナーでは、田中阿喜良の「親子」という油絵が、ヨーロッパの街角にたたずんでいる親子が明瞭なタッチで描かれていたことと、吹田文明の「青い十字」という、中心にある楕円形に上下左右から丸い球が尾を引きながら集まってくるような抽象画で草間彌生の初期作品に似ていたため興味深く感じました。

●井部栄治コレクション
 現在萬鉄五郎記念美術館に交換展示され見れませんが、ご参考までに記します。

 井部栄治は久万高原町出身の林業家で、きまぐれ美術館で有名な同郷(松山出身)の洲之内徹氏の現代画廊などから日本近代洋画、郷土の書画・陶器などをコレクションされて、当時の久万町に寄贈されたそうです。

 ここの近代洋画は、久米桂一郎、黒田清輝などの外光的な作品から、萬鉄五郎のフォービィズムの代表作「裸体美人」の習作、マティス風の「T子像」、村山槐多の赤と青の強いコントラストで描かれた「裸婦」、「芍薬」など良い作品が多いのが特徴です。

久万美術館 12月5日まで

久万美術館

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October 13, 2004

愛媛・畦地梅太郎記念美術館

 道の駅みまコスモス館内にある畦地梅太郎記念美術館(井関邦三郎記念館も兼ねる)に行ってきました。

●井関邦三郎記念館
 井関邦三郎は、松山に本社がある井関農機の創業者で三間町出身のため、ここに記念館がつくられたそうです。展示物としては、フォード社のT型フォードの様に当時としては画期的な商品であり井関農機の発展に貢献した全自動籾すり機(籾すり+篩い分けの2つの機械を連結して1つにまとめたもの)の第1号機の複製などが展示されています。ここの展示は、籾すり機やコンバインといった機械物よりも井関邦三郎の経営哲学・人格などにスポットライトをあてているために、機械構造の説明が少なく不満が残りました。

全自動籾すり機第1号の複製

参考:井関農機(株)井関邦三郎ヒストリー

●畦地梅太郎記念美術館
 同じく三間町出身の畦地梅太郎氏の山男などをテーマとした木版画が展示されています。また、あわせて展示ホールの入り口に畦地版画の出来るまで(製作過程)の紹介や中程にアトリエの再現、実際に刷りに使用された版木を手に取って触れるなどの工夫がされています。

 現在常設展として畦地梅太郎と中尾義隆(同じく三間町出身)の版画の展覧会を12月27日まで開催されています。

 畦地氏の作品は単純な形態、平面的な色使いでシンプルでほのぼのとした印象でした。同じく中尾氏は、マチスのようなシンプルに描かれたモダンな人物像が多く、技法的にも一部の面、影などを細かなランダムな線で構成するなど洗練されていました。私の好みでは、どちらかというと畦地氏よりも中尾氏の作品が良かったと思いました。

畦地梅太郎記念美術館

藤部吉人_森の魚たち

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October 11, 2004

愛媛・第10回全国「かまぼこ板の絵」展覧会

 身近にある「かまぼこ板」に絵を描くことで誰にでも芸術はできるということと、すべての応募作品は展示されるというコンセプトで全国から「かまぼこ板の絵」を募り、毎年コンクールが開かれています。

 「かまぼこ板の絵」というのは、多くは1枚の「かまぼこ板」に好きなように鉛筆や絵具で絵が描かれたものですが、今回初めてこの展覧会を訪れて、様々な技法で「かまぼこ板の絵」が制作されていまして感心しました。

 まずは、「かまぼこ板」は1枚ではなく、複数枚組み合わせている人達もいました。組み合わせ方も、1枚毎に異なる絵を描き、組絵(絵物語や漫画のような形)にしているものや、複数枚で大きな木面を作り1点を描いているものなどです。また、絵の描き方も、絵具で描くから、絵具を塗った後スクラッチする、板を彫る、布・貝殻・ビーズなどコラージュする、ちょっとした置物(塑像)をつける、文字のみで構成する、「かまぼこ板」の木目を生かすなど十人十色で制作されていました。描かれたテーマは、作者(応募者)の半分くらいが小中学生でしたので、身近な生き物(動物や魚類)が多いと感じました。この展覧会の全体的な印象は、「かまぼこ板」という身近な素材であることと、絵の内容からアメリカの開拓時代などにみられるフォーク・アートのような素朴さを感じました。

ギャラリーしろかわ 11月23日まで

ギャラリーしろかわ

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October 01, 2004

愛媛・ 松本望・千代コレクション特選展 -玉川近代美術館-

●松本望・千代コレクション特選展(後期:洋画)
  大川美術館移動展 No.7-生活から生まれた豊かな美術

 上記コレクションは、パイオニア(株)創業者の故 松本望・千代夫妻が個人蒐集してきた美術品で、約300点を大川美術館に寄贈されました。玉川近代美術館では、そのコレクションから前期(9月26日まで;終了済み)が日本画を中心に、後期は洋画を中心に特選展として合計約100点が展示されています。

 今回展示されていたコレクションの中心は、海外の作品が印象派からエコールド・パリあたりを中心に、日本の作品では岸田劉生から荻須高徳、熊谷守一などの近代作家でした。全体の印象としては、個人コレクターの蒐集であるため海外の作家は油絵よりも版画類(リトグラフなど)が中心であったこと、内容としては風景や人物を中心とした作品が多く、見ていて心が和むものでありました。展示の中で印象深かった作品を挙げると、「球遊びする子供たち」「花飾りのついた帽子」の2点は映画のポスターサイズくらいのルノアールのリトグラフ作品で、この作家の典型的なイメージの作品なので大きな美術館に収蔵されている油絵が元になった作品だと思います。ルノアールでは小品ながらも油絵も展示されていました。また、日本の作家では熊谷守一「蟻」が水彩作品で色紙くらいの大きさに対角線上に蟻2匹のみがシンプルに描かれている作品ですが、作家の小さなものに対する愛情が感じられました。また、森芳雄「壷」も少しにじんだような淡い色彩で壷から水を汲む女性が描かれている作品で、その空間の静けさが感じ取れました。

 常設展示は、浅井忠、黒田清輝からオノサト・トシノブや菅井汲までの日本の近代~現代の代表的な作家の小品が並んでいます。また、海外の作家も後期印象派のゴーギャンあたりからアメリカ現代美術のウォホールまで代表的な作家が展示されています。日本の作家の作品類は、どちらかというとその作家の代表作からちょっとイメージが離れたところにある近代美術通好みな小品が多いです。私の好みでは、中村彝の「平磯海岸」が小品ながらも彝らしい筆致と色彩を感じました。また、坂本繁二郎の「馬」がパステルの淡い色彩で描かれて心が和み、牧野虎雄の「ダリア」では画面全体に暗い緑の葉を、中心には赤いダリアの花が描かれていて、そのコントラストの強さが印象的でした。最後に、オノサト・トシノブの作品は、一般的には多重の四角形の組み合わせで目がチカチカするようなイメージがありますが、ここでの展示作品は襖にあるような丸に格子が描かれた図形が中心のあっさりめで落ち着いた印象でした。

玉川近代美術館 11月7日まで

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September 30, 2004

東京・小沢剛:同時に答えろYesとNo!展

●小沢剛:同時に答えろYesとNo!展

 小沢氏の作品を初めてみたのは、東京現代美術館でのMOTアニュアルでの地蔵建立でした。日記形式で1日1枚の写真が並び、その写真の中に小沢氏によって作られたお地蔵さんが「ちょこんと」写っているという作品であり、そのため写真を注意深く見てお地蔵さんを探さなければならず、「ウォーリーさんを探せ」みたいな発見の楽しさのあるものでした。その後、2003年越後妻有トリエンナーレのかまぼこ型倉庫プロジェクトでは、小沢氏が製作したかまぼこ型倉庫の中に、氏が地域のかまぼこ型倉庫を取材した写真を並べて展示するというものであり、同じかまぼこ型倉庫でも色々あるのだなあと感心させられました。

 本展覧会も非常に楽しみにしていましたところ、期待を裏切られず十分に満足できるものでした。まずは、噂には聞いていた「なすび画廊」ですが、牛乳箱という非常に限られた空間でも、様々な作家によって、こんなに遊べることができるものかと感心しました。次に醤油画資料館が展示されており、私はこちらも初体験で楽しかったのですが、特に近現代の作家の作品を醤油で複製してある辺りが小沢氏の遊び心を感じました。醤油画については、滋賀県立近代美術館コピーの時代展でも展示されていまして、特に金山明氏の作品の複製を元の作家と同じラジコン車に醤油を乗せて、それを動かして製作する手法で再現するほど凝っていたと印象に残っています。あとは、上で紹介した地蔵建立やNHK教育で放映されていた「できるかな」の楽しい音楽が印象的なワンマングループショウなどの展示がありました。最後にベジタブル・ウェポンシリーズが展示されていました。私がこのシリーズを見るのは、今回が2度目なのですが、初めて見た時には各国の美女が、そのご当地の代表的な野菜をライフル型に構えている写真で(このためベジタブル・ウェポンと名づけられたと推察)、女性と武器、野菜と武器というミスマッチな感覚と地物野菜で国が分かるという仕掛けを楽しく感じていました。今回の展示で分かったことですが、この地物野菜は、ご当地の鍋料理を作る素材になっており、写真を撮った後で皆で鍋を囲んでコミュニケーションを図るという「落ち」がさらについていることを知りました。

森美術館 12月5日まで


●渋谷-六本木ヒルズ-品川-御殿山 (都バス移動記)

 この日は、渋谷のグッゲンハイム美術館展-六本木ヒルズー御殿山・原美術館の奈良美智展と3展示を梯子しました。一般的には電車を中心に移動されると思いますが、今回は都バス1日乗車券(バスのみは500円)を利用して、都バスのみで移動することを思いつきました。1日乗車券は、バス乗車の際に購入することが出来ます。

・渋谷→六本木ヒルズ
 渋谷駅東口から出発しているRH01系統にて村上隆氏のキャラクターでラッピングされたバスで六本木ヒルズの地下駐車場まで辿り着くことが出来ます。所要時間15分程度。

・六本木ヒルズ→(西麻布・乗換)→品川
 都01系統渋谷駅行きにて西麻布で品97系統に乗換て品川駅まで。バスに乗っている時間は、それぞれ10分、20分程度でしたが、バス待ちにそれぞれ15分程度掛かり、結局移動には1時間程度掛かってしまいました。

・品川-御殿山
 反96系統で行ける筈ですが、当日3館目の訪問で残り時間が少なくなってしまったことと、バスの便数が1時間に2便と少なかったため、タクシーで移動しました。ただし、原美術館訪問後は、運良くバスで品川まで帰ることが出来ました。所要10分程度。 

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September 26, 2004

kyupi kyupi The best - DVD -

 キュピキュピを始めてみたのは、昨年のベネチア・ビエンナーレのZ.O.U - Zone of Urgency -展で、3面スクリーンに投影されていた The Wide Showというビデオインスタレーションでした。そのときの印象は、ノリの良い音楽とダンスでスピード感があり、またアダルトビデオっぽいエッチなシーンも多いところが日本のサブカルチャーを良く表しており面白いなと思いました。

 さて、最近ネットサーフィンしていたところkyupi kyupiのホームページに出会い、その中でDVDが発売中であることを知りました。画廊さんで取り扱っている現代美術作家のDVDというと価格が数十万円するようなイメージがあるのですが、今回紹介するDVDはHMVで取り扱っており、5040円と手頃だったので、早速購入しました。

 DVDの内容は、主に3分類されており、1つ目は、各国の美術館等で展示されたビデオ類(上記ベネチア・ビエンナーレのThe wide showのRemixも含む)、2つ目はkyupi kyupi 1millionを中心としたビデオクリップ類、3つ目はkyupi kyupiのライブ映像(キャバロティカという歌謡ショウ〔舞台〕)です。

 1つ目の美術館等で展示されたビデオ類は、2つ目のサブカルチャー的な個々のビデオクリップ間をスピード感ある映像でつなぐという手法で作成されていました。このため、異なる美術館等で展示されたビデオを連続してみると、同じクリップが繰り返し使われています。

 3つ目のライブ映像は、2つ目のビデオクリップ類のイメージが舞台上でライブで再現されており、さらに現代美術とはイメージが相容れない美空ひばりさんを中心とした演歌の歌謡ショーで盛り上げるという内容でした。

 いずれも楽しめる内容でお勧めDVDです。

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September 24, 2004

光州ビエンナーレ(2004年)

●光州ビエンナーレ - A Grain of Dust A Drop of Water 一塵一滴 -

 釜山と比較してこちらは、アジア地区最初の国際ビエンナーレ発祥地だけあって複数の会場があり、特にメイン会場は、専用ホールでの展示となっていました。展示内容は5ギャラリーに分かれており、ギャラリー1がDust、2がWater、3&4がDust+Water、5がThe Clubとなっています。

 特にギャラリー1では、Yue Minjun氏(笑顔の同一人物の繰り返し)や日本のKengo Kuma & Momoyo Torimitsu氏(床を這う人型ロボット)の作品のように人に関するものが多く展示されており、私たち個々人はDustという捉え方をしていたように感じます。

 ギャラリー2では、生命を育む水というような捉え方をされており、宮島達男氏(デジタルカウンター)、Iika Meyer氏(ガーデン)のような生命に関する展示、Seung-young kim氏(大きな平たい水槽の上に天井から水滴を落とすチェンバー・オブ・メモリー)の関する展示が印象的でした。

 ギャラリー3&4は、2つのテーマの混成のため多様な展示がなされており特に統一的なメッセージは感じませんでした。その中でもギャラリー3では、Marco Maggi氏の筋目(切れ目)の入った林檎を乾燥させた展示と、その乾燥状態から瑞々しい林檎に戻るまでのビデオインスタレーション(Dust in Love)が、塵になるまでの時間という概念が簡単に観察でき印象的でした。ギャラリー4では、テーマと殆どかけ離れている内容のものが主でしたが、全体的に活気がありました。特に、朝鮮半島を盛り土で模ったJeon-yong Lee氏の作品が韓国らしいと感じ、Jennifer Allora / Guillermo Calzadilla氏のオートバイのマフラー部にトランペットを取り付け様々な音色を出しながら走り回るビデオインスタレーションが楽しく、Jin-ran Kim氏のソープルームでは石鹸の良い匂いと琉球音楽で癒され、The Kingpinsの厳つい集団が韓国の雑踏に飛び込んでいくパフォーマンスのビデオインスタレーションが元気良く、Koji Iijima氏の鉄犬が火を噴いたり、排泄物を出したり、交尾したりする芸の細かいビデオインスタレーションが印象的でした。

 ギャラリー5では、白い壁で展示されている美術品と鑑賞者という概念を超えた展示を目指しているとキュレーターがカタログに記載していますが、その通りで、私は内容が良く理解が出来ませんでした。

 余談ですが、第1,2会場(site)はメイン会場と同一公園内にあり見学しましたが、第3,4会場は離れた場所にあり今回は気合がなかったため訪問しませんでした。さて、第2会場ではKorea Expressと命名された30名の韓国人作家の展示でした。ここの作品で日本では展示できないだろうと推測され、アートと感じる部分もない性行為そのものをビデオインスタレーションしたものがあり、儒教国家の韓国で良く展示出来たなあと感心しました。

光州ビエンナーレ 11月13日まで
月曜-金曜 9-18時
土曜、日曜 9-17時
入場料 大人(個人) 12000W(1200円程度)
ガイドブック(韓国語版) 3000W(300円程度)
ガイドブック(メイン会場版)(韓国語・英語併記) 25000W(2500円程度)
 *ガイドブック(メイン会場版)を購入したら、2002年のガイドブック(韓国語版)をプレゼントしてもらいました。

光州ビエンナーレ会場site1

●光州-ソウル(高速バス)

 ビエンナーレ会場にある観光案内所に高速バスターミナルまで行く方法を尋ねたらハングルで光州バスターミナルと書いた紙を渡されタクシーで行ってねと言われました。そこでバスターミナルまではタクシーで向かいましたが、道中で手を上げタクシーを止めるおばさんがいた為、初めて相乗りになりました。こちらの方が早くから乗り、早く目的地に着いたため、とりあえずメーターの料金を払い下車しました。さて、光州-ソウル間の高速バスですが、ラグジュアリー車と一般車があり(たぶんラグジュアリー車が横3列、一般車が4列と推定される)、ラグジュアリー車に乗りました。どこの国も一緒で大都市のソウルに近づくにつれ渋滞に巻き込まれましたが、何とか所要時間4:40で到着しました。料金は、2090円程度でした。ソウルの高速バスターミナルからは、地下鉄経由で東大門にあるホテルに無事にチェックインし、NHKワールドにて23:15からの「ちゅらさん3」を見ることが出来ました。

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September 23, 2004

釜山ビエンナーレ(2004年)

●福岡-ソウル-釜山(KTX乗車記)
 金印を見た後、急いで福岡空港国際線ターミナルへ行き、飛行機でソウル(仁川空港)へ向かいました。仁川空港に到着した後KTX発券コーナーにてソウル駅までのノンストップ高速バスおよび韓国国鉄ご自慢の高速列車「KTX」の釜山までの1等車乗車券を購入しました。ソウル駅では乗車券購入窓口に多くの人が並んでいましたが、空港は空いていて先に購入しておいて正解でした。今回は、時間の都合からソウル-釜山間が2:55かかる一般的な停車パターンでの乗車でしたが、それでも新線区間では最速300km/h、大雑把な印象の平均では250km/h以上で走行しているようで十分高速感は満足出来ました。また、各種雑誌等で叩かれていたトンネル内通過時の「ゴゥオー」となる反響音についてですが、確かに鳴っていましたが、私にはそれほど気にはならない程度のものでした。よく指摘されている2等車の対面座席(進行方向の逆向きに座ること)については、分かりませんでした。今回乗車した1等車では、飲み物の無料サービスもあり、釜山までで2回ほど缶ジュース類を頂きました。全体の印象としては、釜山まで1等車で6800円程度で300kmの高速体験できたので、新幹線と比較してお得な印象を持ちました。

●釜山・東萊温泉
 釜山駅から地下鉄に揺られて30分くらいの市内にあります。今回最も有名な「虚心庁」という入浴施設が早朝5:30より営業しているので朝7時過ぎに行ってきました。温泉としては海近くの弱塩化ナトリウム泉で特にこれといった特徴もありませんでした。施設としては、日本の温泉場にあるような多彩な風呂(ジャグジー、打たせ湯、緑茶湯、入浴剤(ジャスミン)湯など)があり、楽しんできました。料金的には、ロッカー、貸しタオルがあり(ただしシャンプーはなかったと思います。)早朝割引で600円程度でした。

●釜山ビエンナーレ -Chasm N.E.T.-
 釜山市美術館で開催されている釜山ビエンナーレ現代美術展を訪問しました。各地のビエンナーレ・トリエンナーレと同様でここでもビデオインスタレーション類が多く展示されていました。ここで印象に残ったのは、スペインのAna laura Alaez氏の顔をアップにしてカラフルにペイントしたビデオインスタレーションが美しく、韓国のチョー・ウーラム氏のジェットエンジンのオブジェはローターが回転して動きがあり、またその動きにあわせてお尻のスコーンの部分が光ったり、羽が開いたりとまるで生き物のように感じました。日本からは私が確認したところ3名の作家が展示されており、中村政人氏のテトラポット、Novaia Liustraのカフェ、高嶺格氏のベビーインサドンでした。特に高嶺氏のベビーインサドンについては、高嶺氏の在日韓国人の彼女との結婚式の写真(一部ビデオ)および日記などが展示されており、昨年の京都ビエンナーレ「在日の恋人」(ただし鑑賞したのは階段に展示してあった日記、ビデオの部分)で在日韓国人の恋人が居ることを知り、近江八幡ボーダレスアートギャラリーno-maで結婚されたことを知ったものとしては、今回釜山でその結婚式の風景が見られるとは思っていませんでした。また、展示方法も先に書いた通りで森美術館六本木クロッシング展の高嶺氏作品とは異なり分かりやす構成になっていました。
 入場料 700円程度 公式ガイドブック 500円程度

釜山ビエンナーレ 現代美術展は10月31日まで(月曜休み)

釜山市立美術館

●釜山-光州(高速バス)
 光州ビエンナーレ訪問のため高速バスにて移動しました。私は数年前の古いガイドブックを使用していたため釜山の高速バスターミナルが移動したことを知らなかったため、初めて韓国観光案内電話1330にダイヤルし東萊から老圃洞へ移ったことを知りました。初めての高速バスでの移動だったので適当に座っていたら座席が指定されており、おじさんに怒られるという「ちょっとした」ハプニングがあったものの、シートは3列で快適でした。しかし、乗車時間がおおよそ3:30程度かかり、やはり疲れました。
 釜山-光州間 2040円程度。

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福岡・アフリカのストリートアート展

 全体の印象は、こじんまりとした展示内容でしたが、アフリカへ旅行をしたような楽しいものでした。具体的な展示は、私の記憶で会場内が4つのコーナーに分かれており、「アート棺桶」「アフリカの町並みの再現」「アフリカの布」「アートラジオ・ガラス絵」でした。最初の「アート棺桶」のコーナーでは、その棺桶を使ったアフリカ(確かガーナだったと思う)の葬式がビデオ上演され、日本の故人を偲び静かに送り出すのと正反対で、音楽バンドで盛り上げ聖歌隊がにぎやかに参列を作りながら送り出すところが印象的でした。「アフリカの町並み再現」では、床屋、バー、町にある立て看板などが展示されており、本当にアフリカの路地に迷い込んだような感じでした。
 追伸 ここの常設展示では教科書に必ず出てくる国宝の金印もあり、初めて鑑賞してきました。印象は、金でつくられているので(金は比重が大きいため)小さくても重そうでした。

福岡市博物館 10月17日(日)まで

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